不倶戴天とは、四字熟語の一つである。
概要
― 『礼記』曲礼上より
ものすごく嫌いな相手に対して使う四字熟語であり、嫌悪系の表現としては最上級に近い訣別や憎悪がよみとれる言葉である。意味は読み下すと「倶ニ天ヲ戴カズ(不)」、つまり同じ天のもとに生かしてはおけないというものであり、それほどの怨嗟や怨恨があることの裏返しになる。大体の場合は「―の敵」が続く。
出典は四書五経の一つ『礼記』の曲礼・上(礼記の第一編にあたり、五礼の総論的な立ち位置)で、引用の後には「兄弟之讎、不反兵、交遊之讎、不同國」と続き、兄弟の仇は兵を用いずにそのまま殺せ、交遊、即ち友人の仇は同じ国に住むなという風に続いている。
父の仇については同じ天を戴いてはならないので探し出して必ず殺せという意味合い(宇宙に行けば許されるんだろうか)なので、自分にとっての立ち位置で仇の討ち方が変わると言った意味合いである。儒教の経典だけあって、実によくそれが現れてる一節といえよう。
これだけみると『礼記』とは過激な書物だったんだなあという感想を持つかもしれないが、あくまで仇という自分に敵対する、好ましからざる人物に対しての処し方なので致し方ないところではある。礼記は春秋戦国時代の中国において漠然としてあった法律や道徳の詰め合わせのような側面があるので、当時の習俗として記憶しておきたいところだ。
また、文豪の芥川龍之介は『続芭蕉雑記』という松尾芭蕉についての評論で、「やぶれかぶれの勇に富んだ不具退転」という一節をのこしており、これは芭蕉の無常観について弱々しい感傷主義とした人への反駁として書いており、不退転の意味合いでこの言葉を漢字を変えて使っている。芥川の勘違いなのか、それともそれだけの強い意志を込めたというニュアンスなのかは見解の分かれるところである。
現代において
この言葉が生み出された当初とは、ややニュアンスは異なるものの、特に嫌いで、許しがたい相手に対して使うという大意は変わっていない。
PCゲームの『Civilization4』でも外交態度に「不倶戴天の敵」というメッセージが、戦争状態にある国との会話文で出てくるし、やや硬めの小説ならば割と使われる傾向にある。
また、『WHITE ALBUM2』というアダルトゲームのエキストラエピソードの表題にも使われている(不倶戴天の君へ)。詳細についてはとんでもないレベルのネタバレになるので自重する。
関連項目
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