帝政カールスラント(Karlsland Empire)とは、「ワールドウィッチーズ」シリーズに登場する国家である。
アニメ『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』の主な舞台。
概要
ドイツ帝国(ドイツ第二帝国)をモデルとする帝政国家。国旗は赤地に白い縁取りのある黒十字、国籍マークは左右を白黒で縁取りした斜め黒十字。帝都はベルリン。
人口約9000万、欧州中央部に位置する高度な産業国家として知られる大国。豊富な石炭を除けば国産のエネルギー源には欠けるものの、科学技術力においては世界的に輸出される工作機械をはじめ各方面で世界有数の地位にある。しかし国民性は「技術力は高いが凝り性」と評され、大量生産には向かない緻密な製品を作る印象が先行してしまうふしがある。
皇帝家を中心とする帝政国家でありつつも、本来は高度な自治権を持つ諸国家の連邦体制であったが、第二次ネウロイ大戦に至るまでにしだいに中央集権化が進んでいる。強大な軍事力、特に陸軍力により、ネウロイに対抗する周辺国家の中心的存在となっている。
第二次ネウロイ大戦当時の皇帝[1]はフリードリヒ4世。帝都改造計画に熱中して政務をおろそかにした先代皇帝に対し、皇太子として平和裏に退位させて戴冠した。諸学問に優れ、庶民の地位向上とカールスラントの近代化に貢献した自由主義者として広く支持を受けている。特にウィッチに対して深い思い入れがあることでも知られ、ウィッチの勲章の副賞として十字外衣(クロス・ローブ。勲章図柄入りの戦闘用最高級ズボン)を制定したことはとみに有名。
地理
欧州大陸の中心部に位置し、東から時計回りにオラーシャ帝国、オストマルク、ヴェネツィア公国、ヘルウェティア連邦、ガリア共和国、ベルギカ、ネーデルラント王国の諸国に囲まれ、北海とバルト海に面する北方ではバルトランドとも国境を接している。
国土北部は点在する丘陵地帯をのぞけばごく平坦で、暖流の影響で冬にも暖かい。いっぽう国土南部は高度1000mを越える森林地帯シュヴァルツヴァルトや山岳地帯からなり、冬には積雪が多い。最高峰は南部のツークシュピッツェ山。夏は昼が長く過ごしやすい気温、冬は逆に昼が短く、そして合間の春秋には一日に激しい寒暖差があるというように、季節ごとに明確な気候差がある。
面積に対して見ても可住地面積が広く、人口が拡散しているのが特徴である。農業生産率の高さもあって、食料自給率では欧州諸国でも極めて高い部類に入る。都市は数多く、主なものとしては東部バルト海沿岸のカイザーベルクやブラウンスベルク、北部のシュテッティン、ハンブルク、西部のメールスやケルン、中央部のフランクフルト、南部のミュンヘンなどが挙げられる。
ノイエ・カールスラント
南リベリオン大陸、アマゾナスとタワンティン・スウュの南方にあたる大西洋側にノイエ・カールスラントを建設しており、ノイエス・ベルリン、ジューデンベルグといった都市を擁する。
第二次ネウロイ大戦で国土を追われたカールスラント国民はこのノイエ・カールスラントに疎開し、また兵器産業を中心とする主要な工業も拠点を移した。また隣国オストマルク王室も、カールスラント帝室との血縁もあって母国の陥落後はこの地に逃れ、亡命政府を樹立している。
なお、北の隣地を占めるアマゾナスには都市フランクフルト・アム・ティエテが存在する。
歴史
カールスラントの歴史の源流をたどれば、かのローマ帝国へといきつく。395年の東西分裂の後、西ローマ帝国では怪異から逃れてきたゲルマン人のローマ化が進み、768年にはガリア人王朝ローマ・フランク朝の有力貴族カール1世がローマ・カロリング朝を創始した。しかしガリア貴族の伝統である分割相続制により、帝国は東西南の3つのカロリング朝に分裂。このうち東カロリング朝こそが西ローマ帝国皇帝位の相続者であり、カールスラントの原型となった。
962年、オットーにより神聖カールスラント帝国が成立する。しかし国内に多数の独立国が存在したこの帝国では、一応の中心とはいえ皇帝家の権力は弱く、時には国内に皇帝が認められない時代さえあった。やがて皇帝家は二つに分裂し、皇帝は両家どちらかから7人の有力領主(選帝侯)により選ばれるようになる。当然、彼ら選帝侯の権力は極端に強大化していったが、その権勢は怪異の襲来によって掣肘され、皇帝家の片割れ、カールスラント皇帝家による帝国主権の回復が進むことになる。
この事態に一部の選帝侯がもう一方の皇帝家を擁立したことで、1866年にカールスラント継承戦争が発生。結果、オストマルク皇帝家は独立の道を歩み、カールスラント皇帝家による神聖カールスラント帝国の継承が確定した。この戦争のなかでカールスラント統一の機運が高まり、1870年のカールスラント、ガリア戦争(狩我戦争)、1871年の怪異相手の勝利を経て新たにカールスラント帝国が成立する。
