ジョゼフ・ニーダム(1900~1995)とは、イギリスの生化学者・科学史家である。
概要
1900年にロンドンに生まれ、ケンブリッジ大学で医学を専攻したが、フレデリック・ホプキンズの影響で生化学の道に進んだ。その後はケンブリッジ大学に講師として勤め、生来の歴史への関心から生化学の歴史に関する大著をものにしている。生科学の分野である発生学の研究で自然科学の学士院会員になった。
歴史家としては、生化学における発生学の系譜を古代エジプトから19世紀初頭に至る前を叙述した1931年の『化学的発生学』のころから、百科全書的な知識と多くの言語を駆使して史料にあたる研究方法を確立している。
ニーダムの転機は中国から3人の留学生が1930年代に研究室にやってきたときである。彼らはニーダムに中国の科学技術の優れた伝統を伝え、ニーダムは独力で中国語を学び始めた。そしてこのテーマが本格的な研究の対象になったきっかけが日中戦争であり、イギリスは重慶の暫定的な中国政府の首都に文化使節を送ることを計画し、ニーダムはこれに選ばれ調査を行ったのである。
そしてついに1954年に『中国の科学と文明』の第1巻が刊行されることとなった。ニーダムはそれまでヨーロッパ世界の優れた発明とされてきたものの、前近代の中国からの伝播を描く一方で、官僚的封建制のために中国に近代科学が生まれなかったという議論にまで踏み込んだのである。この著作によってニーダムは人文科学でも学士員となり、朝鮮戦争などでの西側の細菌使用について主張したため共産シンパとの烙印が推されたことも、事実関係が明らかになるにつれ薄れていった。
ニーダムはこの『中国の科学と文明』の刊行途中で亡くなってしまうが、彼の仕事は今もなお引き継がれて続けられているのである。
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