ヴィレンシュタイン(Willenstein)とは、小説『銀河英雄伝説』の登場人物である。
外伝「星を砕く者」に登場するゴールデンバウム朝銀河帝国貴族、公爵。三桁にのぼる愛妾を持った。
帝国暦420年代ごろ[1]に叛乱を起こし鎮圧された人物。この叛乱の事後処理は、当時の帝国における大貴族と平民、そして帝国政府の複雑な関係を象徴するかのような特異な結末をもたらした。
貴族の叛乱そのものは、帝国の歴史を通して少なからず生じたていどの事象であるにすぎない。しかしその討伐・鎮圧にあたっては、帝国の社会構造的な問題に由来する複雑な内実が存在した。
「不法に民を害し、軍の威信をそこなう者は、将官の権限によってこれを極刑に処するをえる」
(帝国軍軍規より抜粋)
貴族叛乱とその討伐の際には、叛乱当事者に対して討伐軍将兵による徹底的な掠奪・暴行が発生するのが常であった。これは軍規にも明確に反する蛮行ではあったが、大貴族が抑圧的に平民を支配する帝国の社会秩序のもとでは、潜在的に大貴族への憎悪を有する平民出身兵士による貴族叛乱討伐時の掠奪・暴行行為が実質的な”ガス抜き”として機能していたのも事実であり、ある程度黙認される傾向にあった。
そもそも銀河帝国の国法は、反逆者の資産の国庫への没収を定めていたが、こうした掠奪の結果、実際に国庫に収められるのは不動産や有記名の金融資産ていどでしかなかった。そこで財務省は、貴族叛乱時にしばしば討伐軍の先頭部隊まで官吏を派遣し、将兵にいりまじって”帝国財務省”の名札を貼ることで宝物を確保するという実力行使によって法的に正当な権利を主張したのである。ヴィレンシュタイン公爵の叛乱討伐時に発生した事態は、こうした財務省の貴族叛乱対策の極地というべきものであった。
ヴィレンシュタイン公爵の叛乱においては、鎮圧直後、将兵が乱入するよりも早く財務省官吏が居館に入っていた。その官吏はきわめて忠実に自己の任務を遂行し、通例どおりの掠奪・暴行を期待してなだれこんだ将兵たちに先んじて、およそ人の力で動かしうるありとあらゆる動産に名札を貼っていたのである。
もし掠奪におよべば、それはすなわち帝国政府の公有財産にして神聖不可侵たる皇帝の資産への侵犯行為であった。結果、期待を裏切られて怒り狂った将兵たちが、さすがに名札が貼られていなかったヴィレンシュタイン公爵の愛妾たちに暴虐のかぎりをつくすという醜悪な展開がもたらされることとなる。しかし、財務省としてみれば、自己の権利にあるものを完全に獲得し、国法のなんたるかを知らしめる結果となったわけで、当の官吏も財務省次官より表彰状と金一封を送られた。
だが、これはまだ一連の事態の終わりではなかった。当の官吏が徴兵されたのである。とうに規定の年齢を過ぎていたはずのところ、彼に私的な復讐心をいだく討伐軍幹部からかけられた圧力によるものだった。彼は出征して最前線の一兵士として戦わされたが、財務省官吏として見せたバイタリティによるものか、無事生存して本国の妻子のもとへ帰ったという。
平民を抑圧する大貴族、その大貴族を憎悪する平民、平民の”ガス抜き”としての掠奪行為。叛乱貴族の資産没収を定めた国法、法定の権利を実力によって主張する財務省、私心を行政におよぼす討伐軍幹部。ヴィレンシュタイン公爵の叛乱討伐と事後処理にみられた一連の展開は、銀河帝国の社会構造によって生み出された、さまざまな立場と思惑が総合した結果だったといえるだろう。
掲示板
11 KEI
2020/05/18(月) 22:53:39 ID: fbqHSxNiYM
財務省官吏の心理について
螺旋迷宮のジークマイスターの父親に心境に近いかも。
身分が帝国騎士か平民どうかは分からないが
帝国の財政を預かる組織の中の小さな歯車という
立場に自己の存在意義を見出していたという。
12 ななしのよっしん
2024/04/08(月) 12:16:25 ID: qUNa0DhpV7
普通こういうのって「その結果彼は最前線に送られ、戦死した」で終わる事が多いのに
なぜか生き残る事ができた財務省の官吏
ラッキーというか神に愛されているというか
13 ななしのよっしん
2024/04/08(月) 12:23:31 ID: 3POYFy8eP6
フェザーンの伝説的商人バランタイン・カウフの逸話で
破産が確定して人生最後の酒のつもりでバーで飲んでたら
近くの席の会話で帝国で内乱寸前という話を耳にして
会話の断片から反乱を起こしそうな貴族とその領土の資源を調べ上げ
内乱勃発前に買い占めることで起死回生を果たしたというのがあったが
その反乱を起こした貴族はヴィレンシュタイン公爵だった可能性はあるかなと
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/21(土) 21:00
最終更新:2024/12/21(土) 21:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。