カニバリズム 単語

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カニバリズム

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カニバリズム(cannibalism)とは、人を食す行為・習慣のこと。
人肉食。

スペイン語の「Canibal(カニバル」。「Canib」は西インド原住民カリブ族を意味し、大航海時代スペイン人航士はカリブ族が人食い人種であると信じていた事に由来する。
祭(肉祭)を意味する「Carnivalカーニバル」とは由来および意味が違うので混同しないこと。 

英語圏ではラテン語の「人間anthropo-)」+「食べる(-phagy)」の合成語であるアントロポファジーanthropophagy)とも呼ばれるが、あまり一般的ではない。

生物学分野では、同種内での捕食行為、すなわち「共食い」のことをす用語でもある。

概要

ネタバレ注意 この項は、残酷な内容を多く含んでおります。
自己責任にてご覧ください。
苦手な方はページを閉じてお戻りください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人を食す行為」といっても、その的はさまざまである。

文明に染まった現代人は、こうした野蛮な習を感覚的に嫌い、軽蔑し、怒りを示す。「食人は、近親相姦殺しと並ぶ人類の三大タブーである」というのが一般的返答であろう。

しかし全ての世界、全ての時代において、食人が強く禁じられていたわけではない。現在共同体と同じように人間的な社会であっても、人食いを認め命じる社会も当たり前にあった。食人の歴史は原始時代から現在までど途切れることなく続いている。

しかも人食いを行っていた民族は、多くの場合ほかの民族より文化的、産業的、商業的にはるかに進んでいたケースが多いことが分かっている。
1871年にボローニャで開かれた「食人と考古学に関する会議」の最終報告では

食人は文化が発展する際に見られる一過程であり、つまり必要なものである。言い換えれば、もともとは果実を常食としていた人間が、その進歩によって人肉食いへと至ることは必然であり、その後宗教思想や人義的考えを純化させたことから、このおぞましい慣習を葬り去る結果になった。

とまとめている。

散発的な人食いを含まない、人食い人種の人口は19世紀初頭には一億人以上いたと見られるが、20世紀中にその数は半数以下にまで落ち込んだ。これは文明社会の広がりと関連している。
中世から近年では、飢饉遭難戦争など、食料が枯渇した状態での緊急的な行為として食人が行われた記録が残っている。例を挙げれば、モアイで有名なイースター島にも、飢餓による人肉食の跡がある。

動機による分類

「なぜ人類が同胞を食べねばならないのか」という疑問に対する答えは様々であり、重複していることもある。

  • 食料
    栄養物としての食人。この説は189世紀に大きく広まり、食人習の起は「豆類とキャッサバしか食べない民族が、高タンパク質を必要としたことから始まった」とされた。
    アメリカベストセラーになった「幻想と食人」では「アステカ人が戦争し、生贄をささげ、同時に食人へ至った理由はタンパク質の不足からである」としているが、統計学の専門は「アステカ人が一年に2万5千人を犠牲にしても、1人につきハンバーガーが1つできるかできないか、といった程度である」と反論している。
    ちなみにキリスト教儀式において「パンイエスワインイエスの血として……」という語が見られるが、これもある意味、食人を想起させる。
  • 美食
    単なる食料よりもおぞましい行為として、この説に嫌悪感を強める人は多い。キャプテンクックは「南半球旅行」において「美食としての食人は、食用の畜や獲物が十分にある、もっとも恵まれた地域でしばしば行われている。飢えやなんらかの栄養不足が原因とすることはできない」と記している。
  • 復讐
    憎むべき相手を食らい、消化し、排する事で復讐を果たすというもの。人食い人種の中でもっとも広く見られる動機である。しかし宗教的理由も絡んでおり、ブラジルのトゥピナンバ族が敵部族を食べるのは、復讐に加え「以前食べられた仲間を取り戻すため」といった理由がある。
  • 軽蔑
    復讐バリエーションのひとつ。近隣部族に恐怖を抱かせて接近を阻み、領地を守るため。ニューギニアのいくつかの部族は敵を食い尽くすことによって相手への軽蔑が最高度に達していることを知らしめるという。
  • 強化
    復讐バリエーションのひとつ。味方のを討つと同時に、敵の力、技、勇気を自分のものとするのが狙い。これには「殺した敵を讃える」という意味もあり、戦った時に優れた敵は食料とされる一方、たいしたことのない敵は単に殺したり、拷問にかけたり、奴隷にされたりした。
  • の消去
    復讐バリエーションのひとつ。「死は意図を明かさないままをさまよう恐るべき行為」のため、そのを排除するために体を食べなければならない、というもの。インディアンのグアヤキ族は「食べてしまわなければ、は生者のそばにとどまり、攻撃したり、体内に入り込んだりして死をもたらそうとする」と考えていた。
  • 栄誉
    栄誉をたたえて生贄にささげた人物を食べることで、首長を「祖先」の地位にまで高めるための食人。ソロモン諸島のファタレガ族など。犠牲となるのは他集団から捕えてきた人間である。儀式的要素があるため、制約が非常に多いのが特徴。
  • 治療
    には治療的な価値をもつとされることが多い。これに限っては、文明社会にも共通する習である。古くより人体からとった部位が特効として流通してきたのがその左である。西欧では出産時に排出されたへその緒や胎盤が不妊として用いられた。シャルル二世エリザベート・バートリらは人の血液による療法を行った。ミイラをすりつぶした粉末が、万能薬として日本を含む各地でもてはやされたこともある。日本の「○○を煎じて飲ませたい」 という言葉もこれの類例と見れる。 

