短期金融市場とは、期間1年以下の資金を運用・調達する取引が行われる市場の総称である[1]。マネー・マーケット(money market)とも言う。反対語は長期金融市場。
短期金融市場で形成される金利のことを短期金利という。
資金を運用・調達する取引が行われる市場のことを金融市場という。1年以下の期間の資金を扱うものは短期金融市場といい、1年を超える期間の資金を扱うものは長期金融市場という[2]。
短期金融市場は、金融機関が参加する銀行間取引市場(インターバンク市場)と、金融機関だけではなく政府や地方公共団体や事業法人が参加できるオープン市場がある。
銀行間取引市場(インターバンク市場)には中央銀行・銀行・証券会社・短資会社・保険会社といった金融機関が参加する。
コール市場のコール(call)というのは「応える」という意味である。いつでも人が詰めかけていて呼べばすぐに応えが返ってくるような市場なので、コール市場と呼ばれるようになった。
1901年(明治34年)の金融恐慌の経験に基づき、金融機関相互の資金繰りを最終的に調整し合う場所として1902年になって自然発生的に成立した市場で、日本で最も長い歴史を持つ短期金融市場である[3]。
コール市場には有担保取引(有担保コール)と無担保取引(無担保コール)がある。1927年の昭和金融恐慌のころから有担保コールがコール市場の原則であり主流だった。しかし1985年になって無担保コールが行われるようになり、1990年代には無担保コールの市場規模が有担保コールの市場規模を上回るようになった[4]。
無担保コールでも有担保コールでも、翌日物(期間が1営業日のもの。オーバーナイト物ともいう)から1年物(期間が1年のもの)までさまざまな種類の期間で資金を借りることができる。しかし、その中で中心となっているものは翌日物である[5]。
1990年代中頃から日本銀行が政策金利として誘導しているのは、コール市場の中の無担保コール翌日物の金利である。
銀行が1年以下の短期で企業に貸し付けるとき、手形貸付の形態を採用することが多い。つまり、銀行からお金を借りようとする企業に手形を振り出させて、手形と引き換えに銀行が融資をする形態である。
また銀行は企業から手形と引き換えにお金を渡す手形割引という業務も行っている。
手形貸付や手形割引の代償として手形を保有している銀行は、日銀当座預金を確保するため、保有する手形を売却して日銀当座預金を得ることがある。この手形売却を行う場所が手形市場と呼ばれるものである。
企業から渡された手形(原手形という)をそのまま手形市場に売却する方式と、企業から渡された手形を担保として銀行が振り出す手形(表紙手形という)を手形市場に売却する方式がある。
市中銀行が手形割引して企業から買い取った手形を、他の市中銀行や中央銀行が手形市場で利子の分だけ割り引いて買い取ることを再割引という[6]。
また、1971年5月より前の市中銀行は、2ヶ月以上の資金調達をコール市場で行っていたが、1971年5月以降の市中銀行は2ヶ月以上の資金調達を手形市場で行うようになった。市中銀行が手形を振り出して、その手形を手形市場に売却して資金を得るのである。
日銀が余剰資金を吸収する資金吸収オペレーションの1つに「日銀手形の売りオペ」がある。この日銀手形は日銀が振り出す3ヶ月以内の手形である。日銀手形の売りオペは手形市場で行われる。
2011年の時点では、手形市場の取引が少なくなってきている[7]。
銀行間取引市場(インターバンク市場)には金融機関だけではなく政府や地方公共団体や事業法人が参加する。
政府が発行して売却する国債の中で、発行日から償還日までの期間が1年以内の短期国債を国庫短期証券(TDB)という。国庫短期証券には2ヶ月物と3ヶ月物と6ヶ月物と1年物の4種類がある。
この国庫短期証券を売買する市場を国庫短期証券市場(TDB市場)という。
銀行が利用者に対して発行する預金には当座預金や普通預金や定期預金といった種類がある。当座預金には利子が付かず[8]、普通預金には少なめの利子が付き、定期預金には多めの利子が付く。また、当座預金と普通預金は預金者が現金引き出しを要求した日が銀行の支払期日になる性質のものであり、一覧払い預金とか要求払い預金と呼ばれる。一方で定期預金を持つ預金者は現金の引き出しを満期日まで我慢しなければならない。
定期預金のうち、譲渡可能になっていて利用者が市場で売却できるものをCD(譲渡性預金)という。銀行にとって一種の債券であり、手軽な資金調達手段である。
