鹿撃ち帽または鹿追い帽(英語: deerstalker)とは、英国発祥の帽子の一種である。
(特に古い翻訳では)「ハンチング(帽)」と訳される場合もあるが、現在では適切な訳語とは云えない(後述)。
概要
ディーアストーカーという名の通り、主に鹿追い(deer stalking 。鹿を対象にした英国の伝統的スポーツハンティングの一種。現在では長射程のライフル猟が一般的だが、かつては猟犬と従僕を使った追い込み猟だったのでこう呼ばれる)等の狩猟で被られる帽子。前後の庇が側面でも繋がっているので分類上はハットに含まれるが、耳当てを上げればキャップ状になるので日常的にはキャップと呼ばれる。
柔らかい半球状の山の前後に直射日光を防ぐ為の深めの庇(ブリム)と、側面に防寒・防風用の耳当て(イヤーフラップ)がついていて、耳当ては先端を顎の下で結んで固定できる他、持ち上げて頭頂部で結び留めることができる。材質は綾織りのツイード(スコットランド羊毛織)で、チェック柄は野外ではカムフラージュの役割を果たす。
探偵の嗜みとして
日本だけでなく海外でも「探偵」といえばこの帽子が思い浮かぶらしく、俗に「探偵帽」などと呼ばれることもある。言うまでもなくそれは世界一有名な探偵小説である『シャーロック・ホームズ』シリーズの影響だ。
ただし、小説本文には鹿撃ち帽という語は登場せず、「彼の耳当ての付いた旅行帽」(his ear-flapped travelling cap)あるいは「頭にピッタリな布の帽子」(close-fitting cloth cap)と言及されているだけで、それらを当時の挿画担当者が鹿撃ち帽と解釈して描いたのが一般に定着したものである。さながら犯罪者という獲物を追い駆けて英国中(時には海外)を股にかける冒険的な日常に身を措く狩人、というイメージが挿画担当者にはあったようだ。
※鹿撃ち帽は本来、ホームズのような都市生活する紳士が日常的に被る帽子ではない。逆に山高帽(bowler hat 。チャップリンの被ってるアレ)で狩猟に出る姿を想像してもらえば、この奇矯さが解ってもらえるだろうか。
ハンチング?
なお deerstalker を「ハンチング(帽)」と訳される例も(特に古い翻訳で)見られるが、英語の hunting cap は狩猟時に主に被るアウトドア用帽子一般を指す言葉であり、特定の種類の帽子を指す言葉ではない。例えばスヌーピーの弟オーラフ(Olaf)が被っている赤い帽子なども hunting cap と呼ばれるが、これをホームズの帽子と結び付けられる人は稀だろう。
対して日本語のハンチングは「鳥撃ち帽」とも呼ばれるが、広義には前庇付きの立ち山のキャップ(キャスケット(仏語: casquette))で山が少し潰れたタイプの newsboy cap など、大まかに deerstalker に似た形状の帽子を指し示す言葉であり、狭義には山の余りを前庇にペッタリ乗せる flat cap を指す。しかし、いずれもハンティングとは直接は関係が無かったり、形状が deerstalker とは異なっていたりする。
したがって deerstalker をハンチングと訳すのは、あくまで hunting cap の意味だったか(古い転写法では ti/di はチ/ヂだった。例:ビルヂング(building))、 あるいは deerstalker のイメージが一般的でなくて、類似した別のハイカラな帽子で翻案したに過ぎない。現代の翻訳では安易にハンチングなどとしないほうが無難だろう。
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