概要
一般に、AとBが等しいとき、A=Bと書き表す。何をもって「等しい」というかは、その対象によって定義が異なる。
なおプログラム言語ではしばしば左辺に右辺を代入して「等しく」する演算子として用いられる。
日常会話と誤用
=は数学において最もよく使われる記号のひとつであるため、日常会話にも度々使用される。しかし、=を使うことができるのはある条件を満たす必要があるため、日常会話で使用される場合には誤用も存在する。まず、次の文をご覧頂きたい。
何の違和感もなかった方は、次の文もご覧頂きたい。
おそらく、この文には違和感を覚える方が多かったであろう。
この違和感は「A = B」を、ABに日本語の単語が入っていることから、脳内で「AはBである」と読み替えていることに起因する。日本語の「AはBである」という文章は、数学的には「A = B」というよりも「A ⊂ B(AはBに含まれる)」という論理構造に近い。
BであってAでないものが存在するとき、「AはBである」からといって「BはAである」というのは誤りである。
上記の例では動画共有サイトであってニコニコ動画でないもの(YouTube, Zoomeとか)が存在するので、「動画共有サイト = ニコニコ動画」に違和感を覚えるのである。
ABが数式でなければ「A = B」は数式と解釈されないので上記読み替えの対象となることも多いが、それを根拠に「B ⊂ A」という話に持って行こうとして間違うと理系でなくてもつっこまれる。
数学的には(同値関係による定義)
結論から言うと、前者を正しい、後者を間違いだと思った方は、=に対する解釈の仕方が間違っている。つまり、=を「ニコニコ動画=動画共有サイトだが、動画共有サイト=ニコニコ動画ではない」という風に使うのは、数学的には誤用なのである。
ではなぜ誤用なのか。概要にもあるように、定義は対象によって異なる。しかし共通するのは、「同値関係」であるという点だ。同値関係とは、2つの物が同じ物であるとみなすことができる関係のことである。具体的には、二項関係「~」が次の条件を満たしているときをいう。
- すべてのxに対して、x~x
- すべてのx,yに対して、x~y⇒y~x
- すべてのx,y,zに対して、x~y,y~z⇒x~z
同値関係は=の他にも、⇔(同値)、≡(合同)、∽(相似)などがある。意味がわからない方は、~を=に置き換えるとわかりやすいだろう。ここで重要なのは2番目である。つまり、x=yが満たされていれば、y=xも満たされていなければならないのである。それが成り立たなければ、同値関係を満たしているとは言えず、=で結べないのである。では、前述の誤用を含む文をどのように言い直せばいいか。「ニコニコ動画∈動画共有サイトであるが、動画共有サイト={ニコニコ動画}ではない」「ニコニコ動画⊂動画共有サイトであるが、動画共有サイト⊂ニコニコ動画ではない」等の表現が考えられるであろう。ニコニコ動画を動画共有サイトの要素と解釈したのが前者、部分集合と解釈したのが後者である。しかし、もっとわかりやすい述べ方もある。「ニコニコ動画は動画共有サイトのひとつであるが、動画共有サイトがすべてニコニコ動画というわけではない」つまり、数学記号を使わなければいいのだ。数学は厳密な議論によって成り立っているので、記号も厳密に定義されている。自然言語は時とともに変化するので「言葉は生き物」と言われることがあるが、数学記号に関してそのようなことは決してない。数学記号の厳密な定義を知らないことが、誤用を招く原因にもなる。知ったかぶりしてると、理系の人に突っ込まれるかもよ。
関連項目
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