AT互換機とは、IBM PC/ATの互換機およびそれを発展させつつも互換性を維持したパソコンの総称である。
現在、Windowsパソコンと呼ばれる製品のほとんどがこれに該当する。
概要
IBMは、初代IBM PCからBIOSなどを公開したことで、多くのメーカーが互換機の開発、販売を進め、表計算ソフトのヒットによってビジネスパソコンのシェアを席巻することとなった。
1984年にIBM PC/ATが発売されると、互換機メーカーもAT互換機をリリースしていった。
しかし1987年にIBMが第二世代に当たるPS/2を発売する際に、すべてのパーツ情報を非公開にして高性能機市場を独占しようとする動きに変わった。
これに互換機メーカーが反発、互換機メーカー同士の連合として独自のアーキテクチャーを開発、搭載するようになった。
結局、安価でそれなりの高性能と過去のソフトウェア資産などを維持できる互換機メーカーがシェアを伸ばし、過去のハードウェア、ソフトウェアとの互換性を失っていたIBMは白旗を揚げ、互換機メーカーの1社へと成り下がっていった(後にパソコン部門を中国のレノボに売却、撤退)。
また、PC DOSをIBMに供給していたマイクロソフトも互換機メーカー向けにMS-DOSを供給し続け、IBMと共同開発を進めていたOS/2から脱退、独自開発を進めたWindowsをAT互換機向けに供給、Windows 95の爆発的なヒットによってパソコン市場で巨大な権力を握ることとなった。
その後、Windowsの進歩に伴ってマイクロソフトが新しいアーキテクチャーを公開するが、そこでルーツであるIBM PC/ATとの互換性は失われていくようになった。2014年現在ではハードウェアの互換性はほぼ皆無に等しくなったが、AT互換機という名称は健在である。
日本での普及
日本においては、日本語の表示、処理という壁が存在しており、AT互換機そのままでは対応できなかった。
1986年に、マイクロソフトとアスキーがAX規格を策定、日立、三菱電機、ソニーなど大手電機メーカーの大半が参加した(NEC、富士通は独自ハードでシェアを持っていたために参加しなかった)。
しかし、独自の日本語ハードウェアを搭載したことで、安価なパーツで製造できるAT互換機のメリットが日本語ハードウェアのコストによって相殺され、国民機と呼ばれたPC-9800シリーズに価格で負ける場合もあった。
また、アメリカではVGAが一般的になったものの、AXでは採用されなかったことで海外のソフトウェアとの互換性もなくなってしまった。
NEC、富士通以外で唯一参加しなかった東芝は、独自にAT互換機の日本語化を進めた(J-3100)。特にノートパソコンのパイオニアとなったDynaBook(J-3100SS)が海外とともに日本でもヒットしたことで、AXを尻目にシェアを伸ばすこととなった。
一方で日本IBMは、ソフトウェアで日本語フォント表示、変換機能を実現するDOS/Vを開発した。当初はPS/2系のパソコンでしか動かない設計であったが、パソコン通信でAT互換機での動作報告が相次いだことと、それに対応させる上での障壁が明らかになっていくうちに、非公式にAT互換機に対応できる改良を加えていった。
1991年にPCオープン・アーキテクチャ推進協議会(OADG)が設立され、公式にAT互換機に対応したMS-DOS 5.0/Vがリリースされると、AT互換機は普及の道をたどることとなった(当時はAT互換機と言うよりもDOS/Vパソコン、さらにはハードウェアを含めてDOS/Vと呼ばれていた)。
特にIntel 486搭載のパソコンになると、独自のハードウェアを搭載したPC-9800シリーズと大差ない日本語処理能力を実現できたことで、AXに参加していたメーカー、そして東芝もOADGに参加した。
また、ハードウェアの障壁がなくなったことで、海外の大手互換機メーカーも低価格パソコンで日本に進出し、パソコン業界は「黒船来襲」と騒動になった。
海外ではデル、ゲートウェイなど、個人経営でパーツを組み立てて販売して成長するメーカーもあったが、日本でもマウスコンピュータージャパンやフロンティア神代といった同様のメーカーが誕生、秋葉原などのパソコンショップが独自ブランドのパソコンを販売するようになった。
さらに独自アーキテクチャーを勧めながらもNECに追いつけなかった富士通も、1993年にAT互換機への転換を始めた。
併せて、1991年にWindows 3.0日本語版が登場すると、実用的なGUIとハードウェアに依存しない日本語環境によってPC-9800シリーズのメリットは薄れていった。
そして1995年にWindows 95が発売され、低価格のAT互換機パソコンを中心に爆発的に売れるようになったことで、PC-9800シリーズの独自アーキテクチャーの存在意義は決定的になくなった。
ついに1997年にNECがPC98-NXシリーズを発表してAT互換機への転換をしたことで、Macintoshを除くほぼすべてのパソコンがAT互換機となった。
主な互換機メーカー
海外
日本
- NEC(1997年より。それ以前にパッカードベルとの合弁会社での販売実績もあり)
- 東芝
- 富士通
- ソニー(2014年に撤退)→ VAIO
- 日立製作所(2007年に撤退)
- 三菱電機(2013年に撤退)
- ソーテック(オンキヨーに吸収)
- マウスコンピューター
- KOUZIRO(旧:フロンティア神代。インバースネットに事業売却して解散)
- サードウェーブ(ドスパラ向けのパソコンを製造)
関連動画
関連項目
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