デメニギス(学名:Macropinna microstoma)とは、ニギス目[1]デメニギス科に属する深海魚。当記事では他のデメニギス科の魚も紹介する。
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デメニギス | |
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目 | ニギス目 |
科 | デメニギス科 |
学名 | Macropinna microstoma |
英名 | Barreleye |
太平洋北部の亜寒帯海域の水深400~800m程[2]に生息し、日本では岩手県以北の沖合に分布している。体長は10~15cm程[3]。漢字で書くと出目似鱚・出目似義須。鱚とは類縁関係は遠い。
最大の特徴は、名前通りの筒状に飛び出た緑色の巨大な眼(管状眼)とそれを覆う頭部の透明なドームだろう。航空機のコックピットを連想させる透明なドームの存在は、2004年に初めてデメニギスの泳ぐ姿が捉えられた時に判明した[4]。このドームはとても壊れやすく、それまで捕獲されていた個体では傷つき原形を留めていなかったのである。以前からデメニギスの頭部には不自然な段差があることが知られていたが、それは眼を収納するスペースだったのだ。ドームの中は液体で満たされている。
なお、口の近くにあるのは眼ではなく鼻孔である(ナーレ[5]と呼ばれている[6])。
デメニギスはクダクラゲの触手を食べることが知られており(クラゲが捕まえていた餌ごと横取りしていると考えられている)、透明なドームはクラゲの毒針から眼を保護する役割があると考えられている。
普段はその眼で上方の獲物を探しながら海中をゆっくり漂っていると思われる。
ちなみに、上を向いている管状眼だが、回転させ前に傾けることができる。おかげで摂食の際に獲物をちゃんと見ることができるのである。また、緑色の眼は海面からの日光を遮ることで獲物のカウンターイルミネーションを見破ることができると考えられている。便利。
また、眼の前方には網膜が透明化した「窓」(ダイバティキュラ[7]と呼ばれている)があり、そこからも光を感じ取ることで死角をカバーしているとされる[8]。これがより特殊化したものが後述の「四つ目」のデメニギスの仲間たちである。
他の特徴としては真っ黒な体、姿勢を安定させるための比較的大きな胸鰭・腹鰭などが挙げられる。口はおちょぼ口であり、クダクラゲの触手をついばむにはこれで十分なのだろう。
英名の「Barreleye」(バーレルアイ)も直訳すると「樽目」であり、大きな眼を表している。
上述した泳ぐデメニギスの映像は日本のネットメディアやテレビ番組でも度々取り上げられており、奇妙な姿をした深海魚の代表例として扱われることが多い。
深海魚の例に漏れず生態にはまだ謎が多く、今後の新発見や研究が待たれる。
ニコニコ動画上では有志によってMMDモデルが配布されている。
「Spookfish」(スプークフィッシュ)とは直訳すると「幽霊魚」。細長く透明な体のデメニギス科魚類は「Barreleye」(バーレルアイ)ではなくスプークフィッシュと呼ばれることが多い。
『ファイナルファンタジーXIV』のスプークフィッシュはどう見ても細長くはないが…そもそもFF14のスプークフィッシュは淡水魚である。
デメニギス科全体を指すときはどちらでも良い。
また軟骨魚類のギンザメの仲間もスプークフィッシュと呼ばれる。
魚類のデータベース・FishBaseによるとデメニギス科には2019年8月時点で9属21種が認められている[9]。揃って管状眼を持っており、中には目の側面の「窓」(ダイバティキュラ)が特殊化して四つ目になっている種も。生体の映像記録が存在しない種ばかりなので、デメニギスと同じようなドーム状の構造等があるかはよく分からないものが多い。
ここでは一部を紹介する。
世界中の海の水深400~2,500m程から見つかっている。体長15cm程に達する。イギリスのBBC制作の海洋ドキュメンタリー『ブルー・プラネット』で生きている映像が取り上げられた。
映像を見る限り頭部のドーム状の構造はデメニギスのように顕著ではない。また、よりスリムな体型をしている。眼はデメニギスとは異なり前を向いている。上を向くよう回転できるかは不明。
腸内に発光バクテリアが共生しており、光を腹部全体に届けることでカウンターイルミネーションを行っているとされる[10]。このことから、デメニギスより下のヒカリデメニギスの仲間に近縁らしい。
英名は「Binocular fish」(バイノキュラーフィッシュ)で、直訳すると「双眼鏡魚」。
ヒカリデメニギスの標本の画像付きツイートがあります。 苦手な方は注意してください。 |