定期預金というものはさまざまな期間のものがある。1ヶ月、6ヶ月、1年といった1年以内の短期のものがあるし、3年とか5年とか10年といった1年を超える長期のものもある。CD(譲渡性預金)にも様々な期間のものがあり、1日のものから10年のものまでいろんなものが売られている[9]。短期金融市場のCD市場に売られるのは1年以下の期間のCDで、長期金融市場のCD市場に売られるのは1年を超す期間のCDである。
CDを保有する者は、銀行に対する債権(CD)をCD市場で売って現金を入手することができる。
事業法人(企業)や金融機関が資金調達のために発行して市場に売却する短期社債をCP(コマーシャルペーパー)という。発行日から償還日までの期間が1年未満のものを指す。30日未満のものが多い。最長で364日のものがある[10]。
事業法人(企業)や金融機関が資金調達のために発行して市場に売却するものというと社債が挙げられるが、社債は発行日から償還日までの期間が1年以上の物を指す言葉である。
CPは無担保で発行されるので、信用が高い優良企業が発行したものでないと誰も買わない。逆に言うと、CPを発行してCP市場で販売できるような企業は、かなりの優良企業だということになる。
現先市場とは、債券・CD・CPを現先取引する市場のことである。日本の現先市場というと債券を現先取引することが多いので、債券現先市場とも呼ばれる。
現先取引には売り現先と買い現先がある。
売り現先は、一定期間後に債券を買い戻す約束をしながら債券を売ってその代償としてお金を受け取る取引であり、債券を担保としてお金を借り入れることと実質的に同じ行動である。
買い現先は、一定期間後に債券を売り戻す約束をしながら債券を買ってその代償としてお金を渡す取引であり、債券を担保としてお金を貸し出すことと実質的に同じ行動である。
日本政府は1975年から毎年のように特例国債を発行して金融機関に売却している。1985年まで、国債を買った金融機関は自由に国債を売ることができなかったので[11]、国債を持っている金融機関は国債の売り現先を行って資金を調達していた。
レポ市場とは、債券をレポ取引する市場であり、債券レポ市場とも呼ばれる。日本での正式名称は現金担保付債券貸借取引市場である。
レポ取引とは、現金を担保にして債券を貸し借りするというもので、債券を担保にして現金を貸し借りする現先取引と非常に良く似た取引である。
レポ取引と現先取引は、債券と現金のどちらに注目しているかの違いだけで実質は同じ取引である[12]。
債券の貸し手は債券を貸し出して担保金を受け入れる。一定期間が過ぎたら債券を返却されるので担保金を返す。つまり債券を担保にしてお金を借りること(売り現先)と同じことをしている。
債券の借り手は債券を借りる代わりに担保金を差し出す。一定期間が過ぎたら債券を返却するので担保金を受け取る。つまり債券を担保にしてお金を貸すこと(買い現先)と同じことをしている。
国庫短期証券市場(TDB市場)とCD市場とCP市場は「○×に対する債権」を売買する市場である。国庫短期証券(TDB)は政府に対する債権で、CDは銀行に対する債権で、CPは企業・金融機関に対する債権である。
現先市場とレポ市場は「○×に対する債権」を仲介として参加者Aと参加者Bの間でお金を貸し借りする市場である。
| オープン市場 | 国庫短期証券市場 | 政府に対する債権を売買する |
| CD市場 | 銀行に対する債権を売買する | |
| CP市場 | 企業・金融機関に対する債権を売買する | |
| 現先市場 | 「○×に対する債権」を担保にお金を貸し借りする | |
| レポ市場 | お金を担保にして「○×に対する債権」を貸し借りする |
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の影響を受けている。貸借対照表では1年以下の債権を流動資産と扱って「好ましい資産」と評価し、1年を超える債権を固定資産と扱って「あまり好ましくない資産」と評価し、1年以下の負債を流動負債と扱って「より厳しい負債」と評価し、1年を超える負債を固定負債と扱って「より優しい負債」と評価するのだが、こうした基準を一年基準という。
)、1日以上10年以下の期間で販売している金融機関もある(中国労働金庫
)。
は「1年以下つまり365日以下が流動資産や流動負債、1年を超えて366日以上が固定資産や固定負債」というものである。ところがCPと社債の区分においては「1年未満で364日以下がCP、1年以上で365日以上が社債」という基準になっており、貸借対照表の一年基準とは微妙に異なっている。ちなみにCPを定義するのは社債、株式等の振替に関する法律
の第66条であり、その法律の中では「短期社債」と呼ばれている。。掲示板
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