TEEとは、かつてヨーロッパで運行されていた国際特急列車である。正式名称は「Trans Europ Express」。日本語では「ヨーロッパ横断特急」などと呼ばれた。
概要
- TEEの構想
1953年にオランダ国鉄総裁デン・ホランダー氏が当時急速に発展した航空機に対抗すべく、ビジネス客をターゲットとした全車一等車のディーゼルカーによる国際特急走らせる構想を立てた。 - 運行開始
1956年の時刻表会議で1957年のダイヤ改正で運行開始することが決まり、12往復の列車が設定された。左は使用車両が所属する国鉄。 フランス:イル・ド・フランス、モン・スニ、アルバレート 西ドイツ:ヘルヴェディア、パリ・ルール、ライン・マイン、サフィール オランダ:エトワール・デュ・ノール、エーデルヴァイス、オワゾ・ブルー イタリア:メディオラヌム、リーグレ これまでの特急と違って割高な専用の料金が設定され、割引運賃の設定もなかった。 ただし、ユーレイルパスは使用可能であった。パスには指定料金も含まれている。 - 国内TEE
本来、TEEは国際列車の種別だったが、1965年以降は国内便も設定されるようになった。 そのきっかけは西ドイツ国鉄が運行する国際特急「ラインゴルト」をTEEに昇格させようとした際に一部区間でラインゴルトと併結運転を行い、車内設備も同一の国内特急「ラインプファイル」もTEEに昇格させるべきだと主張した事である。 先に述べたようにTEEには他の特急よりも割高な専用の料金が設定されており、ラインゴルトのみを昇格させると併結区間で同一の車内設備なのに料金に差がついてしまうからであった。 (日本で例えればのぞみとひかりを併結するようなものと言えばピンとくるかもしれない。) この議論に便乗してフランス国鉄(SNCF)はラインゴルトと同等の豪華な設備を持つ自慢の国内特急「ル・ミストラル」もTEEにすべきだと主張した。 議論の結果、TEEの諸条件を全て満たしていれば国内便でもTEEを名乗ってもOKとなり、1965年のダイヤ改正でラインプファイルとル・ミストラルの他、ドイツの国内特急「ブラウエル・エンツィアン」も晴れてTEEの仲間入りを果たすのであった。 その後、豪華な設備を有する国内特急を多く抱えるフランスとイタリアでは次々と国内TEEを増やしていったのは言うまでもない。 - ピークと衰退
TEE網の拡大は順調に進み、1970年代に入ると国際便30往復、国内便15往復の合計45往復に達した。 しかし、国際列車の利用者も大衆化し、エコノミー客の需要が増えるのと引き替えに、全車一等車のTEEは利用が衰え始めた。 そして利用者減少による廃止もしくは二等車を含む列車への格下げが相次いだ。 - TEE廃止とユーロシティへの移行
1987年のダイヤ改正で国際インターシティの新種別としてユーロシティが創設された。 ユーロシティは一等車と二等車の両方を連結するのが原則とされていたが、TEEから格下げされた列車の一部は全車一等車のままとされた。 1987年の改正でラインゴルトが廃止され、国際TEEはゴッタルドのみとなるが、1988年にはゴッタルドがユーロシティへ格下げされた事により国際TEEは全廃された。 フランスに残っていた国内TEEも1991年に全廃され、TEEは完全に姿を消した。 - 束の間の復活
1993年、パリ~ブリュッセル間のユーロシティ3往復が再びTEEを名乗るようになった。ついでに1往復増便。 ただし二等車も連結しており、実態はユーロシティと変わらない。ユーロシティのネームブランド陳腐化が目立っていたのが理由らしい。 ユーロシティから再びTEEとされた列車の中には改称と同時に全車一等車から一等車と二等車の両方連結に改められた便もあった。これってあべこべじゃね? 本来、TEEは全車一等車、ユーロシティは一等車と二等車の両方連結なのだが、これは全く正反対のケースであった。 この復活列車もTGVに置き換えられる形で1995年に廃止された。
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関連項目
- VT11.5型気動車 ヘルヴェディアなどで使用。メディオラヌムを最後にTEEから撤退。
- 103型電気機関車(DB)≠西の103に延命工事 ラインゴルトなどで使用。
- ET403型電車 インターシティ用車両だが国内TEEにも使われたことがある。後のルフトハンザ・エアポートエキスプレス。
- ユーロシティ 後継種別。基本的に一等車と二等車の両方を連結。
- TGV
- ICE
- 近鉄50000系しまかぜ 全車一等車で組まれた点で共通
- ななつ星in九州 全車一等車で組まれた点で共通
- Kraftwerk 「Trans-Europe Express(邦題:ヨーロッパ特急)」というアルバムを出している。
- メジロモンスニー - 1980年生まれの競走馬。TEEの一つ「モン・スニ」を名前の由来としていた。
補足
メディオラヌムは当初はイタリア国鉄車使用だったが、非冷房であることを西ドイツ国鉄に槍玉にあげられ、廃止案も浮上したが、冷房完備のVT11.5型気動車に置き換えることで廃止は免れた。
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