名目為替レート 単語

メイモクカワセレート

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名目為替レート英:nominal exchange rate)とは、経済学で使われる言葉である。関連性の高い言葉は実質為替レートである。

概要

定義

名目為替レートとは、自通貨を外通貨等価交換するときの率を計算した数値である[1]

表現

「自通貨の外通貨Aに対する名目為替レートは◇であり、自通貨の外通貨Bに対する名目為替レートはである」などと表現され、「自通貨の」を省略することもある。

ただし、経済学では自以外の全てのを単一の外と見なし、自通貨以外のすべての通貨を単一の外通貨と見なすことがある。そういう場合は「自通貨の名目為替レートは○である」と表現され、「自通貨の」を省略することもある。

経済学ではしばしば名目為替レートをeと表記する[2]

日本における数式

日本において、外通貨Aに対する名目為替レートは次の数式で表される。

通貨Aに対する名目為替レート=等価交換するときの通貨の量÷等価交換するときの通貨Aの量

1単位の外通貨Aを○単位の自通貨等価交換できるとき、外通貨Aに対する名目為替レートは○である。

ニュースで「本日の為替は1ドル110円」と報道しているとする。それは1ドル110円と交換できるという意味である。その場合のドルに対する名目為替レートは110÷1であり、110と計算できる。

ニュースで「本日の為替は1ユーロ135円」と報道しているとする。それは1ユーロ135円と交換できるという意味である。その場合のユーロに対する名目為替レートは135÷1であり、135と計算できる。

ニュースで「本日の為替は1ドル○円」と報道されたとき、ドルに対する名目為替レートは○である。

ニュースで「本日の為替は1ユーロ円」と報道されたとき、ユーロに対する名目為替レートはである。

純輸出需要を読み取れない

名目為替レートは自通貨と外通貨の交換率を計算した数値であり、世界共通品質の財を世界が販売していると仮定しつつそうした財の外価格と自価格の率を計算した数値ではない。

このため名目為替レートを見ただけでは、「純輸出需要が高い状態なのか、それとも純輸出需要が低い状態なのか」という判断がつかない。

純輸出需要が高い状態なのか、それとも純輸出需要が低い状態なのか」という判断をするためには実質為替レートを見なければならない。

短期と長期の違い

短期においては物価が硬直的であり、実質GDP(Y)が伸縮的である。このため何らかの要因で名目為替レートが決定すると、実質為替レートが決定し、それに褄を合わせるかのように実質GDP(Y)が変動しつつ純輸出が変動する。

長期においては自然率仮説が提唱されるほどに実質GDP(Y)が硬直的であり、物価が伸縮的である。「何らかの要因で名目為替レートが決定すると、実質為替レートが決定し、それに褄を合わせるかのように実質GDP(Y)が変動しつつ純輸出が変動する」という現象がなかなか起こらない。

短期の日本において名目為替レートと実質為替レートと純輸出の変動が一致する

短期の日本において、名目為替レートが高くなると、実質為替レートが高くなり、輸出が増えたり輸入が減ったりして純輸出が増える。

短期の日本において、名目為替レートが低くなると、実質為替レートが低くなり、輸出が減ったり輸入が増えたりして純輸出が減る。

短期の日本において、名目為替レートの増減がそのまま実質為替レート純輸出の増減になる。


日本において、実質為替レート=名目為替レート×世界共通品質の財1つの外価格を外通貨で表示」÷世界共通品質の財1つの自価格を自通貨で表示」である。短期において価格が硬直的で黄色背景部分が一定なのだから、名目為替レートが1.2倍になれば実質為替レートも1.2倍になる。

価格が硬直的な短期において、円売りドル買いが進み、円安ドル高になり、1ドル100円が1ドル120円になり、名目為替レートが100から120になって1.2倍になると、実質為替レートも1.2倍になり、輸出が増えたり輸入が減ったりして純輸出が増える。

価格が硬直的な短期において、円買いドル売りが進み、円高ドル安になり、1ドル100円が1ドル80円になり、名目為替レートが100から80になって0.8倍になると、実質為替レートも0.8倍になり、輸出が減ったり輸入が増えたりして純輸出が減る。

