ふるさと納税とは、個人が地方自治体に寄附を行うと、その金額に応じて個人住民税等が減額される制度である。ふるさと寄附金ともいう。なお、税金の法律において使われる用語である「寄附金」は、通常の「寄付金」より範囲が広く、義援金等も含まれる。
概要
個人住民税は原則としてその年の1月1日の住所がある地方自治体で課税される。これに対し、生まれ育った自治体のコストと税金のバランスや地方活性化等の観点から、生まれ育った地方自治体に対して個人住民税を納めることが出来ないかという意見があった。このような意見により生まれたのがふるさと納税制度である。個人住民税を各地自体に分割して納付すると事務手続きの煩雑化や課税権の問題が発生するため、地方自治体に寄附を行うとその金額に応じて個人住民税等が減額する形が採用された。
対象となるのは都道府県、市町村または特別区に対する寄附金である。相手先は「ふるさと」である必要はなく、個人的に応援したい自治体に対する寄附でも構わない。個人住民税等が減額される金額には限度があり、また、限度まで減額されたとしてもその額は寄附金の額より少なくなる。つまり、寄附金の全額が減額されることはないので注意が必要である。
自治体によってはふるさと納税をすると地域の特産品やねんどろいど桜ミク(鳥取県倉吉市2015年12月9日現在)をもらえる特典があり,ふるさと納税ポータルサイトで検索できる。
制度
個人が寄附金を支払ったときの税制上の優遇措置として、所得税については寄附金控除、政党等寄附金特別控除、特定震災特別寄附金を支出した場合の特別控除(東日本大震災に関するもので平成23年から平成25年まで)の3つがあり、個人住民税については寄附金税額控除(一般)、寄附金税額控除(地方公共団体に関する特例)の2つがある。このうち、ふるさと納税の適用対象になる寄附金については、所得税の寄附金控除と個人住民税の寄附金税額控除(一般)、寄附金税額控除(地方公共団体に関する特例)の3つが該当するため、これらを簡単にまとめると次のようになる。
所得税の寄附金控除 | 個人住民税の寄附金税額控除(一般) | 個人住民税の寄附金税額控除(地方公共団体の特例) | |
---|---|---|---|
寄附の対象 |
地方公共団体のみ |
||
控除方法 |
所得金額から「寄附金-2000円」を減額する |
所得割の金額から「(寄附金-2000円)×10%」を減額する (ただし、所得金額の30%が限度) |
所得割の金額から「(寄附金-2000円)×(90%-所得税の税率)」を減額する (ただし、所得割の額の20%が限度) |
手続き |
寄附金を支払った年の翌年の2月16日から3月15日までの間に寄附金の受領書を添付(提示でも可)した所得税の確定申告書を提出する |
左に同じ 所得税の寄附金控除の適用を受けない場合には、個人住民税の申告書の提出でも可 |
左に同じ 所得税の寄附金控除の適用を受けない場合には、個人住民税の申告書の提出でも可 |
なお、この表の所得金額とは所得税の計算の基本となる金額であり、おおまかに言えば所得金額に税率をかけたものが所得税の税額になる(「所得税」の記事も参考のこと)。よって所得税の寄附金控除により減額される所得税の金額は、「(寄附金-2000円)×所得税の税率」になる。
また、この表の所得割とは個人住民税の種類の一つである。個人住民税には所得税と同じように所得に対して課税する所得割の他に、原則として全員に一律課税される均等割、利子に課税される利子割等がある。
地方公共団体、つまり都道府県、市町村または特別区に対する寄附金についてはこの3つの全ての適用対象になるから、限度まで控除が受けられるとすると、減額される税額の合計は次のようになる。
(寄附金-2000円)×所得税の税率+(寄附金-2000円)×10%+(寄附金-2000円)×(90%-所得税の税率)=寄附金-2000円+3000円×所得税の税率
おおざっぱに言えば寄附金のうち、約2000円が本人負担になり、残りの金額だけ税金が減額されることになる。
なお、3つの制度とも控除できる金額には限度があるが、一般的に一番条件が厳しいのが地方公共団体の特例である。おおざっぱに言うと、個人住民税の所得割の金額の10%に2000円を足した金額が限度になる。
注意点
- 個人による寄附のみが対象となり、会社等の法人による寄附は対象外である(法人用の別制度がある)。
