ジャガー（ギター）とは (ジャガーとは) [単語記事]

フェンダー・ジャガー（Fender Jaguar）とは、フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツが開発したエレクトリックギターである。

概要

テレキャスター、ストラトキャスター、ジャズマスター等のギターを開発してきたフェンダー社がフラグシップモデルとして1962年に発売した。

ボディシェイプは先立って発売されたジャズマスターと似た形で、搭載されたトレモロ機構（＝フローティング・トレモロ）やトーンのプリセット回路なども共通しているが、よく見るとジャズマスターよりもボディが小さめに設計されていたりトーンやボリュームノブの形状が違っていたりスイッチ類の数が多くなっていたりブリッジにミュート機構が増設されていたり、と相違点が多い。
スイッチ類は右ホーン側にピックアップのオン／オフ、低音域のカット（ローカット）が出来るスライド・スイッチ、左ホーン側にはジャズマスターと同じくプリセット回路操作用のスイッチが設置されている。
ピックアップ部分にはギザギザの金属製のヨークが付いていてピックアップが拾ってしまうノイズを軽減できるようになっている。
またネックはフェンダー社の他のギターより短いショートスケール／22フレット仕様となっている。（因みに同様のショートスケールのギターにはムスタング等がある。）

変遷

開発に当たっては先発のジャズマスターが元々の意（＝ジャズ・ギタリスト向け）に反してサーフロック・シーンでもて囃された、という経緯があったためにメイン・ターゲットを改めてそちらに据えることとなった。音はジャズマスターよりもエッジが立った歯切れの良い音が出せるようになり、ネーミングもサーフィン／ホットロッドを意識した「ジャガー（"Jaguar"）」とした。思惑通り発売するやザ・ビーチ・ボーイズを始め多くのサーフィン系ミュージシャン達に愛用された。

しかしトレモロ機構がボディに振動を伝えづらい構造になっていて、サステインが他のギターに比べて乏しくなっている為発売後に人気が出だしたブルース・ロックやハード・ロック等のサステインを必要とする音楽には合わない、ブリッジの構造上激しく弾くと弦落ち（ブリッジから弦が外れる）がおきてしまったり、弦高が落ちてくるとブリッジ部分のネジが緩み弦の高さが低くなり弦を押えた時にピックアップに当たってしまいピッキングの際にビリビリと音が鳴ってしまう、等の理由で時代のニーズに合わないギターと見なされ、1975年には製造中止となってしまった。
その後も一部のミュージシャンが使用していたり、80年代後半にフェンダージャパンで再販されたりしたが、ヘヴィメタルが台等していた80年代には「ヘヴィメタルを演奏するにはパワーが足りない」、「激しい演奏には向かない」等の理由で、人気が再燃する事は無かった。

ところが90年代に入ると、オルタナティブミュージックのブームが到来。その立役者であるNIRVANAのVo&Gtであるカート・コバーンが改造した状態のジャガーを使用していた事でついに人気が再燃、グランジ／オルタナ・シーンではジャガーが大人気機種となった。

その後、2000年にフェンダー USAがラインナップにジャガーを復帰させ様々なジャンルで使用されるようになった。現在ではUSA、JAPAN、MEXICO、Squierのいずれからも入手できるようになっている。

カート・コバーン仕様

カートのジャガーは出荷時の物と違い、ブリッジをギブソン社のレスポール等に搭載されているチューン・O・マチックに、ピックアップもリア／フロント共にシングルからハムバッカーに交換し各々のボリュームをコントロールする為のノブ、トーン・コントロールのノブの計3つを搭載した状態で使用していた。

この改造により、かなり高出力なサウンドを奏でる事が出来、更に弦落ちを防ぐ事に成功（但し、これはカート自身が改造したわけではなく、この状態のジャガーが新聞の広告で売りに出されているのを見て購入したとの事）。
その後、カート仕様のジャガーが流行し大手楽器店がその仕様に改造して発売したり、自分で工房に持っていって改造して使いだす人も多かった模様。中には、ハムバッカーのピックアップをマウントするために、自分でボディをノミで削って搭載しようとしたツワモノもいたらしい。