これまでは、基本的な音階、音長をピコカキコで再現する方法を習得してもらった。本記事ピコカキコ:基礎コース(2級)では、
同時に
これらの知識により、ピコカキコの演奏の幅が広がるはずである。
まだ初級、3級を履修していない方は→ピコカキコ:基礎コース(初級)、ピコカキコ:基礎コース(3級)へ・・・
曲によって演奏速度は異なる。演奏速度を指定するのが「T」である。
TはT150などのように直後に数字を入れて指定する。数字はBPM(Beat Per Minute: 一分間の拍数)を表す。
楽譜にBPM(M.M.)が書かれている場合もあるが、クラシックなどではLargoやAllegroのように、言葉で指定されることもある。楽典にもよるが、Largo(T40~60)やAllegro(T120~160程度)などが目安になる。
このコマンドは、曲の途中でも使用できる。「フェルマータ(特定の音を伸ばす)」や「リタルダンド(だんだんゆっくりになる)」「a tempo(演奏速度を元に戻す)」をする場合もこれを用いればよい。
T70 O5
R16F16F16F16 T65 R16C16C16C16 T60 R16F16F16F16 T50 R16 C16C16 T45 C16 F4R4;
また、このコマンドは例外的に全トラックに効果を持つ。よって一つのトラックで指定したものが全トラックに適用される。もし矛盾するものがあれば、後で指定したものが優先される。
例)
T70
C4E4G4E4 C1 T140 C4E4G4G4 C1;
T180
C4C4C4C4 C1 T50 C4C4C4C4 C1;
最初に第1トラックでT70が指定されているが、下部の第2トラックでT180が指定されている。このように「同時」の場合下部で指定されたT180が優先される。よって最初はT180で演奏される。次に第3小節の冒頭で第1トラックはT140を指定しているが、同時に第2トラックでT50を指定しているので、第3小節以降はT50で演奏される。
長いピコカキコを作成する場合、作成中に途中から演奏したい場合がある。そんなとき、Tの値を極限まで上げて(たとえばT99999)不要な部分を飛ばしてしまうという手がある。
T99999 O5
C4C4G4G4A4A4G2F4F4E4E4D4D4C2
T140
G4G4F4F4E4E4D2G4G4F4F4E4E4D2
C4C4G4G4A4A4G2F4F4E4E4D4D4C2
と記述することで、最初の4小節分を飛ばすことができる。
3級で作成したドレミの歌(課題曲2)をT99999を用いて途中第8小節まで飛ばし、第9小節からT150で演奏させなさい。
解答例)
T999999
C4.D8E4.C8 E4C4E2 D4.E8F8F8E4D4 F1
E4.F8G4.E8 G4E4G2 F4.G8A8A8G8F8 A1
T150
G4.C8D8E8F8G8 A1 A4.D8E8F+8G8A8 B1
B4.E8F+8G+8A8B8 <C2&C4 >B8B-8A4F4B4G4 <C1
初級で述べたようにピコカキコのデフォルトの音長は四分音符になっている。このおかげでG4G4G4G4はGGGGと書くことができた。しかし、曲によっては16分音符が連続する場合や、部分的に32分音符が連続する場合もある。そんなときにG16F16E16F16G16F16E16F16・・・や、G32A32G32A32G32A32G32A32・・・と書くのは非常にだるい。
この煩雑さを解消するためにデフォルトの音長を設定することができる。これが基本音長指定Lである。Lは曲の最初でも曲の途中でも指定することができる。
ただし、Lはトラックを越えて効果を及ぼす。しかもTとは異なる形で効果が生じる。
L4 O6 CDEF GFED L8 CDEFGFED C1;
O5 CCCCCCCC GGGGGGGG L16 CCCCCCCCGGGGGGGG CECECECEC2;
GGGGGGGGGGGGGGGG <DDDDDDDDDDDDDDDD >EEEEEEEE<DDDDDDDD G1;
たとえば上のように3つのトラックがある場合、最初のトラックがL8の設定で終わったら、何も指定しなければ第2トラックはL8から始まる。しかし、曲の途中でそのトラックの基本音長をL16に指定変更した場合は、その第2トラックだけがL16に指定変更される(第1トラックには影響なし)。そのままそのトラックの記述が終わった場合、第3トラックは何もしなければL16ではじまる。このように、セミコロンを越えて効果を持つ。トラックの冒頭部分にはL指定を忘れないようにしよう。他方、L自体はTのようにトラックを横にまたいだ効果はない(第2トラックのL16が第1トラックのL8に影響を及ぼしさない)。したがって、「4分音符をベースとした伴奏はL4のままで、8分音符をベースとした主旋律はL8で、場合によってトレモロでL32を主旋律の中で指定する」といったことも可能である。
