この記事は第721回今週のオススメ記事に選ばれました! よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。 |
スプレもんの呪いとは、NHKの『アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト』において、大分工業高等専門学校に長らく掛けられていた呪縛である。
以下、アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテストを「高専ロボコン」、大分工業高等専門学校を「大分高専」と記載する。
スプレもんとは、1991年の高専ロボコン第4回大会『ホットタワー』において、大分高専が製作したロボットの名称である。
※ちなみにこの第4回大会は、後の高専ロボコンの運営方式や競技方式の基礎を作ったエポックメイキングな大会である。全国大会の前に地区予選が開始されるようになったのがこの大会からであり、両国国技館が全国大会の開催地になったのもこの大会からである。
『ホットタワー』の競技ルールを簡単に説明すると、以下の通りである。
つまり、たとえ箱を多く積み上げたとしても、敵チームにさらにその上に箱を積まれればポイントが奪われるという、箱積みの技術だけでなく相手との駆け引きや戦略も重要となる競技であった。
このルールを受け、大分高専が作り上げたロボットがスプレもんである。「一番上の箱の色のチームにポイントが入る」というルールを達成するために、「積み上げられた敵チームの箱にペンキを掛け、自チームの色に塗り替える」という奇抜を通り越したコンセプトを持ったロボットである。ただし、実際には実機はスプレーではなく、箱の周囲からチョロチョロとペンキを垂れ流す構造であった。
「そんなの反則じゃないのか」と思われるかもしれないが、スプレもんは問題なく九州地区予選に出場した。なぜなら「台座の上に箱以外のものを持ち出してはいけない」というルールはなかったからだ。実際「自分たちの積んだ箱の上にカバーやアームを置き保護する」「開始直後に素早く相手方の台座を子機ロボットで覆い、積めなくする」(たとえその上から強引に箱を置かれても、台座や下の箱に接触していなければ「積んだ」とはみなされない)というコンセプトのロボットは数多かった。ただ、台座の上に蓋やアームではなく塗料を撒き散らすという発想は、誰も想定できなかったという所であろう。
戦績は残念ながらアッサリと九州地区大会初戦敗退に終わったものの、青い箱の上から大量の赤いペンキが流れ落ち、フィールド上に赤い海が広がっていく衝撃的な映像は、NHKの電波を通じて日本全国のお茶の間に発信されていった。
「いかに箱を積むか」ということが求められた『ホットタワー』において、箱を積むことなど全く考えず、「一番上の箱が自チームの色ならポイント獲得」というルールを達成するため箱の色を塗り替えるという発想は、実際の大会では残念ながら、ただフィールドにペンキを撒き散らしただけに終わった。
しかし、ある意味で奇抜すぎる試みであり、またある意味で直球ド真ん中でもある試みは、後のロボコン参加者たちには驚きと笑いと要らぬ閃きを与え、NHK番組製作スタッフには「フィールドを汚すロボは後片付けがマズい」という番組構成上重要な経験を与えた。そしてこの『ホットタワー』以降、高専ロボコンの公式ルールに「フィールドを汚損・破損する行為は全面的に禁止」という項目が追加された。
要するにスプレもんは、箱の色は塗り替えられなかったが、大会のルールを塗り替えたのである。
地区予選が始まったこの1991年の第4回大会以降、2004年の第17回大会に至るまで大分高専が全国大会に駒を進めることは無かった。これは、後発の高専である沖縄高専以外では全国最遅の記録であり、大分高専は沖縄高専が創設されるまでは「全国大会に出場していない唯一の高専」という不名誉な称号も持っていた。(その沖縄高専も創設3年目で全国大会出場を決めていたりするのだが、それはまた別の話である。)
また、かつては地区大会準優勝という好成績を残したこともあったが(1995年の第8回大会『ドリームタワー』)、その時は他校のロボットとの兼ね合いで全国大会進出校に選抜されないという不運もあった。
これを揶揄して「スプレもんの呪い」と、まことしやかに囁かれた。
長らくくすぶっていた大分高専であったが、2005年大会『大運動会』にて大分高専の「高床式ぱっちん号」が全国大会初出場を決める。さらに、2007年大会『風林火山 ロボット騎馬戦』にて「ローリングぱっちんGO!」が全国大会でアイデア賞を受賞する。以降も2008年大会にて「祭だぱっちん号」、2010年大会にて「お御輿ぱっちんGO」などぱっちん号シリーズが相次いで全国大会進出を果たし、全国大会常連校と呼んでも差し支えないほどの活躍を見せる。
そして2016年大会『ロボット・ニューフロンティア』の九州沖縄地区大会で、「烈覇」が大分高専初の地区大会優勝を果たして全国大会に進出する。そして、その後に開催された全国大会にて準優勝を果たした。奇しくも『ロボット・ニューフロンティア』は、『ホットタワー』と同じく箱を積み上げる競技であった。
こうして箱によって掛けられた呪いは、
25年の時を超えて同じく箱によって打ち破られたのである。
2017年、高専ロボコンは「第30回大会」という記念年を迎えた。それを記念して、高専ロボコン本大会とは別に、いくつかの特別企画が開催された。その中の1つが、『「ROBOCON 30th」お祝いロボット』である。内容は、「お祝いロボットを用いて、指定されたロボコン30thロゴを描いてください。」というものであった。(ちなみに、この『描く』というフレーズが出た時点で一部のロボコンファンはざわざわしていたとか・・・。)
その後ロボコン運営事務局より、お題に対してのFAQ(よくある質問と回答)が公開された。先に言っておくと、FAQの内容が以下のようにユーモラスな言い回しであった。
Q : 『描く』とはどういうことですか?
A : 哲学的な質問にはお答えできません。
Q : 海外に行き、ロゴを描く用紙へロボットに●●を●●●て描くことは問題ありませんか?
(原文ママ)
A : ロゴの描き方は自由ですが、武器の使用はやめてください。
その中で、以下のようなQ&Aがあった。
自由です。スプレもんの呪いに注意しつつ、
自由です。スプレもんの呪いに注意しつつ、
自由です。スプレもんの呪いに注意しつつ、
自由です。スプレもんの呪いに注意しつつ、
30年目のロボコン。
ついに公式がスプレもんの呪いについて言及したのである。
そして、その後開催された第30回大会『大江戸ロボット忍法帳』にて、大分高専の「マリンビート」が高専ロボコン最高の栄誉とされるロボコン大賞を受賞した。もちろん、大分高専として初の受賞である。
NHKのロボコン番組には、番組公式ツイッターアカウントが存在する。(上記のロボコン運営事務局とは別である。)実は2011年に、そのアカウントで「スプレもん」について言及されたことがある。
というツイートに返信する形で、公式アカウントは以下の文章をツイートしている。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/nhk_robocon/status/71420873176911872
たとえ呪いがなくなったとしても、スプレもんの残した伝説はみんなの心に今も明るく色付いている。
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最終更新:2024/12/12(木) 08:00
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