Bf109とは、「ワールドウィッチーズ」に登場するストライカーユニットの形式である。
概要
メッサーシャルフ社が開発した、カールスラント空軍の代表的な航空ストライカーユニット。第二次ネウロイ大戦全期間を通し、性能と生産数の双方で世界最高峰に立ちつづけ、同大戦を象徴する名ユニットとして世界的に知られた。
創業者W・E・メッサーシャルフの「小型の機体に強力なエンジンを搭載する」という理念を徹底し、かつ最新技術を大々的に取り入れた同機は、大出力DB系液冷魔導エンジンと直線的な機体形状によって高い速力を発揮し、後に欧州の主流となる一撃離脱戦術を生むきっかけとなった。大量生産にも適した設計で、カールスラントだけでなく輸出を受けた各国でも、大戦後期まで主力ユニットとして使用された。
開発経緯
1933年、カールスラント航空省は各社に対し、新型戦闘ストライカーユニットの開発を指示した。これを受けたメッサーシャルフ社は、同社がR・ルッサー技師を設計者として開発中だった汎用ユニット、Bf108タイフンを原型に、その単座・エンジン強化型としてBf109の開発に着手する。
1934年3月に設計が開始されたBf109は、翌1935年5月にプロトタイプであるV1号機が完成・初飛行に成功。当時としては優れた速力を発揮した。ハインツェル He112、フラックウルフ Fw159との採用競争でも速力と生産性が認められて勝利し、カールスラント空軍の次期戦闘ユニットとなる。さらに1936年のヒスパニア戦役に送り込まれたB型が実戦でテストされた結果、制式採用され量産に至った。
開発時点では扶桑皇国の宮藤一郎博士による「宮藤理論」以前だったため、魔導エンジンは背負い式を採用していた。制式採用後、B型で宮藤理論に基づいた改良が施され、さらにE型に至って、根本的に宮藤理論に即して洗練されたストライカーユニットとして完成することとなった。
性能・活躍
Bf109シリーズの直線的な機体設計は空力学的に最適なもので、大出力のデイスムス・ベルン製DB系魔導エンジンとの組み合わせにより、既存のストライカーユニットの追随を許さない高速を発揮しえた。その軽快な運動性と優れた加速性能も、多くのウィッチから高く評価される点であった。
欠点として、小型機体というコンセプトと性能重視の設計が、航続距離や使いやすさといった運用面でのデメリットと引き換えになっていることが挙げられる。特に航続距離の短さは大戦前期、カールスラントからの撤退直後に多かったドーヴァー海峡での哨戒活動などには不適であり、アドルフィーネ・ガランドを中心とする現場からの指摘によって度重なる改良が進められていった。
Bf109の直線的な設計は大量生産にも適し、同機が世界最高レベルの生産数を誇る要因となった。カールスラントの陥落後も疎開先のノイエ・カールスラントで生産が続けられて前線への潤沢な供給が保たれ、高い評価へとつながっている。扶桑皇国でもエンジンなどが生産され、ウラル方面に供給された。
カールスラントウィッチの飛ぶ空のほとんどで使用され、北アフリカ戦線での使用のため魔導エンジン過給機用インテークにサンドフィルターを取り付けた/Tropタイプなども存在した。周辺諸国にも輸出され、特にストライカーユニットの十分な国産化を達成していなかったスオムス、オストマルクといった諸国では主力ユニットといえる地位を担った。他にも、戦線によっては扶桑皇国などのウィッチの使用例もある。
後継機の遅れ
このようにBf109シリーズは大成功をおさめたものの、原設計は第二次ネウロイ大戦の開戦以前であり、陳腐化を見据え、早くから後継主力ユニットの開発が進められた。しかしその後継ユニットとなるはずだったMe309、Me209は失敗作に終わり、メッサーシャルフ社はついに通常動力型ストライカーユニットによる更新を断念。画期的な噴流式ユニットMe262を後継として開発を進めることとなる。
後継ユニットとしては、優秀機だったフラックウルフ Fw190の名前も挙げられたが、生産設備の疎開に手間取っており主力となりえなかった。しかし前線のユニットが慢性的に不足する中で製造ラインをMe262の生産に全面移行することは難しく、フラックウルフ社への牽制や前線のウィッチたちの要望もあって、生産ペースを若干下げながらも、Bf109シリーズのさらなる改良と配備が続けられた。
各種形式
Bf109 V型、A型
「宮藤理論」導入以前のため魔導エンジンは背負い式。搭載予定だった新型魔導エンジンが完成しておらず、ローリング・ロイズ社(ブリタニア)のエンジンが使用された。宮藤理論を搭載したB型の登場に伴い、いずれもB型相当へと改造されている。
Bf109 B型、C型、D型
