筆順とは、文字、特に漢字や仮名を書くときの筆の順序である。書き順とも。
概要
筆順は漢字を筆記する上で重要なものである。定められた筆順で書けば、整った字を書くことができる、かもしれない。また、字を崩した際に字の判別がしやすくなる。例えば、同じ長さの縦棒三つでも、はねる方向によって「小」と認識できたり、「川」と認識できたりする。
クイズ番組やウェブサイトで筆順の問題が問われたりして、「一つの漢字に正しい筆順は一つだけだ」と思わされている人がいるかも知れないが、実はそうではない。なぜならその漢字の筆順を定めた文部省自身が「唯一絶対の正しい筆順」なるものを否定しているからだ。
日本では昭和33年に文部省から出された『筆順指導の手びき』に記載されている筆順を学校で教えている。これは、まだ漢字を覚えていない児童生徒にとっては、いくつもの筆順があると学習の妨げとなるおそれがあるので、学校教育での筆順を統一することで覚えやすくしましょう、という考えから作られたものである。俗に「正しい筆順」と呼ばれることのあるものは「学習用の筆順」に過ぎないのだ。
その『筆順指導の手びき』には以下のような記述がある。
もちろん,本書に示される筆順は,学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって,そのことは,ここに取りあげなかった筆順についても,これを誤りとするものでもなく,また否定しようとするものでもない。( 「1.本書のねらい」より)
本書に取りあげた筆順は,学習指導上の観点から,一つの文字については一つの形に統一されているが,このことは本書に掲げられた以外の筆順で,従来行われてきたものを誤りとするものではない。(「5.本書使用上の留意点」より)
ご丁寧に「誤りとするものでない」と大事なことなので二回言いましたにも関らず、クイズ番組や啓発サイトでは『筆順指導の手びき』の学習用筆順のみを正解として、その他の筆順を「間違い/不正解」と排他していることが多い。無論、学習指導者(教職員)にとっては筆順は学習用の一つしかないので頑張って覚えてもらいたい。一方で大多数の社会人にとっての学習用筆順とは、例えるならばカーナビが表示した案内経路、あるいは料理のレシピのようなものであり、熟練者は独自のアレンジを加えても構わないのである。
しかし、だからといってどんな筆順でも間違いではないというわけではないだろう。「川」を書くのに右棒から書き始めたり、「小」を書くのに下から書き始めたり、文章の表記法(タテ書きの上→下、ヨコ書きの左→右)に著しく逆らうような書き方は好ましくない(※戦前の右→左書きは1行1字で改行されたタテ書きであり、ヨコ書きを右→左に書いていたわけではない)。学習用筆順も恣意的に定められたわけではなく、先人たちが「この筆順なら綺麗に書けるはず」と習い継いできたり(尤も書道流派ごとに筆順が異なることも稀によくある)、崩し字や癖字や略字の際には筆順が共有されていたほうがお互いに判読しやすいという利点があったり、あるいは平仮名の筆順と関連付けられる、といった理由があったからこそ「学習用」という基準に選ばれたわけなので、字がうろ覚えな人や綺麗な字を書けない人といった要漢字学習者は学習用筆順に従うのが無難かもしれない。
平仮名の筆順
現行のひらがなは、漢字を速記&判読するために厳格な規則性をもって生み出された草書体に基づくことから筆順も一つのみである(変体仮名は別)。50字程度なら1時間あれば覚えられるし、通勤通学中に1行5字なら10日で覚えられる。常用漢字2136字の学習用筆順を覚えるのに比べれば容易いものだと思えばかなり気が楽になるぞ。
他国での筆順
日本で筆順を定めたのは国なので、漢字文化圏の台湾や香港、中国もまた独自に筆順を定めている。日本とは違う筆順を採用していたり、はたまた学習しやすいように新しい筆順を作ったりしている。
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関連サイトおよび関連項目
- http://bird.zero.ad.jp/oikeshodo/shiryo19.htm(『筆順指導の手びき』)
- 漢字 常用漢字 平仮名
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