熱帯や亜熱帯の海の水深4,750mまでから見つかっている。体長8cm程に達する。クロデメニギス同様腸内に発光バクテリアを共生させているが、この仲間は体の腹面にまるで靴底やアイロンのような構造(ソール[11])があり、発光バクテリアの光が構造全体に行き渡るようになっている。この発光する構造を使ってカウンターイルミネーションを行っていると思われる。構造は頭や尾をカバーするように腹部からはみ出ているのでかなり奇妙である。
2016年には千葉県立中央博物館の研究グループにより、ヒカリデメニギス属(学名:Monacoa)の新種ハイイロヒカリデメニギス(学名:M. griseus)とクロヒカリデメニギス(学名:M. niger)が新たに記載された[12][13]。この時の論文では、発光によって仲間同士でコミュニケーションを取るのではないかと考察されている。また、同じ論文でOpisthoproctus属からヒカリデメニギス属が分離された。
上向きの管状眼を持つが、デメニギスのように眼を前に傾けられるかは不明。
英名は「Mirrorbelly」(ミロベリー)で、以前は日本でもこの名称が使われていた。また、ニシソールデメニギスという名前で紹介されている事もあるが正式な和名ではない。
バーレルアイの標本の画像付きツイートがあります。 苦手な方は注意してください。 |
熱帯の海の水深300~800mから発見されている。体長10.5cm程まで成長する。ヒカリデメニギス属に近縁で腹部に同じような靴底構造と発光能力を持っている。
英語表記はそのまま「Barreleye」で、デメニギスと同じ。ホソソールデメニギスという名前で紹介されている事があるが正式な和名ではない。
ブラウンスナウトスプークフィッシュの標本の画像付きツイートがあります。 苦手な方は注意してください。 |
熱帯・温帯の海の水深500~2,400m程で見つかるが、メキシコ湾ではもっと浅い場所にいる。体長18cm程に達する。2008年に初めて生きた個体が採取された[14]。体は細長く、色も透明に近い。
英語表記は「Brownsnout spookfish」。
他のデメニギスの仲間と同様に上向きの管状眼を持っているが、その窓ことダイバティキュラは特殊化しており四つ目と呼んでもいい代物になっている。メインの上向きの眼の側面に反射板が重なって出来た構造(凹面鏡になっている)があり、こちらからも像を結び光を感じ取ることができるのである。側面や下からの獲物や天敵の生物発光に気付くために有効であると考えられている。元々は1つの眼だったため、網膜は共通している。屈折と反射の両方の視覚を使う脊椎動物という点でもとても珍しい存在とされている。
標準和名が付いている同じ属の種に、ヒナデメニギスやキタヒナデメニギス(学名:D. parini)[15]がいる。
…とされてきたが、2020年の論文でヒナデメニギスは属が変更されDuolentops minusculaとなった[16]。
ヨツメニギスの標本の画像付きツイートがあります。 苦手な方は注意してください。 |
熱帯の海の775mまでの水深で見つかっている。体長16cm程に達する。
名前通り、この種も眼の下方のダイバティキュラが像を結ぶ鏡になっており四つ目である。画像検索の際はこちらの方が四つ目であることが分かりやすいかもしれない。ブラウンスナウトスプークフィッシュと同様に屈折と反射の両方の視覚を使うが、いくつか違いもある模様。この眼の構造は双方で別々に進化したと考えられている。
この種も肛門付近の腸内に発光バクテリアを住まわせているが、腹部全体を照らすことは無く肛門だけが光る。
英名は「Glasshead barreleye」(グラスヘッドバーレルアイ)。
太平洋北部や、アゾレス諸島近くの大西洋東部などの水深400~800mから発見されている。デメニギス科最大級の種であり、細長い体形で体長50cm以上に達する。
この種も2つに分かれた眼を備えており、四つ目である。メインの管状眼の横にもう1つレンズ(水晶体)が飛び出しており丁度逆向きの光を捉えられるようになっている。これはブラウンスナウトスプークフィッシュやヨツメニギスの眼の構造とは異なっており、これまた独自に進化したらしい。
メインの眼の向きからすると、斜め上を向いた姿勢で獲物を待ち構えるのではないかと考察されている[17]。
英名は槍のような体型から「Javelin spookfish」(ジャベリンスプークフィッシュ)。
熱帯・温帯の海の水深960~1,200mから報告がある。体長24cm程に達する。とても長い胸鰭が特徴。スプークフィッシュと呼ばれる種の一つ。
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最終更新:2024/05/13(月) 11:00
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