小山田茂誠とは (オヤマダシゲマサとは) [単語記事]

小山田茂誠（おやまだ・しげまさ　1562ごろ～ 1637）とは、甲斐・信濃の戦国武将である。

概要

甲斐武田氏に仕えた小山田氏の一族。真田昌幸の娘・村松殿を妻としており、真田信之・真田幸村（信繁）から見れば義兄にあたる。武田家が滅亡、続いて小山田氏当主である小山田信茂が織田氏に処刑されると、以降は妻の縁を頼って真田家臣となった。

大河ドラマ「真田丸」では、声優・高木渉の俳優デビュー役となり、その憎めないキャラクターもあって話題に。

生涯

出自

小山田氏は甲斐・郡内地方（都留周辺）を領する豪族で、茂誠はその分流の出身である。宗家の当主である小山田信茂から「茂」の一字をもらっている。

小山田氏にはいくつか分流が存在しているが、茂誠の出自については「小山田弾正家の小山田有誠の子」「石田小山田家の小山田昌行の子」のふたつの説がある。茂誠および彼の子孫は後者を自称したが、実際は前者なのでは？と言われている。

小山田弾正家
こちらは鎌倉時代初期には本家から分かれ、重臣として仕えた家柄だったようだ。父・小山田有誠（ありまさ）も、信茂の前の当主である小山田信有から一字拝領を受けている（信茂の兄も父も祖父も小山田信有なので、どの信有からもらったのかは不明）。
有誠は武田家滅亡の時点でも存命で、その後は後北条氏の下へと逃れたが、以降消息不明。この時代、茂誠も行動を共にしていたのかは不明（武田滅亡時点でまだ20歳くらいなので、父に付き従っていたのではないかと思われる）。
　
石田小山田家（小山田備中家）
こちらはもう少し後、室町時代になってから分かれた家であるとも、全く無関係の別家であるとも言われている。武田信虎・信玄の二代に仕えた小山田虎満（小山田昌辰）は、元々は上原伊賀守を名乗っていたが、その功績から石田小山田家の名を継いだとされる。
虎満の子・小山田昌行は、織田家の甲州征伐の際、仁科盛信と共に高遠城で玉砕した。（虎満は1579年病死。一緒に玉砕したとする説もあるが）

名乗りなどからしても弾正家の出のように見えるが、やはり主君を裏切った小山田信茂の存在を恥じたのか、系図の上では武田家に殉じて散った石田小山田の子孫とされている。

村松殿との婚姻

真田昌幸の娘・村松殿（於国）の夫として知られるが、彼女と結婚した時期や、真田家に仕えた時期についてよく分かっておらず、諸説ある。ただ、1582年の武田滅亡の時点で息子が赤ん坊だったとされているので、数年前には既に結婚していたようだ（ちなみに村松殿は1565年生まれ）。

なお石田小山田家の出自とする説では、父（と祖父？）が高遠城で戦死したため、昌幸によって婚姻の形で引き取られたとしている。つまり、その後の信茂の裏切りの流れとも完全に無関係という事に。

茂誠が真田家臣となっている事が確実に確認できるのは1590年の時点で、この時に村松の地を領地として与えられたことから、そこに住むようになった妻は以降「村松殿」と呼ばれるようになった。それ以前の動向は不明だが、後北条氏などを経ながら、どこかのタイミングで妻と共に真田家に合流したのではないかと思われる。（もちろん村松拝領以前から仕えていた可能性は十分有り得る）

一番遅い説では、後北条氏の滅亡で真田家に仕え、この時ようやく結婚した…なんていうのもあるが、それでは流石にどんだけ行き遅れてるんですか村松殿（にじゅうろくさい）。

真田家臣として

経緯はともかく、一門に連なる人物として、以降は真田家をよく補佐した。義理の弟である真田信之に仕えて、関ヶ原の戦い以降も真田家（上田藩→松代藩）次席家老として活動し続けることになる。主君たる信之だけでなく、幸村（信繁）とも義兄弟として親交を重ねており、関ヶ原の後に九度山に蟄居となった幸村から茂誠に宛てた手紙も残っている。この関係は幸村が大坂城に入った後も、彼が戦死する直前まで続いた。

一方の茂誠も大坂の陣に上田藩士として参戦。この時は信之は病気で参加できず、代わりに信之の二人の息子が大坂へと出向いており、彼らの補佐役として活動した。

こうして、信之と幸村の兄弟が別陣営に分かれて戦う事になった関ヶ原・大坂を、共に信之方として戦い、見届けた事になる。小山田本家の裏切りと滅亡に始まり、戦国乱世の中で様々に翻弄されながらも、妻と共に真田家の為に生き抜いた人であった。村松殿は1630年に、茂誠は1637年に、それぞれこの世を去った。なお信之は1658年死去。