「これは○○の分!」とは、戦闘描写がある創作作品で使われる事がある台詞回しである。
「○○」にはキャラクター名などが入る。「○○」を苦しめた何らかの「敵」やその一味に対して、その苦しめられた「○○」の名前を挙げながら「復讐」「仕返し」「報復」となる攻撃を加えるときの台詞である。
例えば、有名な漫画作品『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)では、主人公「ケンシロウ」の台詞として以下のようなフレーズが登場しており、印象的なシーンであるため知名度が高い(実際の作品内描写ではケンシロウのお兄ちゃんの台詞などが挟まれるが、それらは省いた)。
これはシンの分!!
そして…これは!! ユリアの分だ!!
最後にこれは… きさまによってすべてを失った おれの… おれの… このおれの怒りだあ!!
この他、『ドラゴンボール』などの有名漫画作品でも類似の台詞回しが登場する。
知名度では『北斗の拳』や『ドラゴンボール』(著:鳥山明)には及ばないが、より先行する漫画作品もある。『野望の王国』(原作:雁屋哲、作画:由起賢二)という漫画作品にて
これはきさまにやられた子分たちの分っ!!
これはトクの分っ!!
といったシーンが描かれており、これは上記の『北斗の拳』でのシーンより数年前に発表されている。
2025年現時点においては、この『野望の王国』よりも古い例は発見されていないようで、暫定的にこれが漫画作品における「これは○○の分!」の最初のものと推定されている。
ただし、この推定が正しかったとしても『野望の王国』は「漫画作品内での」最初であって、文学作品には更に遡る例がある。
フランスの作家「アレクサンドル・デュマ」の代表作である有名な小説『三銃士』(1844年発表)では、主人公「ダルタニャン」が敵と戦闘するシーンで以下の文章が出てくる。
En trois secondes d’Artagnan lui fournit trois coups d’épée en disant à chaque coup:
(ダルタニャンは三秒の間に三度斬りつけ、一撃ごとにこう言った。)«Un pour Athos, un pour Porthos, un pour Aramis.»
(「これはアトスの分、これはポルトスの分、これはアラミスの分」)Au troisième coup, le gentilhomme tomba comme une masse.
(三度目の斬撃により、士官は生気を失ったただの塊のように崩れ落ちた。)D’Artagnan le crut mort, ou tout au moins évanoui, et s’approcha pour lui prendre l’ordre; mais au moment où il étendait le bras afin de le fouiller, le blessé qui n’avait pas lâché son épée, lui porta un coup de pointe dans la poitrine en disant:
(ダルタニャンは彼が死んだか、少なくとも失神したと思い、武器を奪おうと近づいた。しかし、彼が腕を伸ばして身を探ろうとしたまさにその時、傷ついていたが剣を落としていなかった男は、剣先でダルタニャンの胸を突き刺し、こう言った。)«Un pour vous.
(「お前の分だな」)
— Et un pour moi! au dernier les bons!»[1] s’écria d’Artagnan furieux, en le clouant par terre d’un quatrième coup d’épée dans le ventre.
(「そして、俺の分だ!」ダルタニャンは激怒し、四度目の斬撃で彼を地面に倒した。)
(The Project Gutenberg eBook of Les Trois Mousquetaires, by Alexandre Dumas
からの引用)
「これは○○の分!」と連呼した後に、最後のとどめの一撃で「俺の分だ!」と言っており、『北斗の拳』の台詞にかなり近い。『北斗の拳』の著者が歴史的名作とされる『三銃士』を念頭に置いていた可能性はあるかもしれない。
ただ、さらに時代をさかのぼった16世紀末の作品である『ヘンリー六世』(ウィリアム・シェイクスピア)内でも以下のように「これは~~のため」と次々に言いつつ敵に攻撃を加える場面があり、よく似ている先行例は『三銃士』より以前から存在していたとも言える。
Clif. Here's for my oath; here's for my father's death. [Stabbing him.]
(クリフォード卿「これは我が誓いのため、そしてこれは我が父の死に報いるためだ」 [そう言いつつヨーク公を刺す])Queen. And here's to right our gentle-hearted king. [Stabbing him.]
(王妃マーガレット「そしてこれは柔和な王の面目を立てるためよ」 [同じくヨーク公を刺す])
(Henry VI Part 3 (1923) Yale/Text/Act I - Wikisource, the free online library
からの引用)
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/08(月) 11:00
最終更新:2025/12/08(月) 11:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。