概要
ロシアの新型攻撃型潜水艦であり、第4世代多用途原子力潜水艦プロジェクト885/885M【ヤーセン】(Подводные лодки проекта 885 "Ясень")と呼ばれる。
1番艦K329『セヴェドロビンスク』の名を取って【セヴェドロビンスク級】ともよばれる。NATOコードネームは【Graney/グラニー型】。
艦形は前級のアクラ型原子力潜水艦の艦体に【オーニクス】・【カリブル】用ミサイルVLS区画を挿入したような形となっている。
艦体は静粛性を配慮し、部分複殻構造とし、これまでのロシア海軍の常であった船首に集中配置された魚雷発射管は艦側面耐圧構造区画に装備される。これにより艦首の設計の自由度が大幅に増し、新型のソナーシステムを搭載することが可能となった。また各種ダンパーを設置し船体各部には広範囲に防音タイルが張り付けられており、騒音レベルはアメリカの【ヴァージニア級原子力潜水艦】に匹敵するといわれている。
設計思想
これまでソヴィエト/ロシア海軍の潜水艦の配備方針は戦略打撃力を持つ戦略原子力潜水艦(SSBN)、対艦打撃力を持つ長距離/中・短距離巡航ミサイル搭載原潜(SSGN)、攻撃型原子力潜水艦(SSN)の3本柱(厳密には4本柱)で構成されていた。
本級は SSGNとSSNの両方を統合した艦として設計されていた。ただし、SSGNとして設計されている【オスカーI/II型】は搭載ミサイルが射程700kmの【グラニート】であり純粋に本級の後継として開発されたのではなく、SSNに巡航ミサイル発射能力を持たせたものと見る方が正しい。このコンセプトはアメリカの【ヴァージニア級原子力潜水艦】の構想中のBlock Vに似た構成となっている。
なお、余談であるが、オスカー型に関してもミサイルを【グラニート】から【オーニクス】へと換装するという報道があり、巡航ミサイル発射母艦としてロシアのパワープロジェクション能力を支えていくものと考えられる。この巨大な艦体に多数の巡航ミサイルというコンセプトは、ある意味ロシアのお家芸であるが、アメリカのオハイオ級SSGNと似た構成であることもまた面白い感じである。
建造あれこれ
- 1977年に第四世代潜水艦の構想が開始され、【マラヒート】、【ルビーン】、【ラズリート】の各潜水艦設計局が個別に設計を開始するが、最終的に【マラヒート】が設計したプロジェクト885【ヤーセン】に統合される。
- 1985年に正式設計開始、1993年12月に建造が開始された【セヴェドロビンスク】であるが、ご多分に漏れず、ロシアの経済の悪化に足を引っ張られ実に16年以上も船台の上で過ごしてきた。2010年6月にようやく進水となった。
- 搭載される【カリブル有翼ミサイル】は、1980年代に配備された、潜水艦発射有翼ミサイル【グラナート(SS-N-21サンプソン)】(射程3000㎞)をベースとし、核攻撃専門のこのミサイルを通常弾頭型に変え、命中精度を向上したもの。
- 当初2012年中に引き渡される予定であったが、各種試験や建造の遅れに伴い、結局は前述の通り、2013年度引き渡しとなった。
- 当初本命視された【オーニクス】が開発の遅れに伴い、2011年の試験では不満足な結果しか出ず、2013年に再試験の運びとなった。当ミサイルは本型の主兵装に位置づけられているが、いつの間にか脇役のはずの【カリブル】が表に出てきてしまう形となった。挽回なるか?
- 本型を設計した【マラヒート】設計局は2004年より第五世代攻撃型原子力潜水艦の予備設計を開始。2020年ごろに起工の見通し。なお、プーチン大統領は2013年7月に開催された自身が主催する会議で、ヤーセン型の建造の遅れを批判するとともに、2020年までに7隻が建造されるという海軍の報道に対し、2025年ごろまで遅延する可能性を示した。既に新世代艦の設計が開始されている現状で30年前の構想で設計された本型には特に興味が無いように見える。
要目
- プロジェクト885/885M【ヤーセン】
- 艦種:攻撃型原子力潜水艦(SSN)
- 艦名:都市名に由来
- 同形艦:7隻建造予定(1隻進水、2隻建造中)
- 排水量:9,500t(水上)/13,800t(水中)
- 全長:119m
- 全幅:13.5m
- 吃水:9.4m
- 推進方式:1軸ポンプジェット推進
搭載兵器
- 533mm魚雷発射管×6
- VLS×8基
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関連項目
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