V-107とは、アメリカ合衆国で開発されたヘリコプターである。
概要
バートル社(現在はボーイング社の一部門)によって開発され後輩機である『CH-47』と双璧を成す『タンデムローター(機首側と機尾側の上方にローターを備えたヘリコプター)』の顔として知られた。
開発経緯
バートル社は元々、『パイアセッキ・ヘリコプター』と称し第2次世界大戦末期の1945年には『HRP』を飛行させ1947年にはアメリカ海軍に配備が始まり程なく1949年にはより洗練された『H-21』のアメリカ陸軍への配備を始めていた。
これらの機体は『HRP』の時点でタンデムローター型となっておりシングルローター型のヘリコプターより積載量が多いことが実証されていた。
そして1958年、それまでの運用によって得られた知見と技術向上を反映して開発・初飛行したのが本機である。
機体
ローターを含めると全長25m(ローター抜きで13m)の本機は前述の通りタンデムローター型のため機首側と機尾側の上方にローターを配置しているが『HRP』や『H-21』が『フライングバナナ』と渾名を付けられた『くの字』状の外観をしていたのに対し本機ではエンジン部と胴体を分割して胴体を棒状とし、機尾に大型のハッチを備えることで人員、貨物を短時間で搬出する事が可能になった[1]。
固定乗員は3名だが人員のみなら26名、貨物は吊り下げで5t弱の貨物を輸送できた。最高速度は最終的に267㎞/h、航続距離は3t程度の積載で360km程度とされるが機尾側にある左右のバルジにオプションで増加燃料タンク[2]を備える事ができた。
なお、本機は設計段階で恒常的に海面を含む着水運用を想定されていた事が後の配備先に繋がる。
- 参考動画
運用
初飛行した1958年、アメリカ陸軍は前述の『H-21』を含む輸送ヘリの更新用として新型輸送ヘリの要求案を各メーカーに公示しバートル社も応じて複数の試作機を納入した。
だが本機は試作の時点で要求案の内容を満たしていなかったため採用されることは無かった[3]。
そして1960年、今度はアメリカ海兵隊が新型輸送ヘリの要求案を公示した。今度はエンジン換装などの改良を施した本機を提示して1962年に採用となり『CH-46』の制式名と『シーナイト(海の騎士)』の愛称を与えられた。
更にアメリカ海軍も補給艦から戦闘艦艇に物資を航空輸送する『VERTREP』用に『UH-46』、更に改修する形で救難仕様『HH-46』を運用することになった。
これらの機体は改良を重ねつつ採用から半世紀にわたって運用され2015年秋には退役した。
一方、アメリカ軍で運用が始まった頃、カナダ軍、スウェーデン軍でも採用した他、タイ王国、サウジアラビア政府も後述するライセンス生産型を採用した。
日本において
バートル社は1960年代に日本・川崎飛行機(現川崎重工)に製造ライセンスを与え後に軍事仕様はバートル社、民間仕様(官公庁向けを含む)は川崎飛行機に区別(『KV-107』)された上で生産された。
意外なことに自衛隊で初めて採用したのは海上自衛隊であった。用途は航空掃海で1963年から配備が始まったが磁気探知型機雷用掃海具が最後まで運用できなかった事もあり9機に留まった。
続いて陸上自衛隊が1966年から配備を開始した。当初計画では1個師団規模の自衛隊員を空中機動できる600機の大量配備を目指していたが政治と経済事情から60機の配備となった。
そして1967年から航空自衛隊が航空救難用として配備を開始し最終的に51機が配備された。
軍用機墜落時の搭乗員捜索・救出や災害派遣時の被災者救出だけでなく副次的に地上用レーダーや高射隊装備の部品を空輸する任務も担当した。
その後1990年に海上自衛隊、2002年に陸上自衛隊、2009年に航空自衛隊でそれぞれ退役した。
なお、警視庁でも1973年から2000年まで1機が『おおぞら1号』の愛称で運用されていた。
関連作品
動画
静画
関連コミュニティ・チャンネル
関連項目
脚注
- *『HRP』、『H-21』では側面の小型ハッチドアからしか出入りできなかった
- *この増加燃料タンクはフロートとしても運用できた
- *バートル社も開示時点で承知していた為既に『CH-47』の開発を開始していた(実績作り)
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