中割り(なかわり)は、以下を意味する。
この記事では、1.アニメーションの作画工程のひとつとしての中割りについて記述する。
セルアニメを始めとした手描きによるアニメーションには、動きを付けていくプロセスとして2通りの手法が用いられる。ひとつはストレート・アヘッド(Straight Ahead)と呼ばれ、始点となるコマから順繰りに「送り描き」していく方法。もうひとつはポーズ・トゥ・ポーズ(Pose to Pose)と呼ばれ、始点と終点など動きの要所となる原画を描いた上で、原画同士を繋ぐように、間に位置するコマを描き入れていく方法である。
ポーズ・トゥ・ポーズの手法において、間にコマを描き入れる作業を中割りと呼ぶ(動詞として「(原画と原画の)中を割る」という表現が用いられる)。また、そうして描き入れられたコマそのものを、名詞として中割(なかわり)と呼ぶ[1]。
日本の商業アニメーション制作の現場では分業に適したポーズ・トゥ・ポーズが主として用いられ、中割りは動画マンに割り振られる。原画を担当する原画マンと別に置かれたこの役職は、原画のクリンナップ[2]と中割りからなる動画作業を担う[3] 。
以下、現在の日本の商業アニメーション制作の現場を前提として、具体的な工程を例示しながら中割りについて記述する。
中割を入れることで動きを滑らかにする。また、割る枚数によって滑らかさの度合いをコントロールする。「フルアニメ」の記事も参照。
お辞儀の作画を例に取る。いま、原画として人物が直立しているコマと、頭を下げているコマの2枚を描いたとする。この2枚の原画で動作の始点と終点が示されているが、これだけで自然な動きを表現することは難しい[4]。その際、この2枚の間に中割を1枚入れることで動きは自然なものに近づくし、中割の枚数を2枚、3枚と増やしていけば動画がより密になり、「ぬるぬる動く」アニメーションになる。中割の枚数は、原画マンによってタイムシート(指示書)に指定され、動画マンはこれに従って中割りを行う。
中割を入れる位置によって、等速な動きや不等速な動きを描き分けることができる。
例として、平面上を転がるボールのような等速度の運動を作画するには、原画と原画の間を等間隔に割る(均等割り)のが適当である。一方、地面に落ちて弾むボールのような、緩急を持った動きを表現するには、2枚の原画のうち、速度が緩む方にツメて(寄せて)割れば良い。
今日では、こうした「ツメ」も原画マンによって厳密に指定されるのが一般的である。原画マンが原画に「ツメ指示」と呼ばれるゲージを描き入れ、動画マンはこれを頼りに中割りを行う。
ツメとツメ指示については、以下のWEBサイトにて図付きで解説されている。
具体的な中割りのやり方には以下のようなものがあり、原画の特性によって使い分けられる。ここでは作画用紙を用いた紙作画を前提とする。
主としてアニメ作品を鑑賞する視聴者の目線から、作中の1コマとしての中割について記述する。
我々がテレビやスクリーンを通して目にするのは、クリンナップされた原画と中割が混在した動画であり、両者を確実に区別するには、原画そのもの、あるいはタイムシートを参照する必要がある。しかしながら、アニメーションには目パチ(まばたき)や口パク、単純な歩きや走りなど、割り方を含む作画の手法が定石として確立されている動きが多い。そういった動きを含むカットに関しては、どのコマが中割であるか、パターンに当てはめて見当をつけることも可能である。
「定石」化した作画パターンの例をひとつ示す。上に挙げた目パチと口パクの作画手法のひとつとして、開(あ)き、閉じ、中(なか)の3枚でこれを表現するやり方がある。この手法において、開き目(口)と閉じ目(口)は原画工程で作画し、動画工程ではこの2枚を中割りして中目(口)とするのが原則である。
中割が「オバケ」と呼ばれる表現手法と混同されることがある。オバケは激しく動く物体の残像を表すため、その形を崩して作画する手法のこと。こうした表現は原画の段階で入れられるのが通例で、中割りは原画のオバケ表現のニュアンスを拾って行われる[7]。
「中割りの手法」に作業手順を示したとおり、中割りは前後の原画同士を繋ぐようにして行われる。こうした工程の性格上、中割を一枚の絵として見ると、原画と比較して崩れた仕上がりに見えがちである。崩れ方が過度でなければ、アニメーションとしてのひと続きの動きの中では不自然さを感じさせづらいが、アニメ作品を手軽にキャプチャしてインターネット上で共有することができる今日においては、そうした中割の1枚がアニメーションから切り離された静止画像として「作画崩壊」であるとの触れ込みとともに言いはやされるケースもある。
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最終更新:2024/12/23(月) 18:00
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