羅生門で死体喰ってるババアとは、とあるAV男優を評した言葉である。
出典はインターネット掲示板「Pinkちゃんねる」の「大人の同性愛」板、「昔 お世話になった中年ビデオを語る会」のスレッドに2015年9月16日に書きこまれた以下のレスである。[1]
737 薔薇と百合の名無しさん 2015/09/14(月) 19:45:51.19 ID:j/w0ggnz0
激ハメじいちゃんだっけ?
あたしはゲテモノものとして観てるわ
単体では見られたものじゃないけど738 薔薇と百合の名無しさん 2015/09/16(水) 21:30:49.07 ID:hKtwN/Pk0
激ハメ爺ちゃん、ウケトコロテンさせたりしてて
自分的にちょっとヒットだわ739 薔薇と百合の名無しさん 2015/09/16(水) 21:49:22.74 ID:mu/XsESO0
ゲテモノも嫌いじゃないアタシも激ハメジジイはダメだったわ。
色気が無いのよ色気が。
羅生門で死体喰ってるババアを連想して反吐が出るわ。
ちなみにこのスレッドでは、おそらく同一人物によるものなのか、約8か月後にもう一度類似のレスも書きこまれている。
949 薔薇と百合の名無しさん 2016/05/08(日) 13:45:25.42 ID:Jxa8QuJm0
激ハメ爺ちゃんってサムソンだったの
豊漫と思ったわ950 薔薇と百合の名無しさん 2016/05/08(日) 15:51:54.04 ID:9bDfj0Se0
激ハメ爺無理だわー。
あんな、羅生門で死体喰ってた婆にチンコ付けたみたいな爺。951 薔薇と百合の名無しさん 2016/05/08(日) 16:56:04.55 ID:kwxk5erf0
凄い表現力ね
あたしには無理だわ
「羅生門」「死体」「ババア」というキーワードから、このレスを書きこんだ人物が念頭においていたのは大正時代の文豪「芥川龍之介」による小説『羅生門』ではないかと思われる。
しかし、一点の問題がある。確かにこの作品『羅生門』には、京都の朱雀大路にあった門「羅生門」に打ち棄てられた死人を取り扱う老婆が登場する。
だが、この老婆は作中において死体を喰ったりはしていない。
老婆が死人に対して行っていた所業として描写されているのは、「死人の髪を抜いていた」ということのみである。その目的については、「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘(かずら)にしようと思うたのじゃ。」とのことである。
上記の青空文庫へのリンクでは、この『羅生門』の全文を読めるので読んだことがない方は確認されたい。
「髪を抜いていた」だけの老婆が「死体喰ってるババア」呼ばわりされているという、この食い違いの原因については様々な説が挙げられている。
まず、羅生門自体が高校現代国語の教科書に取り上げられることが多く、「興味はないがとりあえず国語の授業で読んだ」と、うろ覚えを発生させやすい下地ができている作品である。
その上で本作中で老婆は死人の髪を抜くという行為について、
「この死人の女は、干魚だと偽って干した蛇肉を売っていた女である。だが、せねば飢え死にをするので仕方なくしていたことであろうから、自分はそれを悪いこととは思わない」
と前置きをした上で、
「自分が死人の髪を抜くのも、せねば飢え死にをするので仕方なくすることであり、悪いことではない」
という自己弁護を行う。そして主人公もその主張に感化されてしまうのだ。
このストーリー展開から、「悪いことであってもせねば飢えて死ぬ」という主張は読者の印象の中に強く残る。
そして上記のレスをした人物の中では、「死体」「悪いことであってもせねば飢えて死ぬ」という2つの印象から、自然と記憶が「飢え死にを避けるためにやむなく死体を喰う老婆」という、実際の『羅生門』の内容よりもさらにハードなものへと書き換えられてしまったのではないだろうか。
さらに言えば、もしかすると「蛇肉を売る女」のくだりから、「本来口にしないような奇怪な肉を食べるような内容だった」という印象も残され、それが影響した可能性もあるかもしれない。
また、羅生門以外の創作物に目を向けると「紫ババァ」「白粉婆」など老婆の姿をした妖怪は古今数多く、その中には「山姥」など人の血肉を喰らうとされる者も少なくない。羅生門の老婆自身は超常的な存在として描かれているわけではなく、むしろ人間じみた弱弱しい小悪党としての描写が目立つが、状況の異常さから妖怪的な印象を受けてもおかしくはない。そうした朧気な記憶が既存の「人を喰らう老婆の妖怪」のイメージと重なれば、「羅生門に住み着き人を喰らう老婆」という虚構の鬼婆が発生しても不思議ではないのである。