たとえば3級の課題曲3で作成したテトリスのテーマで、第3トラックの部分は8分音符の連続である。この場合には
A8<E8>A8<E8>A8<E8>A8<E8>D8A8D8A8D8A8D8A8
A8<E8>A8<E8>A8<E8>A8<E8>D8A8D8A8D8A8D8A8;
のように書いていた部分は、
L8
A<E>A<E>A<E>A<E>DADADADA
A<E>A<E>A<E>A<E>DADADADA;
のように、より簡潔に書くことができる。(なお、このパートは繰り返しが多い。繰り返しについては本記事の後半でさらに簡単に書く方法を紹介する)
音楽にはpp(ピアニッシモ)、p(ピアノ)やf(フォルテ)、ff(フォルテッシモ)といった音量に関する指定がある。音に強弱をつける際に用いられるのがVである。V0~V15で指定し、V0が最も小さく、V15が最も大きな音になる。実際の効果を下のピコカキコで確認してみよう。
V0 CDEF V5 GAB<C V10 >CDEF V15 GAB<C
脱線:この「V」、一見ヴォリューム(Volume)のVのように見えるが、実は「ヴェロシティ(Velocity)のV」である。
より細かな音量指定をしたい場合には@Vを使用する。使用方法はVとまったく同じで、@V0~@V127で設定する。V[n]と指定したときの音量は@V[n × 8 + 7]と指定したときと同じになる。
ピコカキコのデフォルト音量は@V100(だいたいV11と同じ)になっている。
なおV0=@V7である。だから完全な消音をしたい場合は@V0と指定しなければならない。
このコマンドもトラックをまたぐ効果はない。あるパートだけ弱く演奏し、別のパートを強く演奏するということが可能である。
ピコカキコでは相対音量指定に()が用いられる。前の音より大きな音を出したい場合には「G(G」と書けばよい。音を小さくしたい場合には「G)G」と書けばよい。音楽記号のクレシェンド、デクレシェンドと同じである。
ただし、音量の変化量には注意が必要である。変化量は直前の絶対音量指定に影響される。@Vが直前にあれば1つずつ変化し、Vが直前にあれば8ずつ変化する。
たとえば
O4V0 C(D(E(F G(A(B(<C C(D(E(F G(A(B(<C
R4
O4@V7 C(D(E(F G(A(B(<C C(D(E(F G(A(B(<C
を演奏してみよう。上のピコではどんどん音が大きくなるのに対して、下のピコではほとんど変化しない(実は少しずつ大きくなっている。)
絶対音量指定(Vと@V)で述べたように、絶対音量指定のデフォルトは@V100である(V11ではない!)。よって何も指定せずに相対音量を()で変化させようとした場合、1ずつ変化する。
3級で作成したドレミの歌を、自分の好みに合った音量、演奏速度にしなさい。
各自の好みなので解答例は無し。
音の移行を滑らかにしたいとき「スラー」が用いられる。ピコカキコでは音と音とを&でつなげばよい。記号はタイと同じである。
L32
CDEFGAB<CC>BAGFEDC
R4
C&D&E&F&G&A&B&<C&C&>B&A&G&F&E&D&C
スラーを用いた際2点ほど注意すべき点がある。
L16
V1C(D(E(F(G(A(B(<C(C>(B(A(G(F(E(D(C
R4
C&(D&(E&(F&(G&(A&(B&(<C&(C&(>B&(A&(G&(F&(E&(D&(C
スラーでつながない場合は音が大きくなるのに対して、スラーでつなぐ場合は音が変化しない。
発展:スラー中に音量を変化したい場合は1級で説明するエクスプレッション(@X)を用いる。
同じ部分が繰り返される場合ループ(/::/)を使うのが便利である。「/:」と「:/」で挟まれた部分を繰り返すコマンドである。繰り返す回数は「/:」の直後に「/:5」のように書く。
たとえば
/:4 CDEF:/
は、ドレミファを4回繰り返す。
繰り返す回数のデフォルトは2である。つまり何も指定しない限り/:と:/に挟まれる部分を2回繰り返して次に進む。
たとえば、
は、
l8
/:
/:8 G:/
/:8 C:/
:/
のように書くことができる(見やすいように着色、改行を施した)。
これはベースやドラムのように一定のリズムを繰り返す伴奏の際に有効である。3級の課題曲3(テトリス)の第3トラックは
L8
/:
/:4 A<E>:/
/:4 DA:/
:/
;
と簡略化できる(識別のため改行と着色を施した)。ね、簡単でしょ?