長期の日本において名目為替レートと実質為替レートと純輸出の変動が一致しない

長期の日本において、名目為替レートが高くなったとしても、実質為替レートが高くなるとは限らず、輸出が増えたり輸入が減ったりして純輸出が増えるとは限らない。

長期の日本において、名目為替レートが低くなったとしても、実質為替レートが低くなるとは限らず、輸出が減ったり輸入が増えたりして純輸出が減るとは限らない。

長期の日本において、名目為替レートの増減がそのまま実質為替レート純輸出の増減になるとは限らない。


日本において、実質為替レート=名目為替レート×世界共通品質の財1つの外価格を外通貨で表示」÷世界共通品質の財1つの自価格を自通貨で表示」である。長期において価格が伸縮的で黄色背景部分が変動するのだから、名目為替レートが1.2倍になったとしても実質為替レートが1.2倍になるとは限らない。

実質為替レートが一定で自国の物価が上昇すれば名目為替レートが上昇する

実質為替レートが一定でありつつインフレになって自の物価が上昇すれば、名目為替レートが上昇して自通貨安・外通貨高になる。

ハイパーインフレが発生するとこのことは顕著になる。メキシコの物価準は1983年から1988年にかけて2300上昇したが、メキシコ通貨ペソの名目為替レートは1983年の1ドル144ペソから1988年の1ドル=2281ペソに変化し、大幅な自通貨安となった[3]

価格が変動しない短期における考察に向く

短期において価格は硬直的であり変動しないが、長期において価格は伸縮的であり変動する。

短期の経済を考えるときは、「どこのも価格が硬直的で変動しない」という仮定を置くことができ、「名目為替レートの変動がそのまま実質為替レートの変動になる」という仮定を置くことができる。小国開放経済の短期的経済をマンデル=フレミングモデル考察するときは、タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPで考えてよい[4]

一方で長期の経済を考えるときは、「どこのも価格が伸縮的で変動する」という仮定になり、「名目為替レートの変動がそのまま実質為替レートの変動になる」という仮定を置くことができない。小国開放経済の長期的経済をマンデル=フレミングモデル考察するときは、タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPで考えるわけにはいかず、タテ軸実質為替レート・ヨコ軸実質GDPで考える必要がある[5]

日本とアメリカ合衆国の数式の違い

日本における名目為替レートの数式アメリカ合衆国における名目為替レートの数式は、と分子が正反対である。前者は「名目為替レートは外通貨1単位に対する自通貨の量」という数式であるのに対し、後者は「名目為替レートは自通貨1単位に対する外通貨の量」という数式である。

このため日本の文献における「名目為替レートの上昇」と、アメリカ合衆国の文献における「名目為替レートの上昇」は、意味が正反対になる。

日本における名目為替レート

数式

日本において、外通貨Aに対する名目為替レートは次の数式で表される。

通貨Aに対する名目為替レート=等価交換するときの通貨の量÷等価交換するときの通貨Aの量

1単位の外通貨A(ドルポンドやユーロ)を○単位の自通貨日本円)と等価交換できるとき、外通貨Aに対する名目為替レートは○である。

日本では為替を「1ドル○円」と表現することが恒例であり、ニュースで常に「本日の為替は1ドル110円」などと報道している。それは1ドル110円と交換できるという意味である。その場合の名目為替レートは110÷1であり、110と計算できる。

ニュースで「本日の為替は1ドル○円」と報道されたとき、円のドルに対する名目為替レートは○である。

名目為替レートの上昇を自国通貨安とか減価とか切り下げという

日本変動相場制を採用し、1ドル100円が1ドル120円になり、名目為替レートが100から120になって上昇したとする。そのことは自通貨である円の価値が安くなったことを意味するので、円安ドル高といい、自通貨安・外通貨高といい、円の減価といい、円が弱くなるという。名目為替レートの「上昇」は、円「安」であり、円の「減」価であり、円が「弱く」なることである。

日本固定相場制を採用し、「1ドル100円の交換率を1ドル120円にして、固定名目為替レートを100から120に上昇させる」と発表したとする。そのことは自通貨である円の価値を安くすることを意味するので、円の切り下げという。名目為替レートの「上昇」は、円の切り「下げ」である。

