SCP-4955 Nullとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『A Knife Only Seen Through Gaslight (ガス燈を通してのみ見えるナイフ) 』。
このオブジェクトは、報告書そのものは短く、かつ何故か本来補遺を入れるような場所ではないところにログが差し挟まれている。また、先述のような形でアイテム番号はなぜか現在解除されており、それゆえ以降の記述はすべて『SCP-4955 KNIFE』と書き下されている。
| SCP-4955 | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| OC | |
| アイテム タイプ |
|
| 収容場所 | |
| 著者 | DolphinSlugchugger |
| 作成日 | 2019年1月6日 |
| タグ | スモールズ研究員 メタ 強制力 道具 |
| リンク | SCP-4955
|
| SCPテンプレート | |
SCP-4955……ではなくKNIFEはメーカー及びモデルが不明なナイフである。この時点で気になる点として、アイテム番号に打ち消し線が引かれ、先述の通り『SCP-4955 KNIFE』と書かれていること。また、アイテムクラスとアイテムタイプも特殊である。アイテムクラスは本項におけるオブジェクトクラスであるが、SafeクラスからMendaxクラス、そしてDecommissionedクラスに指定が直されている。Mendaxクラスについて解説はないが、Mendaxはラテン語で「嘘つき」を表す単語である。Decommissionedクラスは御存知の方もいるかもしれないが、一応解説しておくと「財団が破壊・無力化した」オブジェクトとなる。
アイテムタイプも示唆的だ。「認識」に関係してなにかを起こすオブジェクトであり、かつ反ミーム特性――そのオブジェクトについての一部または全部の情報を自ら隠蔽してしまう。これがNullに書き換えられているのは、Decommissionedクラス相当だからなのだろうか?
とりあえず、Decommissionedである以上SCP-4955ではなくなっているらしいが、通常ならDecommissionedオブジェクトは「SCP-4955-D」のようにナンバリングされ直すはずである。なのに、なぜこのナイフはKNIFEと表記されているのだろうか。
ここで早速ログが3つほど差し挟まれている。おそらくはこのKNIFEを研究している者が書いたのだろう。彼は、このナイフで何をすればいいかを思案していた。このナイフは材質にも切れ味にも異常はなかった。熱力学的異常もなかった。現実強度に何らかの影響を与えることもなかった。つまり、文字通りなんでもない、ただのナイフである。
しかし、このナイフがどうして実験対象になっているのか、それについてはまったくわからなかった。誰もこのナイフのことについて知らなかった。彼は、「ナイフの異常性は、ただ忘れ去られやすい」ということだと結論付けた。彼はこんなどうでもいい特性のために時間を無駄に食ったと落胆しながらも、上司のもとに報告書を持っていく。そして、自分がSCP-4955の担当になっていること、それがP-0055なるエリアにあったことを伝えた。すると彼女は彼を長い間見つめ、そして「報告書を待っている」と返事をした。
すでに提出済みのそれを。
彼は上司に、「追加で調べないといけないことが出来た」と適当に言い繕ってその場を退出した。
彼はスモールズ研究員という同僚を5ドルで実験に付き合わせた。Dクラスがいないためである。そして、ナイフが見えるか質問したが「何が見えるんだって?」と返された。ナイフを持った手を上げて、手を上げているのが見えるか聞いても呆れた返事を返されるだけだった。試しにナイフの平らな側面で殴ったが、彼はよろめいたにも関わらずされたことに気付いていないのだった。最後にナイフでスモールズ研究員の頬を少し切りつけてなお、何をしたか気付いていなかった。
ここでふたたび報告書に戻る。KNIFEの異常性はハリス次席研究員以外のすべての被験者がKNIFEの存在を言語の上で、そして多くの場合は完全に認識できなくなるというものであった。しかし、このKNIFEの持つスロット、SCP-4955が別のオブジェクトに割り当てられてしまったため、SCP-4955と記載があった場所はすべてKNIFEに置き換えられたのだという。認識できない異常を持つ以上、確かにSCP-4955のスロットが見かけ上空いているのだからしかたない。
ログが2つ、まだSCP-4955のスロットであったタイミングで書かれている。実験をしたその日、スモールズ研究員とハリス次席研究員は夕食をいっしょに取った。スモールズ研究員の頬は乾いていたがまだ血まみれで、周囲の他の人達はどきっとしていた。しかし、ハリス次席研究員の姿を認めると、その人達は興味を示さなくなった。また、スモールズ研究員の飲み物にこっそりクラスW記憶補強剤を入れてからナイフを見せても反応しなかった。
ハリス次席研究員は反ミーム性を確認する装置にナイフを入れたが、そのような特性は得られなかった。自分の頬をナイフで切りつけて、それですれ違う人にどうしたと聞かれるたびに「4955で切りつけた」と答えた。答えを聞くたびにその人達はその状況を自然なものだと受け入れていった。反ミームであろうことは確かだ。認識しているのなら、スモールズ研究員はいまごろハリス次席研究員をボコボコに殴り倒しているはずだ。――でも、反ミームである確証が得られない。