なお音楽では最終ループだけ途中から演奏が違う場合がある。そういった時にはループ脱出(/)を入れると最終ループの時だけその部分からループを抜ける。
たとえば
は
l8/:4CDEF/GFED:/G>G<C4
と書くことができる。
ループを繰り返すうちにオクターブや音量がどんどん変化してしまう場合がある。
たとえば、
の場合に、
/:4CDEFGAB<C:/
と書いてしまうと音がどんどん高くなってしまう(実際に演奏してみよう)。
/:4CDEFGAB<C > :/
のように書くとことも可能であるし、絶対オクターブ指定を用いて
/:4 O5 CDEFGAB<C:/
と書くことも可能である。音量についても同様である。
なおこの特性を逆に利用して以下のようなこともできる。
l16
/:4cdeg<://:4c>ged:/
>/:4ab<ce://:4aec>b:/
/:4fga<c://:4fc>a/g:/f
/:4gab<d://:4gd>ba:/
ループ回数に0や1を指定することができる。これを利用すると複数トラックのうち特定のパートだけを演奏させることができる。
たとえば、
/:1cdefgfedc1:/
;
/:0ccccccccc1:/
;
のように記述すると第1トラックだけが演奏されて、第2トラックは演奏されない。2つのトラックを同時に演奏する場合には第二トラックの0を1に変えるだけでよい。上述のT99999を用いた方法と同様、バグフィックスに有効な方法である。
/**/で囲まれた部分は演奏で無視される。この中には全角文字を入れることができるので、ピコカキコ作成上の目印、さまざまなコメントを書くことができる。
例:
/*ここまで6小節*/
/*ここでリピート。この最後の音C+2はo6。次がo4d4からはじまる*/
/*このあたりの音は聞き取れない。誰か修正してほしい。*/
/*もう疲れた。ぴこだるい。*/
/*イギリス~ イギリス~ 国は小さいけど勢力は大きいさ~*/(→こちら)
/* あけましておめでとう。とりあえずこの記事の掲示板は全世界から書き込んでくるなぁ。お正月のうちにポケモンのハートゴールドとソウルシルバーが欲しいなぁ…っていうかこれで450番目…になるかもしれん。 */(→こちら)
ただし、歌詞を書いて投稿すると著作権上問題になったりするので注意(→こちら参照)。
コメントアウトには2点ほど注意点がある。
「/」と「*」の間にスペースや改行が入らないようにすること。通常ピコカキコはスペースや改行を無視するが、コメントアウトでは無視しない。他方「/*」と「*/」の間には改行があってもよい。
悪い例
/ *ねこふんじゃった*/
/
*ねこひっかいた
*/
良い例
/*
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
第1楽章
ベートーベン作曲交響曲第5番(運命)より
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
*/
もうひとつの注意点は繰り返し記号(/::/)と併記した時にエラーが出る点である。
たとえば
/:f+4a+4a+4r4:/
の部分をコメントアウトして
/*/:f+4a+4a+4r4:/*/
とするとエラーが出る。この場合は繰り返し記号と並ばないよう注意しなければならない。
なお、
/:f+4a+4a+4r4://*ここで繰り返し2回*/
のように、ループが終わっている場合(または始まる前)はエラーが出ない。
コメントアウトを用いた部分演奏も可能である。 たとえば、演奏トラック内で細かな速度変更がある場合(リタルダンドなどを繰り返す場合やLFO(本コースでは取り扱わない)を用いる場合)T99999が使えないので、コメントアウトを用いて部分演奏をさせる。(→こちらも参照)
ただし、この方法はトラックが多いときには面倒である。加えて、上述のように繰り返し記号(/::/)と並べて書くとエラーになったりするという問題もある。T99999が使えない時などの補助的に用いるのがよいだろう。