いずれも制式採用以前の先行量産型で、B型では、宮藤理論に基づき魔導エンジンの脚部収納を達成するとともに、魔導エンジン自体もカールスラント国産のユングフラウ Juma210に変更された。C型ではB型から魔導エンジンを強化し、呪符形成器を2枚から3枚に変更。つづいて開発されたD型では、C型にB型の魔導エンジンを搭載している。
いずれもヒスパニア戦役に投入され、列国のストライカーユニットに比しても優秀なユニットとして知られるようになった。しかし、宮藤理論の採用が開発中途からだったため、いまだ洗練性に欠けていた。
Bf109 E型
E型は、D型をもとにより設計を洗練させ、待望の新型魔導エンジンであるデイスムス・ベルン DB601を搭載した。重量は増加したが、魔導エンジン出力は従来の1.6倍に達し、より高性能なユニットとなった。
1937年に勃発した扶桑海事変の際、カールスラント空軍の観戦武官により前線に先行試作型が持ち込まれ、扶桑のウィッチにも使用された。川滝航空機工業の開発した陸軍キ44は、この時のE型の強い影響を受けて設計されたとされる。他にE-4などのサブタイプが生産された。
Bf109 F型
F型の開発にあたっては、現場から運用面での難点にクレームがついたことを受け、機体構造が大幅に改良・変更された。空気抵抗を改善したが、搭載予定だった新型魔導エンジンは間に合わず、E型と同じエンジンの搭載となった。F-2、F-4などのサブタイプが生産された。
後継となったG型より軽快だったため、その登場後も少なくないウィッチがF型を使用し続けた。“アフリカの星”ハンナ・ユスティーナ・マルセイユもそのひとりで、周囲に説得されてG-2/tropに乗り換えるまで、F-4Z/trop,8693号機に搭乗して数々の戦果を打ち立てた。また、アドルフィーネ・ガランドは専用ユニットF-2スペシャルを使用していたことで知られている。
Bf109 G型
魔動機 | DB605A-1 | 公称呪力 | 1475Mp(離昇) |
---|---|---|---|
脚長 | 89.5cm | 自重 | ひみつ |
最大速度 | 640km/h(6300m・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | MG42、MG151/20、他 |
『第五〇一統合戦闘航空団全記録 第四集』所収 |
G型(Bf109G)は、F型を原型とし、新たにより大出力なデイスムス・ベルン DB605系魔導エンジンに換装したタイプで、Bf109シリーズの最終型と目された。1942年前半に生産が開始され、翌年にはカールスラント部隊の多くに行き渡った。その生産数はシリーズ総生産数の7割を占め、大戦後期におけるカールスラント空軍の主力ユニットとなった。
10種類を越える細かな型式区分が存在したが、各型式は完全な互換でこそないものの、前線基地でも容易に型式変更改造が可能で、搭乗する各ウィッチにあわせカスタマイズされる例も多かった。
G-0(先行型)では、換装された魔導エンジンに対して冷却能力が不足してユニットが加熱しやすい問題があり、危険な事故も生じた。このため量産型からエアスクープ(空気取り入れ口)が追加された。G-1は高々度用、G-2は通常高度用として開発され、さらにG-1の使用部品を変更したG-3、その通常高度用であるG-4が生産された。
魔動機 | DB605 | 公称呪力 | 1,475Mp(緊急出力時1,800Mp) |
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脚長 | 89.5cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 625km/h(7,000m・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | MG42、MG131s他 |
『第五〇二統合戦闘航空団全記録 第二集』所収 |
G-5以降の型式では魔導エンジンが強化され、つづくG-6では攻撃力の増強が企図された。このG-6では翼の構造が強化されてガンパックを取り付けられるようになったが、重量増とバランス悪化が問題となってほとんど使用されず、代わりに使い捨てのロケットランチャーを装備した部隊や、移動時の荷物を吊架するのに重宝したウィッチもいたという。
魔導エンジンの強化、さらに緊急出力装置の装備によって急加速性能はずばぬけたものとなり、一撃離脱戦法への適性をより強めることとなった。一方、加速力と引き換えに旋回性が低下したため、小型ネウロイ相手の格闘戦には向かないユニットとなった。
この他のサブタイプとして、G-8(強行偵察型)、G-10(魔導エンジン強化・エンジンカウリング空力改良型)、G-12(練習機型)、G-14(ロケットランチャー装備型)、G-16(地上攻撃型)などが生産されている。
Bf109 K型
