はい三橋貴明の明るい経済教室、今日は第21回目になります。今日は国富のまとめということで、国富の意義と意味について改めて考えてみたいと思います。
これ前回も使いましたけど(0:30~)、日本の国富の推移です。上からこの紫が対外純資産、外国に貸している金が借りている金より多いという話ですが、対外純資産、赤い部分が有形非生産資産、この中には大きな土地・資源・漁場などが入っています。ここバブル期にぶわーっと有形非生産資産が増えている、これバブルであって名目的な価格が上がっていたからです。その後減っているのは土地がなくなっていったわけじゃなくて、価格がなくなっている。まさにバブル崩壊ですけど、と言う話です。
で、一番下、これが一番重要です「生産資産」。生産資産というのは、人間が働いて、投資をして、そして作り上げてきた生産資産です。でですね、よくよく考えてみて欲しいんですけども、皆さんが家の扉を開けて外に出たら、目に入るのは基本的に全て生産資産ですね。道路・電柱・建物。田舎の方は有形非生産資産がパッと目に入るんでしょうけど、都会、あるいは都市に住んでいる人は基本的に生産資産の上で暮らしているんですね。
その生産資産、すなわち投資をおろそかにした国が繁栄した例はありません。一時的に生産資産が十分で、繁栄していてもメンテナンスとか、あるいは新たな生産資産を構築するとか、バージョンアップとか、やんなくちゃいけません。なんでかというと、土地はなくなりません。漁場とか資源は摂っていくとなくなるんだろうけど、土地は基本的に戦争に負けでもしない限りなくなりません。「無くなりそうじゃねぇか日本は」だから戦争に負けつつあるんでしょうかね、多分ね。その話は長くなるので置いといて、生産資産というのは、なくなっちゃうんですよ。
一番典型的なのは橋。日本には15万以上の長さ14mの橋があるんですね。そのうちの既に170以上が通行止めです。人間も通れません。何で?「予算不足だ」といってメンテナンスをしないからですね。コンクリートの寿命とか鋼材の劣化・腐食によって橋というものは、橋だけじゃないんだけど、コンクリート建造物とかは、大体寿命50年でなくなっちゃうんです。それのメンテナンスをおろそかにしていたら私たちで困るかもしれないけど、もっと困るのは将来世代。将来世代ががんばって所得を稼ごうとしたときに、生産資産がボロボロです。基盤がボロボロです。働けません。橋が落ちている、向こう側に工場がある、なんてことになったら工場に製品作っても出荷できないんですよ。そもそも資材の搬入もできないので工場の操業も出来ません。働く場所ありません。というような話になってしまうんですね。
こういうような当たり前のことをおろそかにして繁栄した国ってないんですけども、現在日本はまさにその当たり前のことを言うと「バラマキだー」とか「土建業者を儲けさせるだけだー」という批判を朝日新聞なんかが集中的に浴びせてくるんだけど、じゃあ君たち、朝日新聞のビルだって土建業者が作ったんでしょ?あなたが歩いて買い物に行く時ってその道路って建設事業者が工事してくれたからあるんでしょ?さらにどうやって通勤してんのか知らないけど、鉄道に乗ってるんだったらそれだって投資のおかげなので、そういうのをおろそかにしてそれで日本がこのまま成長できるはずが無いんだけれど、彼らは「成長しない」と思っているんでたぶんそれでいいんでしょう。彼らの頭の中には「日本は成長しない、もう所得が増えて豊かになることは無い」という前提になっていますので、そういうことを平気に口に出来るんでしょうけども、彼らの貧乏になるのは勝手なんで全然かまわないんだけれども「私たちは嫌です」と、そういうことを明確に打ち出す必要があります。
私先日ミャンマー言ってきたんですけども、あそこは生産資産が不十分です。鉄道は無い、公共交通機関無い。道路は穴だらけ。高速道路たゆたってるんですね、怖いんですけど。それで電力は不安定、しょっちゅう停電します。信号機も止まります。大渋滞です。更に通信網も完備してません。要はインフラが駄目なんです。そこでですね「さぁ企業、投資して所得稼げ」無理ですから。ということで基盤を整えるってのがミャンマーの段階ですけど、別にミャンマーを悪く言ってるわけじゃなくてこの後の成長性が高いよといってるだけなんだけど、やることやればですよ。日本はこのままほうっておくとミャンマーのほうに戻っていくことになりかねないんですよ。私たちはもしかしたら大丈夫かもしれないけど、子・孫その先の日本国民が所得を稼ごうとしても稼げない、すなわち「貧乏になる」という話になってしまいます。
野田さんは国の借金について「将来世代のツケの先送り」だとか言ってますけど、そうじゃないんですよ。お金なんて日銀が発行すればいくらでもあります。インフレってのが当然あるんだけどね。でも、生産資産が一度壊れたら戻すの大変なんですから。日本人が働いて、時間かけてやらなくちゃいけないということになっちゃいますので、まさにその生産資産の崩壊を放っておく事こそが「将来世代のツケの先送り」ですよ野田さん、という話なんですね。
これハッキリ言って政権変えないとどうにもならないと思うので、総選挙近いと思いますのでぜひ皆さんそういう観点で生産資産、あるいは国富、「国の富ってなんぞや」という点からも投票をどうするかっていうのを考えていただければと思います。ありがとうございました。
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