次の曲をピコカキコで作成しなさい。ただし、繰り返し記号(/::/)、およびコメントアウト(/**/)を最低1度ずつ用いること。
第1トラック
第2トラック
解答例)
/*-----第1トラック-----*/
t180 l8 o6
d+c+/:r4f+4f+4d+c+:/
r4f+f+r4f+4r4f4f4d+c+/*第5小節*/
/:r4f4f4d+c+:/
r4ffr4f4r4f+4f+4r4
;
/*-----第2トラック-----*/
l8 o5
r4/:f+4a+4a+4r4:/
f+4a+a+d+4a+4c+4b4b4r4/*第5小節*/
/:c+4b4b4r4:/
c+4bbd+4b4f+4a+4a+4r4
;
作成中のピコカキコに複数トラックがあり、しかもその一つのパートの一部分だけを演奏したいという時がある。たとえば課題曲3で作成した「ねこふんじゃった」の第2パートだけを第6小節から鳴らしたいという場合である。もし、
/*-----第1トラック-----*/
/:1
t180l8o6
d+c+/:r4f+4f+4d+c+:/
r4f+f+r4f+4r4f4f4d+c+/* 第5小節*/
/:r4f4f4d+c+:/
r4ffr4f4r4f+4f+4r4
:/
;
/*----- 第2トラック-----*/
/:1
l8o5
r4/:f+4a+4a+4r4:/
f+4a+a+d+4a+4c+4b4b4r4/* 第5小節*/
/:c+4b4b4r4:/
c+4bbd+4b4f+4a+4a+4r4
:/
;
の用に記入していると、第1トラックの演奏時には普通に演奏できるが、第2トラックだけを演奏したい場合、第1トラックのテンポの記号が無視されてしまうので演奏が変になる。実際緑で着色した部分を0にして演奏してみよう。t180が無視され、演奏が非常に遅くなるはずである(T120)になる。第2トラックの冒頭にT99999を、同トラックの第6小節冒頭にT180をつけなければならない。小節記号が存在しないピコカキコでは小節を探すのに一苦労である。
こうした問題をなくすためテンポ指定用に特化した無音のトラックを別個に作ると便利である。
/*-----テンポ用無音トラック-----*/
T99999
R4/:4 R1:/ /*←R4はねこふんじゃったが弱起のため第1小節が4分音符一個分しかないため。ここは弱起1個分+全音符4個分を飛ばし、第6小節から演奏する。曲に合わせて無音トラックを作るべし*/
T180
;
/*-----第1トラック-----*/
/:0
l8o6
d+c+/:r4f+4f+4d+c+:/
r4f+f+r4f+4r4f4f4d+c+/* 第5小節*/
/:r4f4f4d+c+:/
r4ffr4f4r4f+4f+4r4
:/
;
/*----- 第2トラック-----*/
/:1
l8o5
r4/:f+4a+4a+4r4:/
f+4a+a+d+4a+4c+4b4b4r4/* 第5小節*/
/:c+4b4b4r4:/
c+4bbd+4b4f+4a+4a+4r4
:/
;
の太字で書いた部分がそうである。紫で着色された部分を変えることで好きな部分から演奏を始めることができる。緑で書かれた数字を0にすればそのパートを演奏しない。上記の例では第2トラックの第6小節から演奏が始まる(ねこふんじゃったは第4拍から始まるので(弱起)R4が第1小節であり、その後全休符4つ(/:4 R1:/)で合計5つの小節になる)。
細かなリタルダンドやフェルマータなどはあとで指定するとして、とりあえずこのようにして複数トラックを完成してしまうのも便利ではなかろうか。
2級はここまで。
次は→ピコカキコ:基礎コース(1級)へ・・・。
ピコカキコ:基礎コース |
初級- 3級 - 2級 - 1級 |
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最終更新:2025/03/29(土) 02:00
最終更新:2025/03/29(土) 01:00
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