  • 飢えや暴力の末に……という見方が多い食人だが、そうではない場合も往々にある。長老崇拝的には「死んだ両するなら、おぞましい腐敗や死を食べるを遠ざけるために食べるべき」とされた。性的な情なら、キスや甘噛みなどは「するあまり相手を取り込みたい」という感情の初期発露であるといわれる。いわゆる「吸血鬼の吸血行為」はこれの発展形と考えられ、作品によっては性的快楽駕するとされている。 
  • 断罪
    裁きとしての食人は、宗教迷信から解放された概念である。これは共同体全員死刑宣告の最終段階に参加し(一種の民主主義)、受刑者の引き起こした混乱と損共同体全員で取り戻す理由で行われる。タタール人、アフリカアシャンティ族、アンガス族、スマトラのバタク族などが行った。 

まずい肉とうまい肉

白人白人を食べる場合をのぞけば、一般に白人は人食い人種から敬遠される
アドループ原住民は、サントドミンゴで5人の白人を捕まえて以来、キリスト教徒の白人を断固拒否するようになった。「いつもとは違うものを食べて吐き気を催したので、二度と触ろうともしない」という。プエルトリコでも「何人か食べたあとで重い病気にかかった。以来、殺しても手を付けずにそこに放っておく」という報告がある。
しかし白人にもいろいろあるようで、アンティル諸ラテンアメリカでは、フランス人のスペイン人のよりおいしいと考えられた。「スペイン人は食べる前に三日間浸して柔らかくしない限り、固くて食えたものではない」という。

1963年ポリネシアの人食い人種は「アメリカ人はまずくて食べられない」と語った。UPI通信はアメリカ人がまずいのはDDTの乱用のせいで、その脂肪性化していると発信。
この新事実イギリス上院は奮い立ち、イギリスの食人者に中毒性はないのか」と疑問を投げかけた。調の結果「アメリカ人の人体におけるDDTの割合は100万分の11に達しているが、イギリス人は100万分の2である」と分かった。
結論:イギリス人はアメリカ人にべれば、まだ食べられる

食べて満足できるのは女性だけ」という考えは多くの人食い人種に見られる。
一方でマルキ・ド・サドは自身の作品の中で「女のは、あらゆる動物のメスと同様、男のより劣る」と記している。ただし実際にサドが食人をしたかどうかは不明で、文学や紀行文で得た知識に由来した著述である可性には留意されたし。
ただしこれと同意の人食い人種もそれなりの数がおり、中には絶対に女のを食べないという部族もいる。ソロモン諸島の部族には、肥満した男しか食べず、太らせるために去勢する部族が多い。

