アウグスト1世（August I）とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
概要
ゴールデンバウム朝銀河帝国第9代皇帝。第8代オトフリート2世の世継ぎ。
同名の2世に比べるとはるかにまともな人間だが、やっぱり「色」んな意味で傍迷惑で残念な人であった。
国家に迷惑かけてたわけじゃないんで、勘弁してやってください……。
治世
その治世は、痴愚帝ジギスムント2世の悪政を正した先帝オトフリート2世のそれを引き継いだ賢明なものであり、専制的ではあるにせよ、銀河系の最高権力者としてまず問題のないものであったという。まともである。彼の異名（の後半）にも「国政の名君」とあるくらいで、皇帝の職務を執行するにあたっては批判しようがない統治を布いたんだろうということは想像に難くない。
しかし、彼の残念な所はそこにはなかった。あえて今「異名（の後半）」と断ったように、その後半に当たる「国政」でない部分、つまり「私人」としての部分ではめがっさ面倒な人だったのである。
こういう場合、ゴールデンバウム王家の内々の話になっちゃうからかえって面倒だったろうなぁ。
性癖
「性癖」。「性癖」である。「性格」とかじゃなくて「性癖」。その中でも「性的嗜好」の部分が問題であった。彼の異名の全文は「後宮の凡君、国政の名君」。まぁなんだ、ちょっと変態入ってたのである、彼。
彼は長髪フェチであった。あるいはロング萌え。黒髪ロング萌え専門とかでは無かったようでちょっと残念。そしてそれを「趣味というものではあった」と辛うじて擁護する外伝1巻の地の文も流石といえる。
しかし彼は単なるロング萌えでは無かった。権力のあるロング萌えであった。こういうのは厄介である。
彼はベッドに1000人分の髪の毛を敷き詰め、その上を転げまわって陶然としていたというのである。この行為によって銀河には新たに1000人の非ロング女性が生まれたわけだが、彼はどう思っていたのだろうか。そして地の文も「やはり尋常ではなかった」である。もはや擁護しきれていない。
他にも後宮では色々ありまして、例えば美しい栗色のかつらで皇帝を騙していた寵姫がバレて一人寒中水泳大会に出場させられ見事凍死したり、寵姫どうしの対立で火花を散らしていたらリアルに髪の毛に着火されて焼死したりと、もはや皇帝の性癖を越えて周りの侍従あたりが女性不信になりそうなことになっていたようである。
そしてアウグスト1世が極めつけに変態だったのは、やはり「皇帝髪食った事件」であろう。
お気に入りの寵姫（むろん美しいロングヘアであるのは間違いない）が病死したのを見た彼は、その髪の毛を泣きながら食べてしまったのである。編集者はこの描写を見て一瞬スパゲッティのようにフォークで皿の上の髪の毛を巻いて貪り食うアウグスト1世を幻視したが、いくらなんでもわざわざ調理したりはしていないと思う。たぶん。
こうして食べただけならまぁ変態の延長ですまされたのだろうが、残念ながらそれではすまなかった。皇帝の体内に入った髪が、その胃壁に刺さってしまったのである。実に痛い話だが、それを知って蒼白になったという侍医たちにとっては笑い話ではなかった。にしても、どこが「凡君」なんだ。
ただ、彼が他の暗君だのなんだのと違っていたのは、国政にそれを持ち込まないという一点であった。その最後のラインを決して越えなかったために、彼は「国政の名君」という名声を得ることができたのである。
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