軍事力
高度な工業力に裏打ちされた軍事力によって評価され、陸軍・海軍・空軍の三軍種のうち特に陸軍力においては欧州最大を誇る。
海軍はもともとバルト海周辺での活動が多かったことから規模は大きくなく、戦艦と潜水艦が中心。航空母艦は有さず、扶桑皇国から購入した赤城型航空母艦の三、四番艦も就役前にネウロイの侵攻を受け喪失した。しかし艦上航空隊が存在しないわけではなく、1945年春の“フレイヤー作戦”では“グリゴーリ空母部隊”の扶桑空母に戦闘機Bf109Tを搭載して参加し、Fw190系列の後継機も開発されている。
兵器も優秀なことで知られ、“フレディの丸のこ”こと汎用機関銃MG42のように、カールスラント軍にとどまらず周辺国家でも大いに使用されているものも多い。カールスラント陥落後も工場設備が疎開したノイエ・カールスラントで生産が続けられ、連合国の主要な兵器供給源のひとつとなっている。
航空機・ストライカーユニットのメーカーは数多く、傑作機Bf109を開発したメッサーシャルフ社をはじめ、Fw190を生産するフラックウルフ航空機製造、輸送機Ju52や大型爆撃飛行船Ju88のユングフラウ、非対称機や無尾翼機が多いブロム・ウント・フォーズといった錚々たるメーカーがしのぎを削っている。
ネウロイ大戦での活躍
第二次ネウロイ大戦初期はオストマルクなどに部隊を派遣し黒海方面からの攻撃に対処していたが、オストマルクが陥落し国境を突破されてからは国内での防衛戦へと変化していった。迫るネウロイからの国民の避難は、はじめベルリン周辺を対象とした“小ビフレスト作戦”、やがてエルベ川、ヴェーザー川の防衛ラインを立て続けに突破されライン川の最終防衛線まで後退を余儀なくされるに至り、全土から国民をノイエ・カールスラントに疎開させる“大ビフレスト作戦”に進展する。
こうして祖国を失うこととなったカールスラント軍だが、彼らの団結と精強さが失われることはなかった。各方面へと脱出したカールスラント軍は、ネウロイ占領下の母国を囲むように各地の戦線に配備され、故郷の奪還を目指して各方面で重要な役割を果たすようになったのである。
東部戦線では主にオラーシャ軍と協同してツァリーツィン防衛戦(パウルス大将の第6軍がオラーシャ第62軍とともに半年にわたる防衛戦を展開した)、バルバロッサ作戦、タイフーン作戦といった数々の戦いに加わり、南方ではロンメル元帥率いるカールスラント・アフリカ軍団(KAK)が勇名を馳せた。西方ではブリタニア連邦、リベリオン合衆国軍などとともにガリア解放作戦に肩を並べている。
ウィッチ
人口の多さとすぐれた軍事力、そして皇帝が早くから魔法の科学の融合に着目していたこともあいまって、ウィッチ用装備の研究開発に積極的である。
ローマ帝国以来の伝統と北欧神話が混合した神話体系の影響もあって、ウィッチ養成機関は多数存在しており、数ヶ月の飛行基礎教育を与える民間の航空ウィッチ養成学校をはじめ、軍事学校としては士官学校(年限2年)、士官候補生学校(年限半年~1年)、貴族やウィッチの家系向けの帝室士官学校(年限3~5年)といった機関がある。こうした重層的な養成課程から、飛行適性年齢を過ぎた後でも軍を支える教育程度の高いウィッチ士官が生みだされていった。
ほとんどの軍所属ウィッチは陸軍と空軍の所属で、もともと沿岸海軍でありウィッチの必要性が薄かった海軍に所属する者はごく少数である。世界中の激戦地で戦っていることもあってか、空軍は世界でも屈指の優秀な航空ウィッチを多く擁している。全世界における航空ウィッチの撃墜記録で第1位から第3位をカールスラントのウィッチが占めている点はまさにその証左であり、他にも様々な分野で最高峰の記録を持つウィッチを多数輩出している。
作品への登場
多くの作品でネウロイの占領下であることもあり、直接の登場はあまり多くない。
アニメ『ストライクウィッチーズ劇場版』の時期にはガリア奪還に伴ってカールスラント領内ライン川まで戦線を押し返しており、カールスラント領の一部が人類の手に戻っているが、ほとんど復興には至っていない模様。『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』でついにカールスラント奪還作戦が舞台となり、キール軍港や帝都ベルリンといった諸都市の姿が描かれた。
アニメ『ストライクウィッチーズ』と『ストライクウィッチーズ2』の間を描いたコミック『キミと繋がる空』においては、現地のカールスラント空軍がアーヘン空港を拠点として故郷の奪還を目指しており、また『アンドラの魔女』にはカールスラントからの撤退シーンが登場する。