これ以外の感想や調理方法については問題になりそうなので割愛

食べられた有名人

極限状態における食人

極限状態における食人で、有名な話をひとつ。

1972年10月13日、フェアチャイルF272機はアルゼンチンのメンドサ空港を出発し、チリのサンティアゴへ向かっていた。乗客は47人。うち15人はモンテビデオラグビーチームの選手だった。
飛行機アンデス山脈の上を飛んでいる時に、乱気流とエアポケットにつかまり山脈の中へ不時着。高度400mの岩と氷だけの世界に生き残ったのは、幸か不幸か乗客の半数以上である28人だった。

彼らはすぐ助けが来るはずと思っていたものの、事だった線機から3日に捜索が打ち切られたことを知って絶望した。
機内の食糧はすぐに底をつき、その後、怪や衰弱によって4人が死亡。16日には崩に襲われてさらに8人が死んだ。生き残った16人は、練り歯磨き、座席の食物繊維すら食べた。

食べられそうなものがくなると、彼らは死んだ仲間を食べることを論議しはじめた。
する彼らは、ためらう気持ちを消し去るために「神の思し召し」という考えを強調した。

これは餐だ。キリスト々を生活へ導くために、死んで自分の体を与えた。
々の友人たちは、々の体を生かすために、その体を与えてくれたのだ。

最後には自己保存本が嫌悪感に勝り、生存者たちは死者の片を口にすることを決めた。
彼らは火をおこし、焼くことで嫌悪感を乗り越えようとしたが、医学を学んでいた者が「タンパク質は40度以上で破壊されるから、焼いてしまうと栄養価を失う。栄養を摂るなら生で食べるべきだ」とした。

気温と気条件が和らぐと、体力のある2名が代表して助けをめに行くことになった。
彼らはもっとも栄養のある肝臓を食べて出発し、10日間の苦難の行程を経てチリ飼いに保護される。連絡を受け、生存全員が救出されたのは12月21日のことだった。
当初彼らはを食べて生き延びたと救助隊員に語ったが、隊員のひとりが切断された遺体を見て「コンドルの仕業か?」と尋ねると、生存者らは潔く自分たちの仕業と認めた。

生還した16人に対しては、い段階でカトリックの関係者らが「彼らの行為は罪に当たらない」と発表、世間の動揺を抑えた。また死亡者の遺族らの多くが、生存者に対して理解や許容を示したという。
一方で報道熱し、ショッキング写真や内容で煽り気味に報道するメディアも少なくなかった。

後にアンデス餐」「生きてこそ」など、複数回映画化されている。

日本での食人

中国では盛んに食人が行われていたため、古来日本にも食人文化が伝来。しかし食人をタブー視する潮が強く、表立った食人の記録及び伝承は少ない。

最古の食人は、567年に成立した『日本書紀』に記されている。
それによると、天皇が即位して28年に「、飢えては人相食む」(大飢饉が発生し、飢えをぐために人を食らった)とある。しかし、そんな不名誉な事件をわざわざ記録するとは思えないというのが現在の見方であり、信憑性はそれほど高くないともいう。その後、しばらく食人の記録は見受けられなかった。

次に記録上に出てきたのは戦国時代であった。
1581年の鳥取攻め(鳥取の飢え殺し)、伊勢攻めで篭側の兵糧が尽きた為、最終的に食人に走ったという記録が残されている。
戦国が終わり江戸時代になっても、食人は続いた。気の寒冷化により飢饉が発生し、特に東北で食人が横行。1695年、1755年、1783年、1833年、1866年大凶作の年であり、かなりの人間が食べられた。餓死した死体を女二人で4日に渡って食べ続けたなど、生々しい記録が残る。

