みにくいアヒルの子の定理 単語

ミニクイアヒルノコノテイリ

1.1千文字の記事

みにくいアヒルの子の定理とは、純客観的な立場からはどんなものを較しても同程度に似ているとしか言えない、という定理である。

1969年情報理論学者理論物理学者の渡辺が提唱した。

概要

童話『みにくいアヒルの子』の話は一度くらい読んだことがあるだろう。アヒルの群れの中に一羽だけ白鳥が紛れ込むが、白鳥アヒルより大きく羽も灰色で、可らしいアヒルとは大違い……というアレ

実際人間から見ても白鳥が混ざっていれば一瞭然なのだが、では具体的にアヒル白鳥は一体どれぐらい異なっているといえるのだろうか?

この世の全ては似たようなもの?

まず両方共明らかに脊椎動物である。陸棲で羽が生えており、眼は二つ、クチバシがあるようだ。二本足で歩行し、鳴きコミュニケーションをとることができる。重量は一円玉より重いが、教会ほど重くない。ナメクジより素く動くが新幹線には遠く及ばない。口からビームはなし。石化力もなし。……あれ、なんか同じようにしか見えなくない?

うん、言いたいことは分かる。「色も大きさも全然違うじゃねーか!」とこういうことだ。だが、今考えているのは客観的な立場から見た較である。例えば地球生命には縁もゆかりもないアンドロメダ銀河からやってきた機生命体がこの二羽を較したとしたら?ひょっとすると色や大きさの違いが分からず「何か似たような動くタンパク質がいるな〜」ぐらいにしか思わないなんてことがありうる。それどころか、人間の区別が付くかすら怪しいかもしれない。

以上のことは数学的に明できる。2つのものの較とは、両者に何らかの観点を持ち込んでそれぞれの相違点を数え上げていくということである。較観点は無限に存在しうるが、もしその中のどれを重視するかのバイアスが一切なければ、ほとんどの観点はどちらに対しても同じ結果を出す。言い換えれば、2つのものはそれが何であるかにかかわらずほとんど一緒なのである。

違いが分かる男のアヒルと白鳥

もちろん人間日常的感覚から言えばアヒル白鳥の区別は明に可である。ただし、それは純客観的な視点ではありえないという点に注意しておく必要がある。

々は黄色灰色の違いが十分に大きな差で、工場で量産されるポリバケツの個体差より有意であることを知っている。アヒル同士でも厳密に同じ大きさのものは存在しないが、アヒル同士の個体差よりは白鳥との差が有意に大きいことを知っている。つまり、人間にとって両者の区別が一瞭然である理由は、どこを較すれば2つのものが別物なのかを先に決めて掛かっているから、ということなのである。

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