負債(liability ライアビリティ)とは、簿記で使われる言葉である。
概要
貸借対照表(バランスシート)に書かれる
簿記の世界では、ある時点における財務状況を示すため、貸借対照表が作成される。その右半分が貸方で、右半分の上が負債の部となっており、負債を書き入れていく。
借方(かりかた) | 貸方(かしかた) |
資産の部 | 負債の部 |
純資産の部 |
流動負債と固定負債に分類する
負債の部において、流動負債と固定負債を分類するのが、重要な作業となる。
貸借対照表の基準となる日の翌日から1年以内に現金(紙幣・硬貨)または銀行預金を支払う負債は、流動負債として扱われる。
貸借対照表の基準となる日の翌日から1年を超えた先に現金または銀行預金を支払う負債は、固定負債として扱われる。
このように、1年以内に現金または銀行預金を差し出すかどうかで流動負債か固定負債かを分類する。このことを一年基準(ワン・イヤー・ルール one year rule)という。
ただし、正常な営業取引の過程にあるものに限り、現金または銀行預金を差し出す予定が1年を超える先に設定されている負債は、流動負債に入れることになっている。このことを正常営業循環基準という。
実務上は、まず正常営業循環基準を適用して流動負債か固定負債かを決め、その後に、会社の本業以外の取引で発生するものに対して一年基準を適用して流動負債か固定負債かを決める。
支払期日までの期間が長いほど、債務としての厳しさが和らいでいく
負債に限らず債務全般に共通することだが、支払期日までの期間が長いほど厳しさが和らぎ、債務者にとって楽になる。
支払期日が1日後の手形は非常に厳しい債務で、支払期日が10年後の手形はだいぶ厳しさが緩和され、支払期日が1万年後の手形はもはや厳しさが皆無である。
支払期日までの期間の長さが負債の厳しさに影響を及ぼすことについては、債権の記事や債務の記事も参照されたい。
借り換え
負債を抱えるものは、現在保持する負債をよりよい条件の負債に置き換えることがある。このことを借り換えという。
「支払期日まで短くて厳しい負債」を「支払期日まで遠くて緩やかな負債」に変換したり、「金利が多い負債」を「金利が少ない負債」に変換したりする。詳しくは、借り換えの記事を参照のこと。
流動負債
会社の本業の商取引に関わる負債か、会社の本業の商取引に関わらない負債のうち貸借対照表の基準となる日の翌日から1年以内に現金や銀行預金を支払う負債を、流動負債という。
一般に、銀行が企業を評価するとき、負債総額の中で流動負債の割合が多いほど評価が低くなる。会社にとって、負債の支払期日が現在よりも近ければ近いほど経営に厳しい。支払期日が1日後の手形と支払期日が1万年後の手形のどちらが会社にとって厳しいかというと、これはもちろん前者である。そうした常識から、銀行は流動負債を経営圧迫要因と見なしている。
この項目と『固定負債』の項目は、Wikipediaの勘定科目の記事を開きながら読み進めることをお奨めしたい。
買掛債務
買掛債務は、会社の本業の商取引で生ずる債務であり、買掛金と支払手形と電子記録債務の3つに大別される。
会社が原材料を購入したとき、代金を即時に銀行振り込みしたら流動資産の現金預金の数字が減る。ところが信用取引で支払いを猶予しているときは、会社に債務があることになるので、流動負債の買掛債務の数字が増える。
その他流動負債
この分類には、色んなものが雑多に入る。
会社の営業以外の購入で非継続的に発生した債務を未払債務と呼ぶ。飲食店が備品のコピー機を購入したときに、即時に銀行預金を振り込まず債務を負うことがあるが、その債務のことである。未払債務は、「銀行預金を振り込む約束」や手形の振り出しや電子記録債務の発生という形で生ずるが、支払期日が1年以内なら、一年基準を適用して、流動負債の未払金に入る。
会社の営業以外の購入で継続的に発生する債務がある。工場を建てるため土地を借りて定期的に後家賃を支払う、というのが典型例である。家賃というのは前家賃(先払い)と後家賃(後払い)があり、日本において民間の家賃のほとんどが前家賃である(資料)。前家賃を銀行振り込みで支払ったら資産の部の現金預金の項目の数字が減るが、後家賃の場合は「銀行預金を振り込む約束」であり、債務となる。後家賃を支払う期日が1年以内にやってくるのなら、流動負債の未払費用の数字を増やすことになる。
