概要
セル画はセルと呼ばれる透明シート[1]にキャラクター等の絵を描いたもの。背景の上にセル画を重ね、セル画の差し替えにより動きを付けていくのがセルアニメの制作手法の基本である。
透明な素材を用いるため、演技するキャラクターと背景を別に描き、コマごとにキャラクターのみ動かして背景を流用することができる。加えて、キャラクター自体も動く部分(目や口、髪の毛など)を動かない部分と分けて作画することが可能となる。このため、セルアニメは平面素材を用いたアニメーションの中でも省力性に優れ分業に適するという利点があり、日本においては商業アニメーションの制作手法として主流になった。
国内のアニメスタジオでは、1997年ころからセル画を用いる工程のデジタル化(後述)が進んでいた。テレビ作品としては最後のセルアニメとして制作されていた『サザエさん』が2013年10月にデジタル制作に完全移行し、セルアニメはテレビから姿を消した。
制作工程
セルアニメの制作工程のうち、セル画に関係する部分を略述する。
トレス
動画用紙に描かれた「動画」の線をセルに写し取る工程。トレスする線は鉛筆で描かれた主線と、色鉛筆で塗り分けを示した色トレス線の2種。
はじめは手描きによるハンドトレスを行っていたが、熱で鉛筆の描線に含まれる黒鉛を焼き付けるトレスマシンの導入により、主線に関しては転写の自動化が実現した。
彩色
アニメカラーと呼ばれる塗料をセルに塗る。この工程と、エアブラシ等による特殊効果をもってセル画が完成する。塗料はセルの裏面に塗られるため、表からは動画の線が塗りつぶされずに残る。アニメカラーの色数は限られており、既成品にない色が必要な場合はスタジオでの混合やメーカーへの特注が行われた。
撮影
撮影台に背景やセルを重ね、カメラを用いて1コマずつ撮影する。背景、セル、カメラの移動により、実写映画で用いられるような種々のカメラワークを実現する。また、多重露光等の光学的手法により、発光、透過などの視覚効果を加える。
下記の通りデジタル化以降も、これに倣い合成作業を撮影作業と呼ぶことも多い。
撮影台の仕組み、撮影の方法については以下のWEBサイトにて図付きで解説されている。
- セルアニメの撮影技法 - アニメの道具箱 dA-tools
デジタル化
前述のとおり、現在のテレビアニメや劇場アニメはデジタル制作されている。
デジタルアニメの制作では、動画をスキャンしてデジタルデータにする作業に始まり、彩色、撮影から完成にいたるまでの工程をコンピュータ上で行う。デジタル化に伴い、セル画にまつわる様々な作業が不要になり、工程全体の大幅な省力化が実現した。
加えて、3DCGによるキャラクターや背景、デジタルペイントによる背景も活用されるようになった。作画工程は今なお紙と鉛筆による作業が主流だが、液晶ペンタブレットを用いたデジタル作画も取り入れられつつある。
デジタルアニメ制作にセル画そのものは用いられないものの、「セル」という用語はデジタルデータとしての素材を指す語として用いられている。
関連動画
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関連項目
脚注
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