エーレンベルクとは (エーレンベルクとは) [単語記事]

エーレンベルク（Ehr enberg）とは、

「銀河英雄伝説」の登場人物。
「アーマード・コア」シリーズに登場する兵器。衛星破壊砲。

である。この記事では1.について説明する。

CV.佐藤正治（石黒監督版OVA）、中庸助→飯塚昭三（Die Neue These）。

概要

銀河帝国軍人、元帥。フリードリヒ4世朝末期からエルウィン・ヨーゼフ2世朝初期にかけての軍務尚書。門閥貴族の出身で、白い髭をたくわえ旧式の片眼鏡をかけた初老の保守主義者。

同じく三長官の地位にあるグレゴール・フォン・ミュッケンベルガーより年長、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトと半世紀の年齢差があるとされることから、リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼンと近い年の生まれと考えられる。

だれもが一度は憧れる「片眼鏡をわざとらしく光らせる」能力を持つ。

経歴

フリードリヒ4世時代、少なくとも帝国暦486年にはすでに帝国軍三長官の一柱たる軍務尚書の座にあり、クロプシュトック侯討伐のさなかに発生したウォルフガング・ミッターマイヤー少将とブラウンシュヴァイク家とをめぐる一連の事件の対処にあたっている。

帝国暦487年、難攻不落のイゼルローン要塞が陥落すると、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥、統帥本部総長シュタインホフ元帥とともに責任をとって帝国宰相代理クラウス・フォン・リヒテンラーデに辞表を提出。慰留も拒否する。しかし、後任と目された宇宙艦隊副司令長官ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥がいずれの地位も望まず、逆に「三長官をお咎めなきよう」ととりなしたことで、エーレンベルクもそのまま続投することとなった。

むろん代償が無かったわけではなく、一年のあいだ俸給を返上し戦没者救済年金にあてる処分とともに、エーレンベルクらはラインハルトに借りを作るかたちとなり、またイゼルローンからの逃亡者として糾弾されていたパウル・フォン・オーベルシュタイン大佐の免責とローエングラム元帥府への転属を承諾せざるを得なかった。

さらに、俸給返上の一年もいまだ経たぬうちの帝国暦488年4月、エーレンベルクはリップシュタット戦役勃発を控えて帝都中枢を抑えんとしたローエングラム元帥の命令により、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将の手で拘束の憂き目にあうことになる（オーディン制圧）。その後の処遇は不明。軍務尚書職は三長官を兼任することとなったローエングラム元帥が継いだ。

能力・人格

現状維持を不可侵の信条とする厳格な保守主義者であり、オーディン制圧の際には銃を持って執務室に乱入してきたビッテンフェルトを「なりあがりの青二才が、誰の許可をえてはいってきたか。なにをもとめてのことか知らぬが、まもるべき礼節の心得もないとみえるな」と痛烈に糾弾した。だが、その返答によって自身とその守ってきた体制の無力さが顕にされた際には肩を落とし、またイゼルローン陥落時に辞表を提出し慰留を固辞するなどといった軍人としての潔さも持ち合わせている。

門閥貴族の出身で、その考え方は貴族としての枠を越えることはなかったが、それでも職業軍人として、あるいは公人としての良識をわきまえていた。事実、前述したミッターマイヤーの件では、軍務尚書としての立場と責任のもとに、ミッターマイヤーの行動（非戦闘員に暴行を加えた貴族将校の即時射殺）はあくまで軍規に則った行為であって非難することはできないとはっきり宣言している。

しかし彼の政治的能力の高さを示すのは、その後の事件処理の方法である。

第一に、射殺された貴族の親族でありミッターマイヤーを糾弾する最先鋒であるオットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵に対しては、その詰問に呑まれることなく、逆にクロプシュトック侯討伐の総司令官だった公が青年貴族の暴走を止められなかったことを暗に非難しながら「軍法会議は法と理をもって裁くところで、感情によって処断するところではありませんでな」と牽制。軍務尚書として公を戦勝の功で帝国元帥に推薦する権利を持ち合わせていたこともあわさり、公的には”なにもなかった”ことにし、遺族にはそれとない報復の機会を与える、という形で納得させた。

第二に、その「報復の機会」を与えるため、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥にラインハルトを次の戦いに参加させることを提案。先頭部隊の指揮を任せ、麾下の指揮官も当人に選ばせることとし、渋るミュッケンベルガーを「”金髪の孺子”は叛乱軍が勝手に始末してくれる。そうならず善戦してもそれはそれでミュッケンベルガーの面目が立つ」と説得する。

そして第三に、いつのまにやらミッターマイヤーの代理人に収まっていたラインハルト・フォン・ミューゼル大将を呼び出し、事件の解決法として、ミッターマイヤーの「軍の和と協調を乱した」罪をラインハルトの下での戦功によってあがなわせるよう指示して「報復の機会」を作り出す。さらに最高機密である次の出征の計画をあえて明かすことでラインハルトを納得させ、事態を収拾した。

これらの処理は、エーレンベルクの権限の及ぶ範囲ではごく平穏に完結しながらも、あわよくば戦場でラインハルト、ミッターマイヤー、そして復讐者までが露と消えることすら期待した悪辣なものであり、もしラインハルトが戦死した場合の責任を押し付けられたことに後に気付いたミュッケンベルガーに「あのくたばりぞこない……」と悪罵されるほどであった。