Apple Siliconとは、Appleが独自に設計したSoC(system-on-chip)またはSiP(system-in-package)プロセッサーの総称。Apple自身は本記事名と同様Apple Siliconと表記することもあるが、Apple siliconの表記も併用している(英語版Wikipediaの記事名はこちらになっている)。日本での公式表記は「Appleシリコン」であり、多くの日本語メディアもこれに倣っているので、記事内ではこちらの表記を採用する。
概要
ArmアーキテクチャのCPUコア[1]に独自開発のGPUやSecure Enclaveと呼ばれるセキュリティコプロセッサなどの周辺回路を組み合わせたもの。iPhoneやiPadやApple Watchといったスマートデバイスをはじめ、Home PodやApple TVのようなアプライアンス(専用機器)、Studio DisplayやAirPodsといったペリフェラル(周辺機器)に至るまで、多くのApple製品で使用されている。
2020年6月22日(現地時間)、Appleはパソコン・ワークステーションのMacintoshシリーズでも従来使ってきたIntel社製品(x64系)からApple シリコンに置き換えることを発表した[2][3]。同年11月にM1チップを搭載したMacBook Airを発売。その高性能と低消費電力の両立が驚きをもって迎えられた。2023年6月にはM2 MaxおよびM2 Ultraを搭載したMac Proを発表し、Intelからの移行が完了した。
特徴
AシリーズやMシリーズは、大型の高性能コアと高効率コア(いずれも64ビットARM)を組み合わせたヘテロジニアスマルチコアプロセッサである。高性能コアと高効率コアはスイッチ式ではなく、全コアを同時稼働させることができる。Sシリーズは高効率コアのみを搭載している。GPUを内蔵した統合型メモリアーキテクチャであり、メインメモリとVRAMの区別が存在しない。
Aシリーズ・Mシリーズ・Sシリーズは、いずれもハードウェア暗号化およびSSDストレージへのアクセスを担うSecure Enclaveと、機械学習関連の処理に特化したニューラルエンジンを搭載している。また、M1を除くMシリーズはH.264およびHEVC/H.265、ProResなどのエンコード・デコードなどを担うメディアエンジンを搭載している。
PC向けチップとしては、性能の割に消費電力・発熱がとても少ない、上位モデルはハイエンドのビデオカードにも匹敵する圧倒的なメモリ帯域幅[4]を誇るといった長所を持つ一方で、メモリの増設が不可能[5](Apple M2 Ultraでもメモリ容量は最大192GBにとどまる。Intel時代のMac Proは最大 1.5TBのメモリを搭載できた)といった欠点を持つ。
x64系からArm系への移行によりMacでWindowsが使えなくなることが危惧されたが、Parallels DesktopがApple Silicon MacでのWindows11をサポート。マイクロソフトもArm版Windows11でApple Siliconを正式サポートした。
Appleシリコンの一覧
- PhoneやiPadをはじめ、Home Pod、Studio Display、一部のApple TVなどのメインチップとして使用されているAシリーズ
- Apple Watchで使用されているSシリーズ
- Intel Macのセキュリティ関連やTouch Barの制御などを担うチップとして載せられていたTシリーズ
- AirPodsやBeats、Home Podで使われているWシリーズおよびHシリーズ
- iPhone 11以降のiPhoneシリーズ(SEシリーズは除く)やSeries 6以降のApple WatchやAirTagの位置情報制御として使われているU1チップ
- Apple Silicon Macや一部のiPad Proのメインチップとして使われているMシリーズ
現行のAppleシリコン
名称 |
採用機種 | コア | メモリ |
---|---|---|---|
A13 | iPhone 11 iPhone 11 Pro iPhone 11 Pro Max iPhone SE (第2世代) iPad (第9世代) Apple Studio Display |
高性能コアLightning x2, 高効率コアThunder x4,8コアニューラルエンジン、4コアGPU | LPDDR4X |
A14 | iPad Air (第4世代) iPhone 12 iPhone 12 mini iPhone 12 Pro iPhone 12 Pro Max iPad (第10世代) |
高性能コアFirestorm x2, 高効率コアIcestorm x4,16コアニューラルエンジン、4コアGPU | LPDDR4X |
A15 | iPhone 13 iPhone 13 mini iPhone 13 Pro iPhone 13 Pro Max iPad mini (第6世代) iPhone SE (第3世代) iPhone 14 iPhone 14 Plus Apple TV 4K (第3世代) |
高性能コアAvalanche x2, 高効率コアBlizzard x4,16コアニューラルエンジン、4または5コアGPU | LPDDR4X |
A16 | iPhone14Pro iPhone14Pro Max |
高性能コアEverest x2, 高効率コアSawtooth x4, 16コアニューラルエンジン、5コアGPU | LPDDR5 |
A17 Pro | iPhone 15 Pro iPhone 15 Pro Max |
高性能コア x2, 高効率コア x4, 16コアニューラルエンジン, 6コアGPU(ハードウェアレイトレーシング機能搭載) | LPDDR5 |
名称 |
採用機種 | コア |
---|---|---|
S5 | Apple Watch Series 5 Apple Watch SE HomePod mini |
高効率コアTempest x2,ニューラルエンジン、GPU、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁力計 |
S6 | Apple Watch Series 6 | 高効率コアThunder x2,ニューラルエンジン、GPU、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁力計 |
S7 | Apple Watch Series 7 HomePod (第2世代) |
S6と同様 |
S8 | Apple Watch Series 8 Apple Watch Ultra Apple Watch SE (第2世代) |
S6、S7と同様 |
Hシリーズ、U1、Wシリーズ、および過去のAppleシリコンについてはWikipediaの記事にあるので気になった人はそちらで。
関連動画
関連コミュニティ・チャンネル
関連項目
脚注
- *ARM社からライセンスを受けAppleが独自に設計している。
- *Apple、MacにAppleシリコンを搭載することを発表 - Apple (日本)
- *Macが独自プロセッサ「Apple Silicon」に移行し、Intelと決別する理由 (1/3) - ITmedia PC USER
- *M2 Ultraで800GB/秒
- *外付けGPUの接続も不可能だが、これはGPUメーカーがドライバを開発するのに必要なOSの仕様をAppleは公開していないという理由が大きく、ハードウェアに由来する制約ではない。
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