長期金融市場 単語

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長期金融市場とは、期間1年をえる資金を運用・調達する取引が行われる市場の総称である。資本市場とかキャピタル・マーケット(capital market)とも言う。反対語は短期金融市場

長期金融市場で形成される金利のことを長期金利という。
  

概要

資金を運用・調達する取引が行われる市場のことを金融市場という。

1年以下の期間の資金を扱うものを短期金融市場といい、1年をえる期間の資金を扱うものを長期金融市場という[1]

1年未満の期間の資金を扱うものを短期金融市場といい、1年以上の期間の資金を扱うものを長期金融市場ということもある[2]

長期金融市場は、金融機関が長期の貸し付けを行う長期貸付市場市場の2つに大別される。ただし、長期貸付市場はあまり話題にならず、いつも注されるのは市場のほうである。

市場は債券市場株式市場に大別される。債券市場国債地方債や社債や金融債といった債券を扱う市場であり、株式市場企業株式を扱う市場である。
  

債券市場

さまざまな債券

債券とは、政府地方公共団体政府関係機関企業や金融機関や外政府や外企業が資金調達のために発行して市場へ売却する券のことである。券面には「発行者」と「発行者が負っている債務」を記してある。所持者は発行者に対して券面に記載されている通貨を要する債権を持つことができる。

債券は、政府が発行する国債と、地方公共団体が発行する地方債と、独立行政法人などの政府関係機関が発行する政府関係機関債と、企業・金融機関が発行する社債と、一部の金融機関が発行する金融債と、外政府企業日本市場で発行する外国債がある。

国債地方債政府関係機関債は公共債(債)と呼ばれ、社債と金融債は民間債と呼ばれる。

社債は公共債と民間債や外国債をまとめた概念である。「社が発行する債券」という意味ではない。

以上のことをまとめると次のようになる。
 

債券(社債) 公共債(債) 国債 中央政府が発行する
地方債 地方公共団体が発行する
政府関係機関 政府関係機関が発行する
民間 社債 企業・金融機関が発行する
金融債 一部の金融機関が発行する
国債(外債) 政府企業日本市場で発行する

 
国債にはサムライ債とショーグン債がある。サムライ債は日本円建てであり、ショーグン債はドルなどの外貨建てである。

政府企業日本に進出して日本で活動するときは日本円を調達する必要がある。そのときはサムライ債を日本の債券市場で売る。

1981年から2020年現在まで経常収支黒字が40年続いている日本には外貨を多く稼いでいる企業が多い。外政府企業日本市場にやってきてショーグン債を発行売却して外貨を借りていくことも多い。
 

短期金融市場の国庫短期証券市場と、長期金融市場の中期国債・長期国債・超長期国債市場

短期金融市場には国庫短期証券市場があり、国庫短期証券を扱っている。その一方で、長期金融市場には中期国債・長期国債長期国債市場があり、中期国債・長期国債長期国債を扱っている。

国債という言葉は「政府が発行する債券」と定義することができ、「2ヶ債と3ヶ債と6ヶ債と1年債の国庫短期証券と、2年債と5年債の中期国債と、10年債の長期国債と、20年債と30年債と40年債の長期国債をすべて含む概念である」と定義することができる。
   

短期金融市場のCP市場と、長期金融市場の社債市場

短期金融市場にはCP市場があり、CP(コマーシャルペーパー 短期社債)を扱っている。その一方で、長期金融市場には社債市場があり、社債を扱っている。

発行日から支払日までの期間が1年未満だとCPになり[3]、発行日から支払日までの期間が1年以上だと社債になる。CPと社債の共通点は、企業銀行が発行するという点である[4]
 

短期金融市場のCD市場と、長期金融市場のCD市場・金融債市場

短期金融市場にはCD市場があり、発行日から支払日までの期間が1年以内のCD(譲渡性預金)を扱っている。その一方で、長期金融市場にもCD市場があり、発行日から支払日までの期間が1年をえるCDを扱っている[5]。また、長期金融市場には金融債市場があり、金融債[6]を扱っている。

