概要
1973年初演。当時の演劇界に旋風を巻き起こし、翌年には岸田國士戯曲賞を受賞した。
多くのファン・フォロワーを生み、80年代にかけて日本の小劇場界は今作を含めたつかこうへい一色に染まった。
後に、記者が選ぶランキングで、日本の戯曲史上第2位の傑作として評価された(1位は『サド公爵夫人』)。
警視庁の敏腕警部・木村伝兵衛と、その下に田舎から赴任してきた刑事・熊田、木村の部下にして愛人の婦警・水野の3人が、熱海殺人事件の真相をその容疑者である大山を取り調べる中で鮮やかに改竄していく物語。伝兵衛以外の名前は作品によって変わっている。
かなり多くのバージョンがあり、物語の骨子は変わっていないものの扱うテーマはそれぞれ大きく違う。
殆どに共通しているのは、冒頭に流れる『白鳥の湖』、伝兵衛が見せるチャイコフスキーへの独特のこだわり、事件の書類を床に捨てて拾わせるシーン、初見の人間には何がどうなっているのか全く追いつけないハイスピードな超展開など。
役者殺しな脚本の1つでもある。
つか独特の、毒も知性もたっぷり含んだ長台詞をとにかくまくし立てなくてはならず、半端な技術や発声では最後まで無事に演じきることすら危うい。
が、一方で、基本的に木村の取調室のみを舞台としているため、小規模なホールにも適している。
取調べ机などが数点と舞台装置も少なく、予算がかからないため貧乏劇団にも優しい。
登場人物
今シリーズの登場人物は、大まかな性格そのものはあまり変わらずとも過去や性癖が大きく変わる。
木村伝兵衛
警視庁の変人警部。当初は壮年だったが、作品によって若いことが多くなった。
タキシードを着込み、紳士的な言葉遣いを滅多に崩さないが、その人格は変としか言いようがない。基本的に尊大で独善的で、人間的な欠陥を露骨に見せる。チャイコフスキーに妙なこだわりを持つ。
部下の水野に想いを寄せているが、その真の関係は作品によって様々。
初作では、熱海殺人事件の容疑者を「自分が担当する事件の犯人としてあまりにも地味すぎる」と憤慨し、何とかカリスマを持った鮮烈な犯人に仕立て上げようとする。動機や容疑者をでっち上げて自分にお似合いの事件を作り上げるのが趣味、というか生きがい。
以降、作品によってヘタレだったりマザコンだったりゲイだったり、果ては女だったりとめまぐるしく変わる。
演じた俳優は、風間杜夫、池田成志、石原良純、阿部寛など。
特に阿部寛は『モンテカルロ』のゲイ伝兵衛を演じたが、モデルとしての旬を過ぎて落ちぶれる一方だったところを、つかに「一生食える役者になりたいんだろう!」と厳しい稽古をつけてもらったことが、現在の俳優としての大成に繋がったという。
熊田
伝兵衛とは基本的にやかましく言い争い続ける。序盤は彼と水野の変人っぷりに振り回されるが、物語が進むにつれて彼らに劣らない強烈な過去や事情が暴かれたりする。
水野
彼の愛人だが、煮え切らない彼の態度に苛立っていたり、逆に軽蔑していたりする。が、殆どの作品では彼と息の合った小芝居をひたすら繰り広げている。
伝兵衛にとって「いつでも抱ける女」であることが多い。
演じた女優は、黒谷友香、内田有紀、黒木メイサなど。
黒谷は、『売春捜査官』で伝兵衛を演じてもいる。
大山
熱海殺人事件の容疑者。
伝兵衛達に取調べを受けるが、あまりにも地味すぎるということで、一流の凶悪犯罪者になるために鍛え上げられる。
大概、田舎上がりの芋臭い男で、伝兵衛達の強烈な捜査法に振り回される。
演じた俳優は、加藤健一、吉田智則、酒井敏也、山崎銀之丞など。
シリーズ
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関連項目
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