魔動機 | DB605DM | 公称呪力 | 1,800Mp(緊急時) |
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脚長 | 90.2cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 445mph(24,610ft・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | MG42、MG131s、MG150/20 |
『第五〇一統合戦闘航空団全記録弐 第四集』所収 |
K型(Bf109K)は、最終形態の予定だったG型にさらなる改良を加えた後期量産型タイプ。後継機となるはずのMe309の開発失敗やBf109シリーズの特性を好むウィッチの要望、加えてジェットストライカー実用化までの中継ぎが求められたことで誕生したが、改良の結果、他国の新型ユニットとも同等の性能を獲得し、傑作ユニットBf109シリーズの決定版となった。
設計そのものはG-10を原型とした高高度型であり、基本設計を大きく変えないまま、G型の生産中に重ねられた追加装備を合理化し、生産効率と性能の向上を図った。高オクタン燃料を使用でき、過給機と緊急出力装置を用いれば一時的とはいえ呪力2,000Mpを発揮、新型呪符発生装置の搭載などもあって、ブースト時の最大速度は445mphに達した。上昇速度も強化されたほか、翼下に増槽や武装パックを装着できることも大きな特徴だった。
初期(前期型)のK型はG型に主翼桁強化・エンジン換装などを施した改修機であり、改修キットによって現地改修されたものも多い。
魔動機 | DB605DB/DC | 公称呪力 | 1,850Mp(緊急時) |
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脚長 | 90.2cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 452mph(24,610ft・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | MG42、MG131s、MG150/20 |
『第五〇二統合戦闘航空団全記録 第四集』所収 |
やがて後期型として登場した新造機タイプでは、空力面の改良、冷却器の効率上昇、主翼桁構造の変更による搭載可能武装の充実、呪力生成装置の高効率化といった改良が施され、特別な魔導エンジンを搭載した試験では速度460mphを記録した。生産ペースこそG型より落とされたが、カールスラント空軍では西部戦線のエース部隊を皮切りに、スオムスなどの同盟国配備機を含めた全機をK型(G型改修機含む)に置き換えることとして生産を進めている。
検証・テスト向けのK-2ではDB605DCM魔導エンジンを搭載し、呪力は通常時1,550Mp、緊急時1,970Mpであった。K-4はK型の中核としてもっとも多く生産されたタイプである。K-6は30mmガンパック搭載型で、さらに速度低下と引き換えにシールド強化・大型武装パック搭載の地上攻撃用も検討された。K-10も同様に30mmガンパック搭載型である。魔導エンジンとしてDB605Lを搭載したK-8、K14のうち前者は主翼を延長した高高度偵察タイプも製作されたほか、練習機型のK-12も存在した。
Bf109 L型
同じエンジンを使用するFw190D-9の生産に影響するため開発中止が命じられ、試作のみに終わった。
Bf109 Z型 ツヴァイリンク
魔動機 | DB605DB/DC | 公称呪力 | 1,850Mp(離昇) |
---|---|---|---|
脚長 | 90.2cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 422.5mph(24,000ft・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | MG42、MG151/20、MK108 |
『第一独立特殊作戦航空団(サン・トロン基地所属)全記録』所収 |
Bf109Z ツヴァイリンクは、二組のBf109を新開発の翼で接続・固定し、二人のウィッチが搭乗するユニットとして開発された特殊タイプ。既存の複座練習機タイプとは異なり、夜間戦闘など長時間飛行時に二人が交代で飛行できることが目的であった。
F型で試作され、中央の翼に75mm対装甲砲のような大型の武器や爆弾、増槽などを設置できる利点はあったものの、運動性の低さと操縦の困難さが大きな問題となった。最終的には双子のような息の合った間柄でなければ十分な飛行は困難と判明し、メッサーシャルフ社でのZ型の開発は技術省が引き継ぐかたちで中止された。のちには同省のウルスラ・ハルトマン(エーリカ・ハルトマンと双子)も実験に携わっている。
