「貴官の勇戦に敬意を表す、再戦の日まで壮健なれ」とは、既読スルーされることに定評のある称賛と期待の言葉である。
概要
『銀河英雄伝説』本伝第1巻「黎明篇」第二章「アスターテ会戦」における、ラインハルト・フォン・ローエングラムから敵将ヤン・ウェンリーに宛てた電文。大雑把に言えば「やるじゃん。また今度戦いたいからさ、その時まで元気でいろよ!」という感じの意味である。
ヤンはこのアスターテ会戦において、ラインハルト率いる銀河帝国軍にさんざんに打ち破られた自由惑星同盟軍のうち第2艦隊の次席幕僚をつとめ、中途から司令官負傷により第2艦隊の指揮権を継承。巧妙な戦術をもってラインハルトを痛撃し、同盟軍の完全な壊滅を防いだ。
この短い電文は、戦闘の終結後、そうしたヤンの働きに対し、完全勝利を防がれた側であるラインハルトが敬意と称賛をこめ、将来の再戦を期して送ったものであった。
貴官の勇戦に敬意を表す、再戦の日まで壮健なれ
「敵の第二艦隊の指揮官……途中から権限をひきついだ男だ、なんと言ったかな」
「ヤン准将でした」
「そう、ヤンだ。その男におれの名で電文を送ってくれ」
キルヒアイスはにこりとして
「どのような文章を送ればよいでしょう」
「貴官の勇戦に敬意を表す、再戦の日まで壮健なれ……そんなところでいいだろう」
「電文か、読んでみてくれ」
「はあ、では読みます。貴官の勇戦に敬意を表す、再戦の日まで壮健なれ、銀河帝国上級大将ラインハルト・フォン・ローエングラム……以上です」
「勇戦と評してくれたか、恐縮するね」
この電文についての、受信側であるヤンの理解は「今度会ったらたたきつぶしてやるぞ、ということ」であった(たしかに再戦の日の後も壮健でいろとは言ってないのである)が、ラインハルトの稚気を感じはしても特に反感をおぼえはせず、好意的に受け取った。
なお、この時ヤンはラインハルトへ返事を返さなかった。残兵収容中でありそれどころではなかった、というのもあるが、部下のラオ少佐より返電するか問われたときの反応は、気のない声で「先方もそんなものは期待してないのじゃないかな。いいさ、放っておいて」というだけだった。
ところが、その先方ご本人はといえば、それがけっこう期待していたっぽいのである。
その後
時は流れて3年後、バーミリオン星域会戦においてラインハルトとヤンはまたしても激突し、戦闘終結後に会談を持った。両者の最初の話題は、彼らがはじめて互いを認識したアスターテ会戦のことであった。
「卿とはいろいろ因縁がある。三年前になるが、アスターテ星域の会戦をおぼえているか」
「閣下から通信文をいただきました。再戦の日まで壮健なれ、と。おかげさまで悪運づよく生きながらえております」
「私は卿から返信をもらえなかった」
ラインハルトは笑い、ヤンもひきこまれて笑顔をつくった。
「非礼のかぎり、申しわけございません」
ラインハルトはまだ何も言っていないのにうっかり自分から電文の話を持ち出してしまうヤンと、それに「でも返事くれなかったじゃんそれ」と即答するラインハルトの図。
むろんラインハルトの言葉は冗談7割あてつけ3割といったところであろうが、すぐに返信の話を持ち出したあたり、やはりどこか返事に期待していたようである。そしてヤンに謝罪されると「その借りを返せというわけではないが……」と引きつけてさっそく勧誘にかかるあたりは流石であった。
作品外での扱い
この電文は短いものではあるが、敬意を示す言葉であり、称賛の意の言葉であり、再会を期した一時の別れの言葉でもあるという複合的な台詞ということに加え、本伝最初の戦いの締めともいえる電文であることもあって、ファンのあいだでの知名度も高い。また、後半の「再戦の日まで壮健なれ」の部分は、作中の文脈を離れれば「また会う日まで、元気でね!」ということにもなる(べつにヤンならぬ吾々はまた会った後も元気でいていいのだし)ため、そこだけ抜き出すととくに汎用性が高い。
そうした便利さ、知名度から、公式側による使用例も少なくない。特に近年の『銀河英雄伝説 Die Neue These』では、上映イベントなどでスタッフ側からファンに対し「再戦の日まで壮健なれ」と呼びかけられることもある。ファンの側も少なくともノイエが完走するまでは壮健でありたいというのが共通認識と思われるので、そこらへん利害は一致しているわけである。
その『DNT』放送開始以降は、電文に返事をしないヤンについても各所から「既読スルー」「既読無視」といったコメントが相次いだ。むろん電文はLINEじゃないので既読つく機能とかないのだが、なにせ受けた本人があとでうっかり送り主に直接「読みました宣言」をしてしまっているのがなんとも……。
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関連項目
脚注
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