KNIFEにとって、記憶補強剤は何の役にも立たないことがわかった。それだけでなく、KNIFEに引き起こされた行動・結果にまでこの強力な反ミームは有効であることがわかった。ただし、この行動・結果をKNIFEと紐づけているハリス次席研究員を除いては。
上司に4955の報告書を要求されたハリス次席研究員は、怒りを浮かべた上司の前でKNIFEを取り出してその仕事の紙を切り裂いた。そして、「4955とは何のことでしょうか」とハリス次席研究員が尋ねると、上司はクスクス嗤いだして、
「本当に4955とは何でしょうね?私たちは4955を保有していませんところであなたは手が空いているようですね?3309で人手が足りないそうですよ。」
SCP-4955 - SCP財団
より,2022/12/06閲覧
ハリス次席研究員は自分の指を少し切って血の飛沫を上司の顔に飛ばしたが、相手はただ嗤っていた。まばたきすらしない。
ハリス次席研究員はネズミの喉を食堂の真ん中でKNIFEで切って落とす。皆はくすくす笑う。ネズミは数日経ってもそこにいた。ふまれて腐っているのに、そこにある。掃除している間も後ろで誰かが嗤っている。背を向けるハリス次席研究員を嗤い、KNIFEを見せるととぼけたような顔をする。
ある日、スモールズ研究員が育てていた植物が何者かのいたずらで切り裂かれていた。それはそれは大騒ぎだったが、しかしハリス次席研究員が「自分がやった」というと、誰も騒がなくなった。彼はスモールズ研究員の部屋にネズミを置いていったが何も言われなかった。やっていなくても、KNIFEでやったんだと思っただけでみな気にならなくなるようだ。
そしてハリス次席研究員は、やがて自分が嗤われているのか、気にされているのかさえわからなくなった。でもどうでもいい。彼はKNIFEでスモールズ研究員を刺すと、蹲って倒れ込む彼のもとにKNIFEを蹴り入れた。
このKNIFEは見ての通り反ミームオブジェクト、なのだが、通常の反ミームよりも強力かつ特異な点がある。これは、「KNIFEがある」という事実をハリス次席研究員以外が聞いても、ただくすくす嗤うだけという点である。
本報告書の筆者であるDolphinSlugchugger氏は当初ガス燈にしようとしていたらしいのだが、ガス燈ではドラマが産まれないためナイフに変更したと語っている。逆に言えば、なぜガス燈にしようとしたのか、項目名にガス燈が残っているのか。
アメリカには『ガス燈』という舞台劇、及びそのストーリーを踏襲した映画作品がある。この作品では、妻が正気を喪ったと当人及び知人らに信じ込ませようと家の中のものを動かしたり隠したりして、それを妻が指摘するたびに「勘違いだ」と言い張るというものである。そのなかで、象徴的に描かれるのが探しものをするときに夫が使う、明らかに暗いガス燈である。これは後に児童性虐待を扱う書籍の中で、「些細な嫌がらせを続けたり、故意に誤った情報を提供することで相手が自分の認識を疑うように仕向ける」という意味合いで「ガスライティング」という言葉として引用された。
そしてこれはやがて統合失調症患者が陥りやすい被害妄想として取り上げられることになる。統合失調症患者の方は往々にして、自分が病気なのではなく、周囲が嫌がらせを続けることで先述の映画のように自分が異常であると信じ込ませようとしていると捉えるのである (俗に「集団ストーカー被害」と彼らは呼称している) 。SCP-4955報告書のログにおけるハリス次席研究員の精神状態はまさにこれに近似している。
とはいえ、別にナイフが空想のものというわけではない。SCP-4955は、所持者に悪事をさせようという精神影響を与えるナイフである。そして、それ以外の人物には、SCP-4955の存在そのものを冗談であるかのように認識させるのだ。だから、反ミームとはいったが、ナイフそのものは見えているはずだし、認識もしているはずなのだ。ただ、それをハリス次席研究員が言っている妄想であるかのように取り扱うだけで。そして、これはよくないことだが――統合失調症患者の方はしばしばその行動が滑稽だとして笑いものにされ、時としておちょくられてしまうことさえある。ここではリンクを提示しないが、ニコニコ動画にもそういう方をおちょくるような動画が上がっている。まさにSCP-4955を取り巻く周囲がハリス次席研究員をどう見ているかとこれまた近似している。
そしてハリス次席研究員サイドも被害妄想に苛まされているので、些細なことさえ嫌がらせであると認識し周囲を敵と認定しはじめる。そうしているうちに、やがてハリス次席研究員はスモールズ研究員を刺し殺してしまったのだ。
なお、この報告書は他の人達からはMendax、すなわち「冗談」であるとされ、そしてDecommissioned、つまり「消えてなくなった」。SCP-4955の所有者はスモールズ研究員となり、スモールズ研究員自身が死んだ以上、SCP-4955の実在を認識できる者はいないのだから。
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最終更新:2025/12/19(金) 05:00
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