EH500とは、JR貨物が保有する2車体連結型の電気機関車である。
概要
かつて首都圏と北海道を結ぶ高速コンテナ列車では、途中2回の機関車付け替えを必要としていた。これには連結作業のタイムロスや5両もの機関車の整備が伴い、高速・効率化を目指すJR貨物にとって大きな障害だった。
そんな事情を背景に、一度は鉄道車両製造から撤退した東芝から直通用の巨大な機関車が提案された。VVVF制御、直流・交流複周波数対応、耐寒耐雪、青函トンネル完全適応、そしてそれらを実現する動輪8軸・2車体連結・・・
EH500の誕生であった。
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本機の特徴はなんと言っても2車体連結方式に尽きる。これによって1車体3台車よりさらに動輪を増やしたが、その第一の目的は単純な出力増強ではなく、高湿・急勾配が続く青函トンネル内を空転せずに牽引するためだ。よって旧国鉄の2車体8軸機・EH10とは根本からいきさつが異なるし、実際にも出力はEF210と同等である。
また、2車体で1台の機関車という扱いになるため、従来の重連運用を置き換えた区間に関しては、旅客会社へ支払う線路使用料が機関車2台分であったものが半分の1台分で済む、というJR貨物にとっての利点もある。
2つの車体にはそれぞれに同じ機器が搭載され、二重システムとして故障への対応を強化している。だからといって片側ずつが自力で走行することはできず、一心同体と言う語がまさにぴったり。2つの車体は東芝にて鉄板から組み上げられるときから常に共に行動を共にし、その関係は廃車まで続くことだろう。
量産初年の2000年に、EF210やDF200同様の愛称が募集された。結果「ECO-POWER 金太郎」に決定され、車体側面には大きくロゴが貼られている。一般への定着もまずまずのようだ。他にもEH10の再来ということで非公式ながらも「平成のマンモス」と呼ばれている。
バリエーション
1997年の試作機の落成、2000年から現在まで続く量産と、長い期間にわたって製造が行われている。その間、特に初期においては塗色や前照灯などが幾度か変更されていた。旧モデルが後期のものにあわせて改造されることは現在のところなく、登場時からの形態を保っているのが趣味的にも面白い。またどの形態も共通運用されている。
以下に分類ごとの前面のイラスト、赤部塗装の色味、特筆事項、在籍数をまとめる。
試作機
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一次形
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二次形
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三次形
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スカーレット | 深紅 | クリムゾン | |
前頭部屋根が丸く、側面の通風窓や明かり取り窓の位置が他形態と異なる。 赤色部は他と比べ蛍光色のように強烈な色調。 |
試作機から引き継ぐ腰部の前照灯を持つ。 前面の白帯が認識性を強めるため太くなり、側面まで回り込んでいる。 赤色部は大人な印象に。 |
前照灯に雪が多く付着してしまう問題が発生し、ライトケースが白帯部まで持ち上げられた。さながら赤いEF210。 それ以外の点は一次形と共通のため、側面では見分けがつかない |
直流機EH200と意匠を揃えたのか、白帯はライトケース間に、黒塗装が窓枠だけに狭められた。 この形態で安定し、10号機以降大量に製造された。 |
1両 | 2両 | 7両 | 63両以上・継続量産中 |
運用
東北本線と津軽海峡線をロングパスする運用に就いているが、多くの列車では黒磯にて任を解かれ、以南はEF210などの直流電気機関車にバトンタッチとなっている。貨物列車の多くが深夜に走ることと併せ、首都圏でその姿を見ることは難しい。
近年ED75やEF81の置き換えが進んだことから、EF510と共に常磐線へも進出している。
また青函トンネル内での実績が評価され、総延長は短いながら更に過酷な環境の関門トンネルにも新たに配置され運用している。こちらは海峡内を受け渡す下関(幡生操車場)~福岡貨物ターミナルのみの運用で、ATCを搭載しないなど東北のものとは区別されている。
関連動画
その力強い容姿のためか、JR貨物設計の電気機関車において動画投稿数が最も多いようだ。
試作機 |
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一次形 |
二次形 |
三次形 |
関連項目
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