概要
チェンバロとは鍵盤楽器の一種で、ピアノのように鍵盤を弾くことで内部にある機構が動いて弦を弾く構造となっている。歴史的にはチェンバロの方がピアノより古く、ピアノの本来の名称が「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(ピアノからフォルテまで音が出るチェンバロ)」であったように、ピアノの祖先ともいえる楽器である(ただし楽器分類でいえばかなり遠縁であり、ピアノの祖先はむしろクラヴィコードと言ったほうがよい)ドイツ語のチェンバロ、フランス語のクラヴサンは共にラテン語のクラヴィチンバルム(鍵盤付きツィンバロム)に由来し、英語のハープシコードはフランス語の harpechorde(ハープの弦)に由来する。
ピアノとの違いはピアノが打弦楽器ともいわれるように弦を叩く構造であるのに対して、こちらはギターのようにピックで弾く構造となっていることである。また鍵盤から機構を通じて間接的に弦を弾く構造からピアノの様に鍵盤を押す強さで音の強弱をつけることが困難(そのため多くのチェンバロは複数列の弦と鍵盤を持ち、鍵盤を押した際に弾く弦の本数を変化させて半ば強引に音の強弱や表情を変化させる機構が備わっている)であり、音のダイナミックレンジに乏しい。
実はピアノが登場してしばらくも音量の優位からチェンバロの方が広く用いられていた。だがピアノが楽器の構造を頑強化し弦の張力をより大きくすることでチェンバロの音量の優位を奪い去ると、強弱の細やかな表現に劣るチェンバロは一気に廃れていった。その過程で古より伝えられたチェンバロの製法は一度消滅し、現在の楽器は今に残る古楽器から復元されたものである。
最終的に金属製フレームで数トンに及ぶ弦の張力を実現したピアノと異なり、フレームが木製のチェンバロは弦の張力が小さいことから音程も狂いやすい。演奏ごとに調律が必要になるため、チェンバロ奏者は必然的に調律のスキルも得なければならない。むしろその点は弦楽器に近いともいえ、まさに古い鍵盤楽器の特徴を色濃く残している楽器である。
前述しているように一度は誰も使わなくなった楽器であったが、近年はその独特の気品ある格調高い音に魅せられた奏者たちが細々とではあるが再びチェンバロに生の息吹を吹き込んでいる。新しい音を求める現代音楽やポップミュージックの中にもチェンバロは一定の地位を確立しつつあるようだ。
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