フリーセルおじさんとは (フリーセルオジサンとは) [生放送記事]

概要

フリーセルおじさん（ふりーせるおじさん）は、自宅近くの小さな飲み屋のママと浮気をしたことが生涯最大の冒険であり、大失敗でもあった。人懐っこく、「人間らしい」と評価され、馴染んだ仲間と親しくすることのできる、かわいいおじさんであるが、生来の面倒くさがりから日々のマイナーアップデートだけでなく、数年の一度の大規模なメジャーバージョンアップをさぼっており、未だに時代遅れの3.1のＯＳのままであり、そのことに相当の不便や深刻な困難を抱えることがあるものの、なぜか困難を根本的に解決することをせず、ブラウザの上部に出てくる暗号のようなメッセージ（セキュリティのためにブロックしました、など）が出てこなくなる方法を探すでもなく（毎日×ボタンで消す）「ううむ、何が何やらようわからんなぁ～」とぼやきながら、今日も不器用に人生を運転している。ようは、真面目でひたむきであった、ということだが、それ以上のことを何もしない（自ら人生の貴族を名乗るでもなく、支配者に屈するでもなく、本気で反抗するでもない、元より反抗したいという気持ちすらなく、ただ「揉め事があれば、巻き込まれたくない」としか思わない）その意味では、一番怠惰な態度を取るタイプであり、こういう人こそ発見され、本来誰よりも尻を叩かれる必要があるのではないかと思わせられる、そのような人物のことを指す。

象徴的な行動として、昼休みや仕事中にフリーセルをやっている。

フリーセルおじさんとフリーセル

フリーセルおじさんは決して、フリーセルが特段好きというわけではないはずである。（フリーセルがつまらないということではない）（フリーセルは面白いと思う）ただ、それほど毎日昼休みに夢中で（食事をとる時間以外ずっと）フロアに響き渡る音でカチカチとクリックをしていると（この人、ほかに何かしたいことはないのだろうか）（新聞を読むとか、他の人と話すとか、パソコンを触るのでも、いくらでも面白いことは他にあるのではないか）という気がしてくる。

ある人はフリーセルの全ての問題を解こうとして１番から順番に解き始め、ある所で超難問に行き当り、何日も立ち止まりながらも乗り超え、さらにスマートな解き方を目指して同好者のサイトを巡り、そこで難問と言われている問題をあっさりと解き、さらに高みを目指して次の問題に着手する。（そういう人もいる）こういう話であれば「ああ、フリーセルにはまっているんだな」と思わせられる。

フリーセルおじさんはそういう嵌り方をしないのである。おそらく（間違いない）「息抜き」という紋切型の言葉が頭の中を駆け巡った状態で、特に要領のいい解き方をするでもなく、毎日愚直に数字の小さな番号を掘り起こしているのであり、ただそれだけをしている。今の解き方はどうだったか、と反省することもない。そして、ある問題が解けなかったとしても気にせず、その番号を覚えておくこともなく、次の日にはただ、ランダムに出てきた問題を解いている。

恐怖と不安

労力を費やさず容易に操作できる場所に「暇つぶしのゲーム」があり、ゲームの内容も容易に理解できたため、ただそれを触っており、ただそれだけのことを、何年でも継続する。「繰り返す」意識も「続けている」意識もない。

ある人は、４歳になるまで家の前に立てられた柵から外に出てはいけないと親に厳しく躾けられており、その柵を出ようとしただけで叱られていた。フリーセルおじさんはある場所に定住するとすぐ近くに「危険の柵」を作り、その外には一歩も出ないように自らに銘じている。おそらく、フリーセルの外は柵であり、仕事のためにパワーポイントを操作することが猛獣を駆る大仕事になっているはずである。

「なぜ未知と戦わないのか」

彼らは武器を手に取り戦うことを、したくないのか、したいのか、わからない。よく見ていると、たまに武器を取り、庭で素振りをしていることがある。そして、数十回、振るった後で「今日の訓練はこれくらいにしておこう」と早々に戦いをやめてしまう。魔王を倒しに旅に出た勇者が、城の回りでカラスをやっつけたら、橋を渡り最初の鍵を見つける冒険をしなければいけないが、彼らはスライムを倒すことが魔王を倒したことと同じだと考える。

彼らの周囲には魔王はいないのか、と言えば、実際には倒されるべき悪魔や魔人が沢山おり、本来であれば彼らと切るか切られるかの戦いを日々行っていなければならないが、彼らはそれらを魔王とも敵とも見なさず、何か別のアイテムがなければ姿をとらえることもできないもの、という風な観察をしている。（ちょっとさみしい）

橋を渡らない勇者

本当に一度も橋を渡らなかった勇者であれば（海の上のピアニスト）のような気もする。おそらく、そういう人物はフリーセルおじさんとは別次元であり、限定された世界にいつまでもいることは、興味深いことである。問題は、橋を渡るでもなく、その世界に濃密な何かを見出すわけでもない、ただ「面倒くさいからそこにいる」だけであることだ。