のふたりの登場人物である。当記事では2.について記載する。
外伝「星を砕く者」に登場する、ゴールデンバウム朝銀河帝国の医学博士。細い身体を持つ宮廷医師で、皇帝フリードリヒ4世の侍医団の一員であり、宮廷の貴人のあいだを遊泳して個人的な利益を得ていた。
特に皇帝の寵姫シュザンナ・フォン・ベーネミュンデ侯爵夫人に接近しており、アンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人に対する陰謀に関係した。
グレーザーがいつから宮廷医師の地位にあったかは不明だが、シュザンナが皇帝フリードリヒ4世の後宮に入った帝国暦471年ごろにはすでに宮廷にいたようである。やがて彼は宮廷人として自己の利益を得るため、寵妃としてのふんだんな権力と富を持つシュザンナに接近した。
やがて帝国暦486年当時になると、シュザンナは皇帝の寵愛を失って久しく、それを奪ったアンネローゼを強く嫉視していた。この年の春、グレーザーは、アンネローゼの弟ラインハルトによるローエングラム伯爵家継承の報に憎悪をたぎらせたシュザンナが思いついた、宮廷医の立場でアンネローゼに皇帝以外の男の子供を身ごもらせることで失墜させる、という策の実行を命じられる。
しかし、こうしたシュザンナの策謀へのグレーザーの関与は、ラインハルトの側に感づかれることとなる。ラインハルトは自己防衛のためすでにシュザンナの動向を監視しており、オスカー・フォン・ロイエンタールがその女性関係から伝え聞いた、グレーザーがしばしばシュザンナの居館を訪問するという話と合わせて、何らかの取引があることが察せられたからである。
彼らは、シュザンナの行動を抑止するために先制攻撃を試みた。グレーザーのもとには、彼をシュザンナから引き離すため「汝の罪はすべてわが掌の上にあり」と書かれた差出人不明の手紙が送られた。また宮廷には、「シュザンナが不義の懐妊」という不名誉な噂が流されることとなる。
シュザンナは噂に対して憤ったが、差出人不明の手紙を不安視し、彼女の斜陽をとうに悟ってもいたグレーザーは、本来の策の実行困難を理由にむしろアンネローゼの宮廷追放を優先するよう提案して受け入れられる。だが、この後すぐ状況は大きく変転した。国務尚書クラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵から隠居を勧告され激昂したシュザンナが、直截にアンネローゼの暗殺未遂を起こしたのである。
関与は明白、失脚は必至のシュザンナに、グレーザーが殉じる理由はなかった。彼はシュザンナの罪業を証言するのみならず、証拠として録音テープを提出するなど積極的に協力し、自らの立場の保全を図った。結局、彼の聴取にあたったリヒテンラーデ侯の補佐官ワイツの報告により、シュザンナは死を賜ることとなったが、グレーザー自身の以後の動向は不明である。
なお、石黒監督版OVAでは外伝「白銀の谷」および石黒監督版オリジナル外伝「決闘者」にも登場し、いくつかのラインハルト暗殺陰謀に関与しているが、原作中では、ラインハルト暗殺を幾度も試みた、というシュザンナの「殺人計画の告白」に対して「指摘せず、(中略)記憶の図書館に登録するにとどめた」とあり、そうした陰謀までは関知していなかった可能性が高い。
グレーザーがシュザンナに仕えていたのは個人的な忠誠心ではなく、あくまで彼女の権力と富が目的であった。彼が権力と富のほかにシュザンナのとりえとみなすのは、金には糸目をつけない、吝嗇ではない、という点だけで、彼女の要求を実現する費用を水増し報告して利益をあげようなどと考えていたが、実際に手に入れた金銭的利益は(彼自身の認識では)不満足な程度だったようである。
それ以外の部分、特にシュザンナの高飛車で癇の強い人となりにはうんざりしきっていた。その激発に慣れてこそいたが「これが快感に転じる時はおそらく永久にくるまい」とのことで、べつにそのケはなかったらしい。むしろ負の感情をさんざんにぶつけられる立場としての精神衛生上の必要、いわばうっぷんばらし代わりに、彼女自身に気づかせぬ程度に意趣返しすることもあった。
また、シュザンナに関する不名誉な噂が流布する陰には彼女を敵視する者が存在する、ということをまったく察せられない鈍感さや、もっとも有益な味方であるはずのグレーザーを下僕同然に扱ってしまう度しがたい態度についてもすでにあきれはて、つきあいつづけることに疲れを感じていた。
宮廷での政治的遊泳を通して強大な権力を望むようなタイプではなかったが、このたぐいの宮中遊泳を生業とするものに当然のこととして、常に「風のより強く吹く方向」を見定めようとする、世渡りと保身、そして打算の能力には長けていた。
シュザンナがラインハルトの抹殺を相談したときには、現実的に困難と説明して諦めさせている。またアンネローゼを懐妊させる策謀についても、相手となる男の劣悪さに関して逐一注文の多いシュザンナに対し、「そこまで悪くそろっている男」を探すには相応に時間と費用がかかると条件をつけ、ちゃっかりと金銭的利益と時間の猶予を得ていた。
こうしたやり口は、たとえアンネローゼを排してもシュザンナに皇帝の寵愛が戻ることはありえない、という判断のうえ、策謀の露見時に自分が巻き込まれないことを優先したものだった。この時点で、グレーザーはアンネローゼ・ラインハルト側に接近できないか考えており、直後に国務尚書とラインハルトに届いた「宮中のG夫人にたいしB夫人が害意をいだくなり。心せられよ」という無署名の書簡も、差出人こそ明らかにされていないものの、状況からみて彼によるの密告と考えるのが自然であろう。
のちにシュザンナが不名誉な噂に憤ったときには、すでにラインハルトから脅迫状が届いていたこともあって、アンネローゼへの「下賤な攻撃」にこれ以上協力する気はなくなっていた。シュザンナに面と向かってはアンネローゼを追い落とすための策を饒舌に語りながらも、自分の直接関与する策謀は白紙に戻し、危険な協力関係から自分がそれとなくフェードアウトできるような誘導にも成功している。
彼の保身能力の高さは、シュザンナがアンネローゼたちに向けた殺意について、おそらく自己防衛の一環としてその音声をひそかに録音していた点からも垣間見える。また、作中では結局最後までどんな陰謀もついに実行には移しておらず、(この手の陰謀に関しては法の保護がかなり怪しい帝国とはいえ)法的にも自身に致命的な行動には出ずに終わったことも、見逃してはならないポイントといえよう。
掲示板
9 ななしのよっしん
2021/06/19(土) 19:42:38 ID: MOL2w+Obsz
ところで、医者じゃない方のグレーザーって、フェザーン進駐時に同盟の高等弁務官事務所を制圧した陸戦隊の指揮官で良かったんだっけ。
10 ななしのよっしん
2021/06/19(土) 20:18:10 ID: izRlU4tnA5
>>9
それで合ってますね
11 ななしのよっしん
2021/06/30(水) 11:26:08 ID: AD5OTR+u/W
(どのみちコンピュータのデータは消去済だったとはいえ)弁務官事務所に重砲撃ち込んで火災発生させた人だね。まあ、帝国軍全体が最重要は航路局、ついで自治領主府で、ヘンスローごときどうでもいいってスタンスだけど。
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最終更新:2024/04/25(木) 17:00
最終更新:2024/04/25(木) 17:00
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