三淵藤英とは (ミツブチフジヒデとは) [単語記事]

三淵藤英（？～1574）とは、戦国時代の武将である。

概要

かいつまんで説明すると細川藤孝の兄。しかし彼は幕臣としての役割を貫き、弟と明暗分かれる結末を迎えることとなった。

三淵氏は代々奉公衆や御部屋衆などを務めた幕臣の一族である。『寛政重修諸家譜』や『系図簒要』によると足利義満の庶子で引付頭人を務めた三淵持清が祖とされるが、これが真実かどうか確認するすべはない。

とにもかくにも室町時代中頃には奉公衆として番帳に記載されており、幕臣として活動していた。しかし、三淵氏は幕臣としては名前もほとんど残っていないぱっとしない存在であり、足利義澄方としてその子である足利義晴に近侍したことで、側近として家格を上げた家の一つであった。

そして三淵藤英の父・三淵晴員は姉である佐子局らとともに足利義晴に仕えた。なお三淵晴員が和泉上守護家細川氏の細川元有の子で、細川藤孝養父となった細川元常の兄弟、というのは所伝であり、細川藤孝の養子入り先が実は内談衆細川氏ということが明らかになりつつある今、こちらも疑わしくなりつつあるようだ。

とにもかくにも三淵晴員は将軍側近を務めあげ、石山本願寺とのパイプ役や、兄・三淵孫三郎と協力して播磨赤松氏との仲介役となっていた。そして三淵晴員は足利義晴の死を受けて出家し、1570年に亡くなることとなる。代わって表舞台に現れるのが息子の三淵藤英である。

三淵藤英は父・三淵晴員とともに足利義晴・足利義輝父子に仕えていた。弟の細川藤孝とは、藤孝に足利義晴御落胤説があることはおいておいても、異母兄弟ということになっている。とはいえ藤孝の母・清原業賢妹とのパイプは兄である藤英にも公家社会との接点をもたらした。

1540年にはすでに活動が見られ、御部屋衆（あるいは奉公衆）として三淵弥四郎の名がしばしば記録されている。なお、初名は三淵藤之という所伝があり、藤の字は足利義輝（足利義藤）から与えられたとも。

やがて父が出家すると、弾正左衛門尉となる。しかし、政所執事である伊勢貞孝の反乱後、しばらく史料に現れなくなる。この理由はこの反乱に加わって、遠ざけられたともいわれている。

ところがここで転機が訪れる。三好義継・松永久通らの暴走によって起きた足利義輝の横死・永禄の変である。三淵藤英はこの後足利義昭方として矢島から越前まで同行しており、1567年には上洛の下準備として大和で工作したり、三好長逸の息子・三好久介と戦い惨敗したり、とあちこちでその名前が見られる。かくして、1568年に念願かなって上洛すると、三淵藤英は大和守になり、奉公衆の一員として弟の細川藤孝とともに足利義昭に仕えるのであった。

その後三淵藤英は息子・三淵秋豪とともに伏見城を中心とした洛南地域を支配していた。その一方で奉公衆として各地を転戦、御部屋衆として義昭の側近として活動、と忙しい日々を過ごしていった。これには三淵藤英の持っていた、清原家・吉田家といった公家とのネットワークの大いに活用されたようだ。

1573年についに織田信長と足利義昭の間で戦いが始まると、弟・細川藤孝が織田方についたのに対し、兄である三淵藤英は幕府方についた。しかし情勢はあっけなく織田方優位になる。藤英は足利義昭が槇島城に籠城した際、二条城でこれを支援した。結果織田軍に囲まれ、昵近衆が信長に降っても単独で粘り強く抵抗する。しかし柴田勝家の勧めで降伏。以降織田方として岩成友通を攻撃している。