概要
素朴で誠実な化学教師ウォルター・ホワイトは突如余命二年の肺がんと告げられて、残された時間の中で家族のためにカネを作ろうと考える。そんな折にDEA(麻薬取り締まり局)に勤める義弟ハンク・シュレイダーの話を聞き、クリスタル・メスと呼ばれる覚醒剤の取引が大金を生み出すことを知る。
ウォルターは自身の化学に対する深い見識を活かし、かつての教え子ジェシー・ピンクマンと協力して覚醒剤を精製・販売することで一攫千金を夢見る。だが悪党たちの蔓延る世界の中で二人は翻弄され、徐々にブレイキング・バッド(道を踏み外す)していく。
登場人物
- ウォルター・ホワイト 本作の主人公。物語は彼が五十歳の誕生日を迎えたところから始まる。優秀な化学教師であり、大学生の時には自身らの研究がノーベル賞を受賞するなどの経歴を持つ。悪の世界に踏み込んでからは引っ切りなしに訪れるピンチを、その化学知識で乗り越えていく。性格に関しては基本的に家族思いの誠実な人柄で温和。そして非常にプライドが高い。
- ジェシー・ピンクマン 本作の主人公②。小規模だがドラッグディーラーであり、自身もかなりのジャンキー。劇中でウォルターと協力し合って数々の修羅場を乗り越えていく。時間を経るに連れてどんどん変容していくウォルターに対比して、全編を通して子供思いの優しい人物として描かれる。反面、少々の違法は気にとめない。悪になりきれないチンピラ。
- スカイラー・ホワイト ウォルターの妻。ウォルターの原動力の一つであり、同時にウォルターを悩ませる障害の一つでもある。物語が始まってすでに身ごもっており、そのこともまたウォルターがメスを作ろうと腐心する理由になっている。彼女の特徴は何と言っても忌憚ないズケズケした物言いと態度であり、これが視聴者の不評を買ってスカイラーを演じるアンナ・ガンは殺害予告を受けるまでに至った。
- ハンク・シュレイダー ウォルターの義弟。スカイラーの妹マリーの夫。DEA(麻薬取り締まり局)に勤めており、丸っとした外見をしている。明るい人間で下品なジョークを飛ばしたり、場を和ますムードメーカー的な存在。反面、仕事に真面目でありその有能さで周囲から一目置かれている。ウォルターたちとは家族ぐるみでの交流があるが、その時もハンクが中心にいる。
- ウォルター・ホワイト・ジュニア ウォルターの息子。高校生でウォルターの勤める学校に通学する。先天性の脳性麻痺であり、歩くために杖が手放せない。ハンクをもう一人の父のように尊敬しており、DEAでの過激な事件解決過程を嬉々として訊ねる。
ブレイキング・バッドの魅力
本作のシーズン5は批評サイトで99/100点とされ「過去最高の評価を得たTVシリーズ」というギネスを獲得するほどの作品だが、果たしてどこに「その魅力があるのか? 何が面白いのか?」を主に賞賛されている部分を抜き出し以下に列挙する。
- 登場人物の変化 タイトルにもあるとおり、この物語は純真だったウォルターが道を踏み外して悪党へと変化していく過程を描いている。この流れをとても丁寧に描いていることで悪への変性に説得力があり、視聴者は徐々にウォルターという人間の本質や本性を知っていく。
- 俳優の名演 実際に殺害予告を受けたスカイラー役のアンナもそうだが、各人真に迫った名演をしており、ウォルター役のブライアン・クランストンやジェシー役のアーロン・ポールは複数回エミー賞を受賞している。またサブキャラの俳優たちも個性的で、とても印象に残る演技をしてくれている。
- 息もつかせぬサスペンス この作品はいわばサスペンスで紡がれているようなものであり、ほとんどのシーンでウォルターたちは「何か致命的なことがバレる・死の危険が迫る」などの危機的な状況に置かれている。それをとっさの機転や持ち前の化学知識で脱するカタルシスがこの作品の大きな魅力の一つになっていることは間違いない。
- 悲劇とドラマ 段々と道を踏み外していき段々黒に染まっていくウォルターだが、その過程で多くの悲劇が起こりそれを罰するかのような出来事も起こる。そして登場人物たちはその悲劇に否応なく向き合わされ、それをどう乗り越え克服していくかという点に強いドラマがある。これが視聴者に大きな見応えを与えている。
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