CDと金融債の共通点は、銀行が発行するという点である。
 

株式市場

株式・株主・株券の定義

株式という言葉を正式に表現すると、企業に出資した人が企業に対して持つ地位や権利のことである。

株式を持つ人のことをという。企業に対して経営参加権と利益配当請権と残余財産分配請権をもっており、株主総会に出席したり、配当金を受け取ったり、会社が解散した後に残った資産を受け取ったりする。

株式を表章する有価券のことを株券という。

ゆえに、「長期金融市場の市場株券市場」というのがより正しい表現であると言える。しかし、「長期金融市場の市場株式市場」と表現することが定着している。
 

株式で得られたお金は純資産の部に書く

企業は、株式を発行して売却することにより資金を調達することができるのだが、株式の発行で集めた資金というものを返済する義務がない。銀行から借り入れたり社債を発行したりして調達した資金というものはいずれ返済しなくてはならないが、それとは対照的である。

株式を発行して得られた資金は、貸借対照表バランスシート)の純資産の部に書き入れる。一方、銀行から借り入れたり社債を発行したりして資金を得たら、貸借対照表バランスシート)の資産の部に「銀行預金●円」と書きつつ、負債の部に「返済すべきお金◆円」と書くことになる。
 

株式と永久債の類似点

株式永久[7]は似ているところがある。

どちらも資金調達の手段で、発行者は元本の返済義務を負っていない。「元本を返済する義務が極めて遠い将来に先送りされており、極限長期の資金調達である」と表現できる。

永久債は利子を支払い続けるのに対し、株式は利益が出たときにその利益を配当金として分配することがあり、永久債の利子株式の配当金は似ている。
 

関連リンク

コトバンク記事

iFinance記事

関連項目

脚注

  1. *日本銀行の機能と業務(有斐閣)日本銀行金融研究所exit_nicoichiba 100ページでそのように定義されている。貸借対照表バランスシート)には一年基準があり、1年以下を流動○○と扱い、1年をえると固定○○と扱う慣習があるので、その一年基準に沿った分類となっている。
  2. *野村證券の証券用語解説集exitや、大和証券の証券用語解説集exitにそうした定義が載っている。社債、株式等の振替に関する法律exitの第66条で「短期社債(CP)は1年未満で、社債は1年以上である」と定義されているので、短期社債(CP)が属する短期金融市場を1年未満と扱い、社債が属する長期金融市場を1年以上と扱っている。
  3. *CPを定義するのは社債、株式等の振替に関する法律exitの第66条であり、その条文の中では「短期社債」と呼ばれていて「期間が1年未満」と定義されている。
  4. *銀行もCPや社債を発行して、貸借対照表バランスシート)の負債の部に返済金額を書き入れる。全銀行協会(全協)『勘定科目の説明exit』。
  5. *日本CD(譲渡性預金)が始まったのは1979年であるが、このときは3ヵ以上6ヵ以内の期間に限定されていた。しかし1986年に「1ヵ以上1年以内」に規制緩和され、1988年に「2週間以上2年以内」に規制緩和され、1998年に期間の規制が撤された。CDを1日以上2年以下の期間で販売している銀行もあるし(七十七銀行exit)、1日以上10年以下の期間で販売している金融機関もある(中国労働金庫exit)。
  6. *金融債は特別な法律により一部の金融機関が発行する債券である。ただし、みずほ銀行2007年3月27日をもって金融債の新規発行を終了するなどの流れがあり、金融債の発行は減少傾向にある。 債券の基本とカラクリがよ~くわかる本 第3版(秀和システム久保田博幸 46ページ
  7. *永久債exitとは、元本の満期償還の規定が存在せず永久利子の支払いが続く債券のことをいう。
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