原材料や工作機械を販売する企業があり、代金の一部を先払いで受け取ることがある。このとき受け取った額を前受金としてこの項目に記入する。この前受金は、将来納入すべき物品(負債)の一部である、という考えである。95万円の原材料を100万円で販売するとき10万円を先払いされたら、まず負債の前受金が10万円増える。そののちに商品を納入したら、資産の棚卸資産が95万円減り、負債の前受金の10万円を削除して資産の現金預金を10万円増やし、資産の売掛債権が90万円増える。こうしたやりとりで、資産が純粋に5万円増える。
土地を貸し付けている企業があり、借り手企業に家賃を数ヶ月分前払いさせることがある。このとき受け取った額を前受収益としてこの項目に記入する。この前受収益は、将来において借地権を提供する債務(負債)の一部である、という考え方である。
会社は、資金を集める目的で、社債という有価証券を発行し売却することがある。その社債の償還期日が1年以内なら、1年以内償還社債の項目に金額を書き入れる。
会社は、銀行や貸金業者や取引先からお金を借りることがある。その場合の返済期限が1年以内なら、短期借入金の項目に借りた金額を書き入れる。
会社というのは、従業員や会社役員に、賞与(ボーナス)を支払ってあげねばならない。つまり、会社は従業員や会社役員に対して負債を持っている。そのため会社は、従業員や役員の賞与を日頃から積み立てておくのだが、その金額を賞与引当金に書き込む。
固定負債
会社の本業の商取引に関わらない負債のうち、貸借対照表の基準となる日の翌日から1年を超えた後に現金や銀行預金を支払う負債を、固定負債という。
会社の営業以外の購入で非継続的に発生した債務を未払債務と呼ぶ。飲食店が備品のコピー機を購入したときに、即時に銀行預金を振り込まず債務を負うことがあるが、その債務のことである。未払債務は、「銀行預金を振り込む約束」や手形の振り出しや電子記録債務の発生という形で生ずるが、支払期日が1年を超えた先なら、一年基準を適用して、流動負債の長期未払金に入る。
会社の営業以外の購入で継続的に発生する債務がある。工場を建てるため土地を借りて定期的に後家賃を支払う、というのが典型例である。家賃というのは前家賃(先払い)と後家賃(後払い)があり、日本において民間の家賃のほとんどが前家賃である(資料)。前家賃を銀行振り込みで支払ったら資産の部の現金預金の項目の数字が減るが、後家賃の場合は「銀行預金を振り込む約束」であり、債務となる。後家賃を支払う期日が1年を超えた先なら、流動負債の長期未払費用の数字を増やすことになる。
土地を貸し付けている企業があり、借り手企業に家賃を数年分前払いさせることがある。このとき受け取った額の、1年先を超える部分を長期前受収益としてこの項目に記入する。5年分の家賃を払ったのなら、最初の1年分は流動負債の前受収益の欄に入れ、残りの4年分を固定負債の長期前受収益に入れる。
会社は、資金を借り入れる目的で、社債という有価証券を発行し売却することがある。その社債の償還期日が1年を超えた先なら、社債の項目に金額を書き入れる。
会社は、銀行や貸金業者や取引先からお金を借りることがある。その場合の返済期限が1年を超えた先なら、長期借入金の項目に借りた金額を書き入れる。
長期借入金を分割払いにすることがある。1000万円を借りて、1年に200万円返すことを5回繰り返して5年で返済するなどのことである。この場合は、最初の1年目の200万円が流動負債の1年以内返済長期借入金に入り(一部の企業においては短期借入金に入る)、2年目~5年目の800万円は固定負債の長期借入金に入る(資料)。
会社というのは、従業員や会社役員が退職するとき、退職金を支払ってあげねばならない。つまり、会社は従業員や会社役員に対して負債を持っている。そのため会社は、従業員や役員の退職金を日頃から積み立てておくのだが、その金額を退職給与引当金や役員退職慰労引当金に書き込む。
関連リンク
Wikipedia記事
参考になる有力サイト
関連項目
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