秋月型駆逐艦(あきづきがたくちくかん)とは、大日本帝国海軍の一等駆逐艦である。計画時の名称から「乙型駆逐艦」とも言われる。
概要
秋月型駆逐艦は、脅威となりつつあった航空戦に対し艦隊防空を担う「直衛艦」として計画された艦級である。しかし、1番艦「秋月」が就役したのは主力空母4隻を喪ったミッドウェー海戦の直後であり、数も揃わなかったことから本来の目的である主力艦隊の防空戦に参加した艦は少ない。(マリアナ沖海戦の「秋月」、エンガノ岬沖海戦の「秋月・初月・若月」、坊ノ岬沖海戦の「涼月・冬月」)
一方で、水雷戦隊各隊では迫りくる敵基地航空隊等の脅威に対し有効な能力を発揮できない旗艦・軽巡洋艦にかわり本級を臨時旗艦として用いた例も多く、2番艦「照月」、5番艦「新月」、7番艦「霜月」はそれぞれ二水戦・三水戦・31戦隊旗艦として最期を迎えている。
第二次世界大戦では当初期待された対空戦よりも艦隊戦で活躍した艦も多く、エンガノ岬沖海戦で奮闘した「初月」はその代表と言える。一方で大勢が決した後に完成した艦も多く、「春月」以降は大きな戦いに参加することなく終戦を迎え、一部は特別輸送艦任務を終えたあと連合国側に賠償艦として譲渡された。
計12隻が建造され、半数の6隻が沈没、残り6隻が終戦まで生き残った。最も短命だったのが5番艦の新月で竣工から約3ヶ月で沈没した。秋月型は駆逐艦らしからぬ大型艦であったため最低でも1年以上の建造時間を要したが、戦時簡易型である花月のみ約10ヶ月で竣工している。
船体
全長が134.2mと駆逐艦としては大型である。集合煙突の採用とあいまって、米軍側は夕張型軽巡洋艦(133.99m)を量産化していると誤認したと言われる(次に小型の軽巡洋艦は天龍型の142.65m)。夕張と比べて兵装が軽い分を燃料タンク容量に割り振った結果、航続距離の長大化に成功している。
兵装
主砲は従来型(甲型駆逐艦)の50口径三年式12.7cm連装砲ではなく本級独自の65口径九八式10cm連装高角砲を4基8門を装備。口径こそ従来の12.7cmより細いが長口径により初速・射程に優れ、毎分19発発射可能であり、九四式高射装置による統制照準により艦隊防空の要となることが期待された。ただし、連合国側がレーダー測距可能であったのに対し、本高射装置は射撃用レーダーを持たず、対空目標の追尾や距離測定は光学観測によっており、この分野では日本側が不利であった。
本来、本級は対空直掩を主任務とする新艦種「直衛艦」として計画されており、雷装は装備されない予定であった。しかし、軍令部が艦隊戦も考慮して魚雷装備を求めたため、四連装魚雷発射管を1基装備。艦種も「駆逐艦」(乙型)となった。
対空戦闘を主任務としていたため当初より機銃は25mm連装機銃2挺が搭載されたが、対空能力を増強するため、次第に増強されていった。
初期に就役した秋月、照月、涼月には電探は装備されていなかったが、秋月への21号電探追加を皮切りに初月以降は21号電探を最初から装備した。後に21号1基及び13号1基が標準となったが、レイテ沖海戦前後には21号電探を撤去し、跡に13号1基及び22号1基(13号2基・22号1基)を装備した。
機関
ロ号艦本式缶(ボイラー)3基と艦本式タービン2基2軸の組み合わせにより52000馬力を発生し、最高速力33ノット。
特型駆逐艦の出力は50000馬力であり、船体の肥大化に対して馬力はほぼ変わらず、結果として速力低下につながっている。
分類方法
秋月型駆逐艦は戦中に就役したため、後になるほど工期短縮を図るため線形の変更や鋼材の変更が行われた。このため、帝国海軍艦艇類別等級表ではすべて「秋月型」であるが、便宜上以下のような類別方法がある。ここではその一例を示す。
秋月型 | 秋月から霜月までの7隻。 |
冬月型 | 冬月から夏月までの4隻。戦時艦船急速建造計画で建造。 船体各部形状の簡略化・艦橋の大型化が特徴である。 |
満月型 | 満月(未成)及び花月の2隻。戦時艦船急速建造計画で建造。(分類としては5076号艦まで) 船形の更なる簡略化(曲線構造の廃止)及び使用鋼材の変更、四式水中探信儀の採用などが計画された。ただし、花月は冬月型と大差ないものであるとして冬月型に含む場合もある。 |
未成艦 | 戦時艦船急速建造計画での建造中止3隻、第五次海軍軍備拡張計画改定(改⑤計画)23隻(全艦建造中止)。特に5077号艦(「北風」)以降は改秋月型とも。 |
性能諸元
排水量 | 基準:2700t 公試:3470t 満載:3878t |
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全長 | 134.2m |
全幅 | 11.6m |
吃水 | 4.15m |
機関 | ロ号艦本式缶3基 艦本式タービン2基2軸 52000馬力 |
速力 | 33.0kt |
航続距離 | 18ktで8000海里 |
燃料 | 重油:1080t |
乗員 | 315名 |
兵装 | 65口径九八式10cm連装高角砲4基・九四式高射装置1基 25mm連装機銃2基→三連装5基・単装13基(推定)・単装取付座7基、13mm単装機銃4基 61cm4連装魚雷発射管1基(九三式魚雷8本) 九四式爆雷投射器2基 爆雷投下台6基 九五式爆雷✕54 二一号電探1基*→二一号電探1基・一三号電探電探1基→一三号電探2基・二二号電探1基 |
*二一号電探:秋月・照月・涼月は追加装備。以降の艦は初期装備
同型艦
建造が実現した各艦の艦名は「月」で終わる語で命名されたことから通称「月」型とも。
第四次海軍軍備拡張計画(④計画・マル4計画)で6隻(同時期の駆逐艦では陽炎型4隻、夕雲型11隻+2隻(信濃・大和型4番艦建造費欺瞞用)、島風、阿賀野型軽巡洋艦4隻、大淀型軽巡洋艦1隻+1隻(仁淀:未起工)、大鳳等)、続く戦時艦船急速建造計画(マル急計画。正しくは◯の中に急)で10隻(うち4隻未成)が計画された。
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関連コミュニティ
関連項目
大日本帝国海軍 一等駆逐艦 艦級一覧 | |
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戦間期 | 海風型 - 浦風型 - 磯風型 - 江風型 |
峯風型 - 神風型[II] -睦月型 -吹雪型(特型) -初春型 - 白露型-朝潮型 - 陽炎型(甲型) | |
戦中 | 夕雲型(甲型) -秋月型(乙型) -島風(丙型) -松型(丁型) |
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