主要な国家説明は『ストライクウィッチーズ』DVD特典「全記録」第五集、リベリオンの航空機製造会社の詳細については『ストライクウィッチーズ2』特典「全記録 弐」第六集に収録。
第501統合戦闘航空団
アニメ『ストライクウィッチーズ』などで描かれる第501統合戦闘航空団<ストライクウィッチーズ>(配置はブリタニア→ロマーニャ→ネーデルラント)では結成時以来中核となり、3名のウィッチを送り込んでいる。
このほか、作中登場しないものの、カルラ・ハインリーケ・ランガー(中尉・空軍)が初期に所属していた。
第502統合戦闘航空団
アニメ『ブレイブウィッチーズ』などで描かれる第502統合戦闘航空団<ブレイブウィッチーズ>(オラーシャ)には、3名のウィッチを参加させている。
- グンドュラ・ラル(少佐・空軍。司令)
- ヴァルトルート・クルピンスキー(中尉・空軍)
- エディータ・ロスマン(曹長・空軍)
第506統合戦闘航空団
小説『ノーブルウィッチーズ』シリーズで描かれる第506統合戦闘航空団<ノーブルウィッチーズ>(ガリア)には、1名のウィッチを参加させている。
スオムス義勇独立飛行中隊(→第507統合戦闘航空団)
小説『スオムスいらん子中隊』シリーズと『スオムスいらん子中隊ReBOOT!』シリーズ、『ブレイブウィッチーズPrequel』シリーズで描かれるスオムス義勇独立飛行中隊(のちに再編され第507統合戦闘航空団<サイレントウィッチーズ>)(スオムス)には、1名のウィッチを送り込んだ。
- ウルスラ・ハルトマン(曹長・空軍)
ウルスラ・ハルトマンはのちに転属するが、名簿上は籍を残し続けている。また、後に配属されたヴェスナ・ミコヴィッチはオストマルク空軍出身だが所属はカールスラント空軍である。
統合戦闘飛行隊「アフリカ」
「ストライクウィッチーズ アフリカの魔女」シリーズの舞台である統合戦闘飛行隊「アフリカ」(のちに第31統合戦闘飛行隊<ストームウィッチーズ>)には、2名のウィッチが参加している。
連盟空軍航空魔法音楽隊
『ルミナスウィッチーズ』の舞台である連盟空軍航空魔法音楽隊<ルミナスウィッチーズ>には、1人のウィッチを所属させている。
- マリア・マグダレーネ・ディートリヒ(曹長・空軍)
その他の部隊
第503統合戦闘航空団<タイフーンウィッチーズ>(オラーシャ)には、フーベルタ・フォン・ボニン(中佐・空軍。副司令)、オティーリエ・キッテル(少尉・空軍)が所属するほか、オストマルク空軍出身のヴァルトラウト・ノヴォトニー(大尉。戦闘隊長)、アレクサンドラ・シェルバネスク(中尉)も所属上ではカールスラント軍に移っている。
このほか、『ストライクウィッチーズ劇場版』などではハイデマリー・W・シュナウファー(少佐・空軍)、コミック『キミとつながる空』などではヘルマ・レンナルツ(曹長・空軍)、小説『アフリカの魔女 ケイズ・リポート』やアニメ『ストライクウィッチーズO.V.A.』では、エディタ・ノイマン(少佐→大佐・空軍)などが登場する。
非ウィッチ
これまで作中に登場した非ウィッチの軍人は以下の通り(主な人物のみ)。
- アルブレヒト・ケッセルリンク(大将、地中海方面総司令部所属。『SW2』など登場)
- エルンスト・ロンメル(元帥、カールスラント・アフリカ軍団総司令。『O.V.A.』Vol.2など登場)
- エアハルト・フォン・マンシュタイン(元帥、ペテルブルグ軍集団司令官。『BW』など登場)
関連項目
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- ストライクウィッチーズの関連項目一覧
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- ブレイブウィッチーズ
- ルミナスウィッチーズ
- スオムスいらん子中隊
- ストライクウィッチーズ アフリカの魔女
- ノーブルウィッチーズ
- バルトランド
- オラーシャ帝国
- オストマルク(ワールドウィッチーズ)
- ヴェネツィア公国
- ガリア共和国
- ベルギカ
- ネーデルラント
- 架空の国の一覧
脚注
- *「皇帝陛下にして国王陛下、カールスラント皇帝、ブランデンブルク辺境伯、ニュルンベルク城伯。ホーエンツォレルン伯、シュレージェン及びグラーツの独立君主にして首位の公爵……(以下不明)」(501st JFW.OA第62回)。
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