名目為替レートのほうで数字が増えてポジティブな言葉を使うときは、通貨価値のほうでネガティブな言葉を使う。

名目為替レートの下落を自国通貨高とか増価とか切り上げという

日本変動相場制を採用し、1ドル100円が1ドル80円になり、名目為替レートが100から80になって下落したとする。そのことは自通貨である円の価値が高くなったことを意味するので、円高ドル安といい、自通貨高・外通貨安といい、円の増価といい、円が強くなるという。名目為替レートの「下落」は、円「高」であり、円の「増」価であり、円が「強く」なることである。

日本固定相場制を採用し、「1ドル100円の交換率を1ドル80円にして、固定名目為替レートを100から80に下落させる」と発表したとする。そのことは自通貨である円の価値を高くすることを意味するので、円の切り上げという。名目為替レートの「下落」は、円の切り「上げ」である。

名目為替レートのほうで数字が減ってネガティブな言葉を使うときは、通貨価値のほうでポジティブな言葉を使う。

短期向けマンデル=フレミングモデルにおいてLM*曲線が右肩上がりになる

タテ軸名目為替レート(e)・ヨコ軸実質GDP(Y)の短期向けマンデル=フレミングモデルにおいて、LM*曲線が右肩上がりになる[6]

アメリカ合衆国における名目為替レート

数式

アメリカ合衆国において、外通貨Aに対する名目為替レートは次の数式で表される。

通貨Aに対する名目為替レート=等価交換するときの通貨Aの量÷等価交換するときの通貨の量

1単位の自通貨ドル)を○単位の外通貨日本円やポンドやユーロ)と等価交換できるとき、名目為替レートは○である。

アメリカ合衆国では為替を「1ドル○円」「1ドルポンド」と表現することが恒例であり、ニュースで常に「本日の為替は1ドル110円、1ドル0.8ポンド」などと報道している。

アメリカ合衆国においてニュースで「本日の為替は1ドル○円」と報道されたとき、ドルの円に対する名目為替レートは○である。

名目為替レートの上昇を自国通貨高とか増価とか切り上げという

アメリカ合衆国変動相場制を採用し、1ドル100円が1ドル120円になり、アメリカ合衆国において名目為替レートが100から120になって上昇したとする。そのことは自通貨であるドルの価値が高くなったことを意味するので、ドル円安といい、自通貨高・外通貨安といい、ドルの増価といい、ドルが強くなるという。名目為替レートの「上昇」は、ドル「高」であり、ドルの「増」価であり、ドルが「強く」なることである。

アメリカ合衆国固定相場制を採用し、「1ドル100円の交換率を1ドル120円にして、固定名目為替レートを100から120に上昇させる」と発表したとする。そのことは自通貨であるドルの価値を高くすることを意味するので、ドルの切り上げという。名目為替レートの「上昇」は、ドルの切り「上げ」である。

名目為替レートのほうで数字が増えてポジティブな言葉を使うときは、通貨価値のほうでもポジティブな言葉を使う。

名目為替レートの下落を自国通貨安とか減価とか切り下げという

アメリカ合衆国変動相場制を採用し、1ドル100円が1ドル80円になり、名目為替レートが100から80になって下落したとする。そのことは自通貨であるドルの価値が安くなったことを意味するので、ドル円高といい、自通貨安・外通貨高といい、ドルの減価といい、ドルが弱くなるという。名目為替レートの「下落」は、ドル「安」であり、ドルの「減」価であり、ドルが「弱く」なることである。

アメリカ合衆国固定相場制を採用し、「1ドル100円の交換率を1ドル80円にして、固定名目為替レートを100から80に下落させる」と発表したとする。そのことは自通貨であるドルの価値を低くすることを意味するので、ドルの切り下げという。名目為替レートの「下落」は、ドルの切り「下げ」である。

名目為替レートのほうで数字が減ってネガティブな言葉を使うときは、通貨価値のほうでもネガティブな言葉を使う。

短期向けマンデル=フレミングモデルにおいてLM*曲線が右肩下がりになる

タテ軸名目為替レート(e)・ヨコ軸実質GDP(Y)の短期向けマンデル=フレミングモデルにおいて、LM*曲線が右肩下がりになる[7]

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー184ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー186ページ
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』195ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー364ページ
  5. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー396~397ページ
  6. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』368ページ
  7. *mundell-fleming modelexit」で画像検索するとそのような図が多く見つかる。
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