- 自治体によってはふるさと納税として地方公共団体に寄附した場合、その寄附に対する謝礼として特産品等の記念品を贈呈している場合もある。この記念品を得たことによる利益は所得税における一時所得に該当する。ただし、一時所得は年間50万円以上で無ければ税金はかからず、通常は記念品が50万円以上の価値であることは考えにくいため、ほかに一時所得がなければ課税対象として確定申告をする必要はない。
- ふるさと納税は所得税や住所地における個人住民税の額を減額する制度であるから、日本全体としてみれば地方の活性化にはつながらないという批判がある。
義援金に対する適用
ふるさと納税は地方公共団体への寄附金を対象とするものであるが、自然災害等の被災者のための義援金のうち、一定の要件を満たすものについてふるさと納税の対象になることを認めたケースがある。
宮崎県口蹄疫被害義援金
宮崎県の口蹄疫の被害を受けた農家等を支援するため、宮崎県都宮崎県共同募金会の共催で宮崎県口蹄疫被害義援金を募集した。この義援金について、総務省は次のような理由により地方公共団体に対する寄附金に該当するという見解を出したため、ふるさと納税が適用された。
- 宮崎県地域防災計画に置いて義援金の受領、配分に関することは県または市町村の管理すべき事務とされており、これに基づいて実施されていること
- 義援金は県が関係機関と組織する義援金配分委員会に拠出されること
- 宮崎県と宮崎県共同募金会の連名による受領証が発行されるため地方公共団体に対する寄附金であることが明らかにされていること
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に対する義援金
東日本大震災についてはさまざまな団体で義援金・支援金を募集しているが、次のものについては総務省が地方公共団体に関する寄附金に該当するという見解を出したため、ふるさと納税が適用される。
- 被災した地方公共団体に対して支払う義援金や支援金
- 日本政府が「東日本大震災義援金政府窓口」で受け付けた義援金
- 日本赤十字社の「東北関東大震災義援金」口座に対して支払った義援金
- 中央共同募金会の東日本大震災義援金
- 募金団体に対する義援金のうち、被災地方団体または義援金配分委員会に分配されることが募金要綱、募金趣意書、新聞記事等で明らかにされているもの(募金団体は税務署等に確認を受けることが必要)
通常、所得税の寄附金控除を受けられる金額は所得金額の40%が限度であるが、これらの義援金について震災特例法により所得金額の80%が限度となっている。
ふるさと納税の適用を受けるためには地方公共団体が発行する受領証が必要であるが、東日本大震災に関しては事務手続きの簡略のため次の3つのうちのどれか一つがあれば、それで受領証の代わりとすることができる。
- 募金団体が交付する受領証または預り証
- 郵便振替の半券や銀行振込の振込票の控と義援金を振りこんだ口座が義援金の受付専門口座であることを証明する資料(募金要綱、募金趣意書、新聞報道、募金団体のホームページの写し等)なお、日本赤十字社の東北関東大震災義援金と中央共同募金会の東日本大震災義援金については募金要綱等は不要である
- 新聞社等が募金団体の場合には、寄附をした者の住所、氏名、寄附金額が記載された新聞記事等
なお、この項目では自然災害等に関連して被災者に直接支払われるものを義援金、地方公共団体や公益団体等の被災者を支援する団体の活動資金に使われるものを支援金として区別し、寄附金といった場合は両者を含めたものをさしている。
地方公共団体以外についてはふるさと納税の対象となるのは義援金のみであり、支援金についてはふるさと納税の対象にはならないことに注意が必要である。たとえば、日本赤十字社の「活動資金」や中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」についてはふるさと納税の対象にはならない。これらについては所得税の寄附金控除の対象にはなる。なお、中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」については所得税の寄附金控除のかわりに特定震災指定寄附金を支出した場合の特別控除を適用することもできる。
関連動画
関連項目
外部LINK
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