徳川埋蔵金とは (トクガワマイゾウキンとは) [単語記事]

徳川埋蔵金とは、実在の怪しい財宝、またそれを巡る茶番である。

でももしかしたら茶番じゃないかもしれない。

概要

皆さんご存知の通り、江戸幕府は1867年に大政奉還をし、翌年に王政復古の大号令がなされたことで権力を失った。

大政奉還というのは、大政、つまり政治の大権を預かっていた幕府がそれを朝廷に返上する、というものだったのだが、この時点では最後の将軍・徳川慶喜は征夷大将軍を辞職しておらず、引き続き諸藩に対して軍事指揮権を持っていた。そもそもなぜ幕府が大政奉還を実施したかといえば、幕府への反発が強まっている中で幕府独裁制を修正し、徳川を筆頭とする公議政体体制（議会制のようなもの）を作ろうと考えてたためで、この時点で完全に政治権力を手放そうとは思っていなかった。しかし結局討幕派の攻勢は強まり、徳川家は江戸城を明け渡さるを得なくなる（無血開城）。

ところが1868年、明治新政府が幕府御用金を当面の資金源として使おうと江戸城の金蔵を開いたところ、なんと中身はほとんどカラ。新政府にしてみればとんでもない話で、すっかりこのお金をアテにしていたものだから、躍起になって徳川の隠匿資産を探し回ることになる。

探索していくうちにどうやら赤城山（群馬県）にありそうだという話になり、赤城山を中心として大捜索が行われる。実際この山にある「源次郎の井戸」と呼ばれる古井戸の周囲から、黄金像や燈明皿や謎の銅板などが発掘されるのだが、埋蔵金そのものはついに出てこなかった。

この失敗によって「実は赤城山説はデコイじゃないか」という説が持ち上がり、本当の埋蔵場所はどこかという侃侃諤諤の議論がなされ、本当は日光にあるんじゃないかとか、各地の東照宮に散っているんじゃないかとか、さまざまなことが言われた。しかしいずれの場所からも埋蔵金らしきものは発掘されていない。

こののちの時代にも、最初に火が付いた赤城山をはじめとして、全国各地の「埋蔵金があるかもしれない地点」で捜索がおこり、特に「源次郎の井戸」では重機を用いた大規模な発掘調査まであったのだが、結局埋蔵金は見つからず、今や徳川埋蔵金と言えばほとんど眉唾モノ、発掘調査も茶番のような扱いを受けることもしばしばになってしまった。言葉自体も「あるかもしれないがほとんど見込みのないもの」などの意味で使われたりもする。いまだに真剣に取り組んでいる人もそれなりにいるが、本気で信じている人は年々少なくなっている気がする。

そもそも本当にあるの？

幕末期の江戸幕府はたびたび大赤字に見舞われていて、ほとんど常に困窮していた。そんな中でまとまった金を常備しておけるような余裕があったかについては議論の余地がある。これだけ探しても埋蔵金が見当たらないのだから、本当は埋蔵金なんてどこにもなくて、江戸城の金蔵が空っぽだったのは隠したんじゃなくてマジで無かったんじゃないかという説もある。

埋蔵金説自体、幕府が倒れたあとしばらくのちに再興させるための軍資金として隠されたもの、という説が主流なのだが、そもそも幕末の時代は外国の脅威のために幕府主導で大規模な軍事増強があり、勘定奉行だった小栗忠順も造船所の建設などを主導していたので、とても「討幕後に幕府を再興させるための軍資金を隠す」なんて発想はしなさそうだ。