南葛SC新スタジアム問題単語

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南葛SC新スタジアム問題（なんかつエスシーしんスタジアムもんだい）とは、東京都葛飾区が計画しているサッカー専用スタジアムの建設計画である。

当初は区立奥戸総合スポーツセンターの改修が検討されていたが、2023年 2月にJR 新小岩駅近くの私有地を取得し、東京23区内初となるJ1基準のスタジアムを建設する計画へと大幅に拡大された。

人気サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一がオーナーを務めるサッカークラブ「南葛SC」のJリーグ昇格を見据えた計画だが、用地取得費と建設費を合わせた総事業費が約500億円規模にのぼることから、その計画の是非をめぐり大きな議論を呼んでいる。

概要

東京都葛飾区に本拠地を置く南葛SCは、『キャプテン翼』に登場するチームと同名のサッカークラブであり、作者の高橋陽一自身がオーナーを務めている。将来的なJリーグ入りを目指しており、2025年シーズンは関東サッカーリーグ1部（Jリーグから見て4部相当）に所属している。

Jリーグ参入にはリーグ基準を満たすスタジアムが必須となるため、葛飾区は当初、区立奥戸総合スポーツセンターの改修を検討していた。しかし、計画は大幅に変更・拡大され、JR 新小岩駅近くの私学共済事業団が所有する土地（約6.8ヘクタール）を取得し、J1基準を満たす大規模なサッカー専用スタジアムを新設する方針が示された。

区は『キャプテン翼』の知名度を活かした「キャプテン翼ミュージアム」の併設なども検討しており、本計画をスポーツ振興や地域経済活性化の起爆剤としたい考え。青木克徳区長は「スポーツを通して街づくりを大きく進めるという意味では、十分に価値のある事業」と述べている。

計画の詳細

場所: JR 新小岩駅近く（日本私立学校振興・共済事業団所有の総合運動場跡地）
施設概要: サッカー専用スタジアム（J1基準）
- 観客席：約15,000席規模
- 「キャプテン翼ミュージアム」などの併設を検討
総事業費: 約480億～500億円（概算）
- 用地取得費: 約350億円
- 建設コスト: 約130億～150億円
スケジュール: 建設時期は未定

主な論点（課題・問題点）

計画地変更と規模拡大に伴い、事業費が当初の100億円規模から約500億円規模へと急増。財政負担の大きさや費用対効果に対する懸念がより一層強まっている。

1. 巨額の公費負担と事業の妥当性

総事業費約500億円という金額は、区の年間予算（一般会計）の約2割に匹敵する。関東1部リーグに所属する一民間クラブを支援し、地域活性化を図るという目的のために、これほど巨額の公費を投じることの是非が、最も根源的な論点として問われている。建設後の高額な維持管理費も区の長期的な財政を圧迫する要因となる。

2. 事業の費用対効果とリスク

区は地域経済の活性化を期待するが、500億円という投資に見合う効果が得られるかは極めて不透明である。南葛SCがJFL、J3、J2、J1へと順調に昇格し、常に高い観客動員を維持できるという楽観的な見通しが前提となっているが、その実現性は保証されていない。計画通りに進まなかった場合、スタジアムが巨額の「負の遺産」と化すリスクが強く指摘されている。

3. 区民の合意形成

事業費の急増を受け、区民や区議会からは「スタジアムよりも福祉、教育、防災など他に優先すべきことがある」との声がさらに強まっている。区長は「区民に説明しながら理解を得たい」としているが、これほどの巨大プロジェクトを進めるにあたり、十分な合意形成が図れるかが最大の焦点となっている。

都内他クラブとの比較

本計画の特異性は、同じく都内でJリーグ入りとスタジアム建設を目指す他のクラブと比較するとより鮮明になる。

クリアソン新宿の事例
- 新宿区をホームタウンとし、JFLに所属するクリアソン新宿も、将来的なスタジアム建設構想を掲げている。
- しかし、そのアプローチは大きく異なり、まずは民間主導での資金調達やパートナー企業との連携を模索している段階である。行政に対して巨額の初期投資を求めるのではなく、持続可能な事業モデルの構築を優先している。
- 南葛SCのケースのように、自治体が先行して約500億円もの公費を投じる計画は、他のクラブの事例と比較しても異例の規模と進め方であると言える。