音声多重放送とは、テレビやラジオの1つのチャンネルで複数の音声を同時に放送することである。
例えば二か国語放送や解説放送(主音声・副音声)、ステレオ放送(左・右)、5.1chサラウンド放送(左後ろ・左・前・右・右後ろ・低音用サブウーファー)などが挙げられる。
「音声多重放送」という単語が一般人の耳に触れる機会があったのは、放送開始・終了時のコールサイン読み上げくらいであろう。アナログテレビ放送でのコールサインが「JOxx-TV」だったのに対し、「JOxx-TAM」と読み上げられるのが音声多重放送である。
と読み上げられている。この右から聞こえる音声が「音声多重放送」の正体で、通常の映像+音声チャンネルに加えて音声チャンネルが1つ加えられていることを意味している。(TAM側のコールサインはのちに読み上げなくてもよいこととなった。ニコ動などで過去の放送開始・終了動画を見て「アナログのステレオ放送なのにTAMの読み上げがない!」などとパニックにならないようにご注意を。)
ところで、今でこそテレビでステレオ放送が聴けるのは当たり前となっているが、開始当時は非対応のテレビがほとんどであった。そこで、「二重音声」(二か国語放送・解説放送)と「ステレオ放送」の2種類を区別し、以下のように放送波をやりくりすることになった。
二重音声の場合 | 放送される音声 | 非対応受信機の場合 | 対応受信機の場合 |
---|---|---|---|
主音声 | 主音声 | こちらのみ聴ける | 切り替えることにより 両方の音声を聴ける |
副音声(音声多重放送) | 副音声 | 聴くことができない | |
ステレオ放送の場合 | 放送される音声 | 非対応受信機の場合 | 対応受信機の場合 |
主音声 | 左+右 | モノラル音声として聴こえる | 2つの放送波の差分が 左と右に振り分けられて ステレオ音声が聴ける |
副音声(音声多重放送) | 左-右 | 聴けないが問題ない |
こうして、家にあるテレビが音声多重放送に対応していなくても普通の音声を聴くことができるし、対応しているテレビを買えば二重音声やステレオ放送を楽しむことができるようになった。ちなみにモノラル・二重音声・ステレオの区別は、音声多重放送側に識別信号を乗せることで制御される。
余談だが、モノクロ放送のカラー化の際にも同様に「モノクロテレビでは今まで通りモノクロで見られるし、カラーテレビではカラーで見られる」ことを目的に、カラーテレビ内部で「モノクロ映像+モノクロと青との差+モノクロと赤との差」の放送波から光の三原色(赤・緑・青)を復元する仕組みが作られた。1色分の放送波に3色分の情報を流すために無理のある規格が誕生し、そのしわ寄せとしてちょうど30fpsだったフレームレートが29.97fpsに変更されてしまった。当時はテレビのつまみをひねって映像を調整するのが前提だったため、受信機側で調整できる許容範囲内としてゴーサインが出されたものの、のちのデジタル時代の到来によりこの微妙な数字が数々の動画編集者の頭を悩ませることになってしまったことは当時の人間には知る由もない。
BS・CSデジタル放送の開始や地デジ化により、ややこしいことをしなくても簡単にたくさんの音声を重ねることができるようになった。アナログ放送では無理だった5.1chサラウンド放送や、主音声(音声1)・副音声(音声2)の両方でステレオ放送を行うことも可能になった。規格上は音声8まで対応しているが、音声3以降が使われることはめったにない(未だに実用されたことがない可能性もある)。
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最終更新:2024/04/25(木) 10:00
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