この小説『羅生門』は、平安時代の説話集『今昔物語集』の一節を原作としている。具体的には今昔物語集の巻第二十九にある「羅城門登上層見死人盗人語第十八」(第十八話 羅城門の上層に登りて死人を見たる盗人の語)である。もちろん小説とする際にこの原作からは翻案されており、そのままのストーリーではない。
であるならば、「原作の方では死体を喰っていたのでは?」「この書き込み主も原作の方について書きこんだのでは?」という期待も持てよう。
しかし原文を確認してみても、「老婆が髪を抜いていた死人は老婆の主である」「主人公は最初から盗人である」「せねば飢えて死ぬ悪事は悪事か、などといったテーマは語られない」など、小説と異なる点は多数あるものの、結局この原作でも老婆が死人に行っていたことは「髪を抜いていた」というだけである。
ただしこういった古い説話には、よく似ているが細部が異なるものが存在していることもある。あまり世に知られていないが老婆が死人を喰っていたとする異説が存在していて、上記のレスをした人物はそちらの方になじみがあったという可能性も否定はできない。
15 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/13(木) 10:01:18.356 ID:YYlUfzUV0
お前らほんと行間読めないよな
あれは髪を抜いてるという言い訳をしたんであって
死体を食ってないとは言ってないからな
上記はインターネット掲示板「5ちゃんねる」内、この「羅生門で死体喰ってるババア」という言葉について語り合うスレッドでの一書き込みである。[2]
一見、煽り混じりのこじつけ的な暴論でしかないが、しかし一考するきっかけにはなる。『羅生門』に登場する老婆が死体を口にしていた、あるいはそうでなくとも、これから口にするという可能性はないだろうか。
老婆は、作中で自ら「こうせねば飢えて死ぬ」と明言している。さらに、『羅生門』のストーリーの終盤を考えれば、今後この老婆はさらに困窮するであろう。さて、周囲にある肉と言えば……。
詐欺や悪徳商法などで、誰かに損害を与えつつ暴利を貪るさまを「被害者を喰いものにしている」と比喩的に表現することがある。
老婆が行っていた「死人の髪を抜いてカツラを作ることで明日の糧を得る」という行為について、義憤混じりに「死人を喰いものにしている」と喩えて「死体喰ってるババア」と表現したのかもしれない。
原作において老婆は
「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘(かずら)にしようと思うたのじゃ。」
などと、「髪を抜く」というセンシティブなキーワードを2回も口に出している。
こういった話題を論じることについて、繊細な人々からは
8 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/13(木) 09:57:37.660 ID:dsUKH+kT0
髪の毛抜くとかやめてよ13 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/13(木) 09:59:32.270 ID:7aoDgGTRp
| | 彡⌒ミ \ (´・ω・`)また髪の話してる (| |):::: (γ /::::::: し \::: \
といったように、精神的苦痛を受けたという苦情も挙がっている。[3]
こういった誰かを傷つけかねない話題を避けるために、あえて「死体喰ってるババア」という不正確な表現を選んだとも考えられる。情に篤い。
2015年7月から9月に放映されていたアニメ『がっこうぐらし!』の、7月30日放送回である第4話「えんそく」では、老婆のゾンビが人を襲って喰らっているらしきシーンが存在した。
また、このアニメはテレビ放映から数時間遅れでニコニコ動画でも各話一週間の期間限定無料配信がなされていた。そして配信開始後早くも数時間以内には、既にその老婆ゾンビシーンにて「羅生門」というコメントが書きこまれており、他のコメントもその「羅生門」というコメントに大いにウケていたことがコメントの過去ログにて確認できるのである。
そしてこの動画の配信日2015年7月31日は上記「昔 お世話になった中年ビデオを語る会」のスレッドに問題のレスが書きこまれた2015年9月16日よりも一か月と少し前でしかなく、時期も割と近い。
問題のレスを書きこんだ人物もこの動画を閲覧し、そのために「『羅生門』では老婆が死人を喰っていた」という偽りの記憶を刷り込まれてしまっていたのかもしれない。
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最終更新:2024/11/30(土) 19:00
最終更新:2024/11/30(土) 18:00
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