胴上げ(胴揚げ)とは、何か偉業を達成した人や引退する人を祝福するために数人で空中に投げることである。
祝福の行為ではあるが、死亡例や、重傷を負って後遺症を残した例がある危険な行為でもある(後述)。
概要
通常、多数の人間によって一人の人間を集団で持ち上げて「空中に浮きあがる程度に投げ上げて受け止める」という形式で行われる。
基本的には祝福などの目的で行われるもので、例えば大学の合格発表で合格者を胴上げしたり、祝賀会や壮行会、送別会などで祝福・壮行・送別されるものが胴上げされることがある。プロ野球で優勝したチームの監督が優勝決定時にするものも有名で、1973年に巨人が甲子園で優勝を決めたときに阪神ファンの暴動で胴上げできなかったことを除けば、セ・パ両リーグとも基本的に毎年やっている。他にも引退したスター選手を胴上げするといったことも行われる。
少なくとも江戸時代の日本の文献には胴上げを行っている記述が存在しているとのこと。現代と同じく祝福の意味で行っていることが多いようだ。しかし井原西鶴の浮世草子「好色一代男」には制裁として「胴上げをしてわざと落とす」行為も登場する[1]。これは後述するが、死亡する可能性もある非常に危険な行為である。
また胴上げに似たような神事、祭りが仏教や神道に存在する。長野県の善光寺では「御越年(ごえつねん)式」という儀式で胴上げが行われている。また、新潟県の糸魚川市や南魚沼市にそういった風習が存在する。
海外でも胴上げと同じことをしている記録はあるようだが、現代に入ってからのスポーツ競技などの場で祝福として行われたという、比較的新しい記録が多い。日本のように数百年前の例が残されているわけではないようだ。そのため、日本以外ではあまり一般的な行為ではなく日本語「胴上げ」に当たるような、「専用の定まった単語」も外国語にはないようだ。英語では「air toss」「toss(ing) in (the) air」「throw(ing) in (the) air」といった、「空中への投げ上げ」を意味する言葉で多様に表現される。
危険性
ただし、悪ふざけで行ったり、酔っぱらっていたり、不注意、ミスから胴上げした相手を落としてしまい、結果死亡したり、傷害を負わせて後遺症を残してしまったケースもある。そのために数千万円の賠償を請求する訴訟が行われた実例もある。相手を死亡させたり一生残る後遺症を残す危険がある行為であるということを十分に認識して、安全に十分配慮する必要がある。
とはいえ、「安全に行う方法」が判明しているわけではなく、安全ガイドラインなどもない。とりあえず、ネット上の個人サイトやブログなどで提案されている「安全対策」は以下のようなものだが……。
- 十分な人数で行う:人数が増えれば受け止める手が多くなる。逆もまた然りである。「何人いれば安心」とは一概には言えないが、少なくとも受け止める人数が一桁では危険すぎる。また、人数を増やしてもスペースの問題から「実際に手で受け止めることが出来る人」が増えるとは限らないことにも注意したい。
- あまり高く投げ上げない:高く投げ上げれば、当然落ちてきた時の衝撃も強くなり受け止めるのが難しくなる。また、変な方向に投げ上げてしまって受け止めることが出来ない可能性もある。天井に当たってしまう危険もあるだろう。テレビでスポーツ選手などが胴上げを行うときには高く投げ上げていることもあるが、あれはアスリートという選ばれた肉体を持っている人々が大人数でやっているために許される特例である。
- 頭を管理する係を作る:落ちた時に死亡や重篤な状態につながるのは、特に頭から落ちた場合である。「投げ上げられた人の頭を真っ先に受け止めて、少なくとも頭からは絶対に落とさない」係を作る必要がある。願わくば複数人がこの係を担当することが望ましい。
- 体のどこかや服などをつかんでおく係を作る:力の強い人が上半身の衣服をつかんだ状態で行えば、首が絞まってグエッとなったり襟や裾が伸びてダルンダルーンになったり布地が裂けてしまうかもしれないが、少なくとも頭から落ちてしまうことは高い確率で避けられる。上記の「あまり高く投げ上げない」ことにもつながるので一石二鳥。ただし、事前相談なしでこの安全策を取って服が裂けたりした場合は、それはそれでトラブルの元になるかもしれない。
以上のような安全策は当然とっておくべきだが、これらの策を取っていても事故を100%防げるとは限らないことには注意されたい。
また、「胴上げをされる側」の事前の了承が必要なことは言うまでもない。危険な行為であることはもちろん、仮に安全対策が十分とられていても「高所恐怖症である」「何らかの理由で髪を失っていてカツラを使っているがそれを知られたくない」「服のポケットに絶対に落としたくない貴重品が入っている」「体調が悪い」など、「胴上げが行われるべきではない」状態というものは無数にありうる。
関連動画
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関連項目
脚注
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