搭乗ウィッチ
著名な使用ウィッチを挙げようとすれば、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、グンドュラ・ラル、ヴァルトルート・クルピンスキー、ヨハンナ・ヴィーゼといった、カールスラントの名だたるエースウィッチのほとんどを並べ立てることとなる。本来は他の大型ユニットを使用する夜戦ウィッチの中にも、一部にBf109を予備機としている例がある。
カールスラント以外の使用国では、エイラ・イルマタル・ユーティライネン、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン、ハンナ・ヘルッタ・ウィンドなどスオムスウィッチのほとんど、オストマルクのグレーテ・M・ゴロプとラウラ・トート、ヒスパニアのアンジェラ・サラス・ララサーバルなど。
珍しいところでは、扶桑皇国の加藤武子が扶桑海事変中の一時期、E型先行試作機を試験運用していたほか、黒田那佳がハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタインの予備機だったK-4を藤色に塗り替えて使用している。宮藤芳佳もヘルウェティア仕様のK-4相当機の使用経験があるが、これはヘルウェティア国内の協力工場で生産されたものの、使用すべきウィッチの欠如、戦線の小康状態、輸出に関する契約の制限といった問題から十分な整備もなく放置されていた個体である。
関連機
関連機として、Bf109と部品を共用して空母<グラーフ・ツェッペリン>の艦載ユニットとして開発されたMe155がある。同機はブロム・ウント・フォーズにBv155として引き継がれたのちも実用化に至らず、結局はフラックウルフ Fw190Tが艦載ユニットとなった。
搭載するDB系エンジンも優秀さから各国に輸出・ライセンス生産された。主なところではロマーニャ公国のファロット G55シリーズや扶桑皇国の川滝航空機工業 陸軍キ61に採用され、後者は「扶製メッサー」の通称で親しまれた。これらの機体が、前線でBf109シリーズの魔導エンジンに換装される例もあった。
登場
扶桑とならんで作中でも圧倒的な登場キャラクター数を誇るカールスラントの主力ユニットだけあって、とにかくほとんどすべてのウィッチーズ作品で登場する。
アニメ『ストライクウィッチーズ』ではミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとエイラ・イルマタル・ユーティライネンがG-2を、エーリカ・ハルトマンがG-6を使用し、つづく『ストライクウィッチーズ2』ではこの三人に加えてハンナ・ユスティーナ・マルセイユがK-4を使用した。『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』では宮藤芳佳も1・2話でK-4相当機を使用している。
『ブレイブウィッチーズ』ではグンドュラ・ラル、ヴァルトルート・クルピンスキー、エディータ・ロスマン、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンの四名がはじめG-6を使用し、作中でK-4に機種転換している。OVA『ストライクウィッチーズ Operation Victory Arrow』Vol.1ではツヴァイリンクが登場した。
機種の設定解説・諸元は、『ストライクウィッチーズ』特典全記録第四集、第六集(ともにG-2)、同第五集(G-6)、『ストライクウィッチーズ2』特典全記録第四集、第五集(ともにK-4)、『ストライクウィッチーズO.V.A.』Vol.1特典記録(ツヴァイリンク)、Vol.2特典記録(G-2/Trop)、『ブレイブウィッチーズ』特典全記録第二集(G-6)、第四集(K-4)、『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』特典全記録第一集(K-4ヘルウェティア仕様)、第四集、第六集(ともにK-4)に収録。ファロット G55S ストレーガなど関連機の項でも少なからず触れられている。
この他、コミック『ストライクウィッチーズ零 1937扶桑海事変』一巻巻末の「戦闘脚ノ頁」ではE型が解説され、イラストコラム「ワールドウィッチーズ」でも、エディタ・ノイマンなどカールスラントウィッチを始めとする多数の紹介において愛用ストライカーユニットとして解説されている。
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関連項目
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