近代では、大東亜戦争に食人の記録が残っている。
連合軍の通商破壊により、1944年頃にはニューギニア方面の第18軍が全に孤立。補給が途絶え、食糧が得られなくなった現地の将兵は飢餓状態に陥った。
ニューギニア豊かなジャングルだが食用となるものは少なく、さしづ砂漠であった。を捕まえてご馳走にしたり、靴用のを使って雑草天ぷらを作るなどぐましい努力をしていたが、やがてそれも使えなくなった……となれば人肉食に走るのが常である。
第18軍内では味方の兵を殺して死を貪る人肉食が横行、時には原住民も食らった。特に太った新兵がっ先に狙われた。味方を食い殺す戦場狂気紀の悪化を懸念した第18軍部は、「敵兵の死は食っても良いが、味方の兵を食った者は厳罰に処す」と発布。実際に仲間を食らった4名を処刑しているが、それでも人肉食は止まらなかった。
その地獄っぷりは「ジャワの極楽ビルマ地獄、死んでも帰れぬニューギニア」と言われた。

その他、日本国内で有名な食人事件といえば「ひかりごけ事件」が有名だろう。
昭和史で一裁判で裁かれた食人事件で、戦後武田がこの事件を題材とした小説ひかりごけ」を執筆、ベストセラーになった事で飛躍的に知名度が増した。

こうした背景とは別に、過去には治療を的とし、として人体の一部が重されていた。
江戸時代の役人、御様御用(おためしごよう)こと山田浅右衛門は代々の生業として、処刑された罪人の死体を用いたを販売。これが労咳に効くとして人気を博し、山田大な収入を得ていた。
こうした因習は明治になっても色濃く残っており、明治3年(1870年)には政府が「刑余ノ骸ヲ以テヲ試ミ及人胆霊天蓋等密売ヲ厳禁スと禁を出している。しかし死体の取引は細々と続き、その後もたびたび事件として報じられた。

カニバリズムの生として、死者への哀惜を表すためにそのを口にするという習はあった。
たとえば沖縄県西表島では亡くなった人の頭、背、手、足など割って食べたという。もちろん現在れている。
またではないものの、火葬後のを食べる「食み(ほねはみ)」を行う地域もあった。俳優の勝新太郎若山三郎の死後、その欠片を口にしている。

代表的食人犯

政治的理由でデマを流された可能性がある人物

シリアルキラー

なお「食人行為」それ自体は、自身で相手を殺しない限り、日本刑法でいうところの「死体損壊罪」などに当たる。

創作ジャンルにおける食人

前述した武田ひかりごけ」や大「野火」など、カニバリズムを題材とした文学は多い。
絵画ではゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」、ジェリコーの「メデューズ号の筏」など、神話や実際の事件に基づいた作品が知られている。

フィクションにおいては、グロテスクな内容であることもあって、基本的にはテレビなどの映像媒体では扱われることは少ない。扱われるにしても字面のみの場合が大半で、少なくともR-15定になる。

映画化もされた有名小説羊たちの沈黙シリーズの登場人物であるハンニバル・レクターは、人の臓器などを食す嗜好の持で、作中で「人食いハンニバルハンニバル・ザ・カニバル)」の呼び名を持つ。
映画版では表現がややソフトになっているので、作品の雰囲気を楽しみたい方は小説版をお勧めする。
......ところで前頭葉のソテーって美味いんだろうか?

小説漫画などが映像化される際、人肉食に該当する部分が変更されることがある。
例えば週刊少年ジャンプ掲載の「ONE PIECE」においては、サンジ料理長ゼフの回想で(カニバリズムに該当するかは微妙だが)漫画ではゼフが「自分の足を食べた」という表現があったが、アニメ版では「からサンジを助けた際に体に足をはさんだ」とに変更されている。

人肉食を扱った作品が問題視されて大きな非難を呼ぶこともある。
例としては、週刊ヤングサンデーに連載されていたさやかの「マイナス」というサイコスリラ漫画である。「主人公教師が教え子とともに子供を殺して食う話」を掲載したところ、非難のが上がって掲載号の回収にまで追い込まれた。
また、週刊少年マガジンに連載されたジョージ秋山漫画作品「アシュラ」の場合、飢餓による心の荒と人肉食を描いたところ、大きく問題視する報道がなされ、掲載号を有書籍定した地方自治体もあった。

創作ジャンルにおける食人としては、いわゆる「ゾンビもの」がその嚆矢であろうが、これはもはや一ジャンルといって等しく、ゾンビ関連の用語で検索したほうがよいと思われる。

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