概要
大学や大学院を修了した読者であれば、研究室内でのゼミ発表や卒論発表、外部の学会発表などで研究発表を経験したことがあるだろう。そして、このような発表の質疑応答で必ずといっていいほど耳にするのがこの言葉である。
「素人質問で恐縮ですが……」
素人の質問だから簡単に答えられる、なんてことはほとんどない。それどころかこの枕詞の後に続く質問は、大体が発表者の知識・調査・研究不足を突いた鋭いものである。つまるところ「この発表には私のような素人でも気が付く程度の瑕疵があるのですが、当の研究者である貴方が何故それを把握していないor答えられないのですか?」という、発表者の不明をクリティカルに刺す突っ込みなのだ。質疑応答を終えた発表者は大ダメージを受けて戦闘不能となっている場合が大半である。
類義語に「この分野には明るくないのですが」「聞き逃したのかもしれませんが」などがある。
学生の研究発表における質問者は多くの場合大学教授(助教授、准教授)なので、発表者の学生からすれば「いやあなた全然素人じゃないでしょ!」とツッコみたくなるかもしれない。しかし大学や大学院における卒論研究というものは学士レベルならともかく、修士レベルにもなれば指導教官ですら知らない領域に足を突っ込んでいる学生も多く、ましてや普段学生の研究を見ていない教授や、別の研究室の教授であれば、同分野の専門家でも(発表者の研究に関して言えば)素人同然なのも別に不思議ではない。もちろん、全然素人でない教授が謙遜の意味で言っているだけのケースもあるが……
むしろ、質問者が本当にその分野の素人であったケースの方が厄介なことになる可能性が高い。専門知識に関係なく発される質問ということは専門的な議論によらない、発表内容の根幹的な部分(研究の前提が間違っている等)に関する問題がターゲットとなるため、「じゃあこの研究意味なくない?」「この結果だとその結論にはならないじゃん」「それってほぼ同じ機能の既製品もうあるけど?」といった、発表内容全否定レベルのツッコミに発展しかねない。
いずれにせよ、質問にその場で答えられなかったとしても気を落とすことなく、質問された内容はしっかりと受け止めてこれからの研究に生かすようにしていきたい。意地悪な質問でも、質問が全く出ない=聴衆が匙を投げてしまうような発表よりはずっとマシなのである。
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