トマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus、1766〜1834)とは、イギリスの経済学者である。
オックスフォード出身で啓蒙思想の影響を受けた人物。親交のあった者にヒュームやルソーがいる。マルサスの業績は代表作「人口論」に集約される。世界史で学んだ人も多いだろう。自らの思想を実践した訳ではないだろうが、子孫は残せなかった。
1798年にマルサスが匿名で出版した人口論は、その余りのショッキングな内容に大変な反響と反発を引き起こした。
マルサスによれば、
人口は幾何級的に増える。つまり1、2、4、8、16、32、64、〜と増える。
食料生産は算術的に増える。 つまり1、2、3、4、5、6、7、8、〜と増える。
ここまで見れば何が起こるかは誰にでも予想が出来る。すなわち、
これだけでもかなり衝撃的な内容である。当時の反発も凄まじかったのも頷ける。
その為マルサスは、第二版で「人口が増えれば、それにつれて子供を作ろうとする者が少なくなる。よって人口増加のダメージは減る」という道徳抑制論を唱え、主張を柔らかくした。
しかし、深く考えていくとこの道徳抑制論は厳しい倫理的問題を抱えていることが分かる。
食料が不足していくにつれて、上記の3つのような問題が起きるのは明らかであるが、実際にそれらの問題は社会全体を平等に与えられるのではなく、主に貧困層を中心に苦しめる。
道徳抑制論では「それ故に貧困層は子づくりを控える」という理屈を唱えているが、ならば政府が貧困層に金銭的支援をすることは間違っているということになってしまう。なぜならば、もし政府が貧困層にお金を渡してしまえば彼らは生活に余裕ができて子供を作ってしまうからだ。
例えば日本がアフリカの国に募金をしたとする。そうなるとその国はそのお金で薬や食料を買う事によって、餓死者や病死者を減らすことができるが、しかしそれは同時に国力を超えた人口を抱える事を意味する。過剰人口は上述した問題を誘発し、結果的として貧困は解決しない。アフリカの貧困を解決するには結局は住民たち自身で人口調整をしつつ徐々に発展していくしかない。
この論理は今日でも、安易な食料援助、経済援助は無駄だと言う主張を支えている。
1971年にローマクラブが発表した「成長の限界」は、このままの成長率が続けば資源・エネルギーの枯渇、人口爆発、食料不足、環境汚染の急激によって21世紀の初めに「大破局(カタストロフィー)」が起きると主張した。
それを受け、世界全体で「ゼロ成長論」、「反成長論」ブームが起きた。しかしゼロ成長は社会を不況感に包む。(→Pの悪魔とUの悪魔)結果的に国際社会はゼロ成長を捨て去り、新自由主義に傾倒していった。つまり、人類同士での資源の奪い合いが本格化したのだ。
マルサスとローマクラブ両方に共通する論理的欠点に、人類の技術的成長を無視している点にある。よくある笑い話に「新聞は50年前から『あと10年で石油は枯渇する』と言っている」というものがある。なぜ石油が枯渇しないのかといえば、その10年間に石油発見技術や採掘技術が発展し得られる石油が増え続けている為である。
しかしそれでも尚、技術進歩より人口増加の方が大きいのは想像に難くない。しかもこの技術進歩が純粋に人口問題を解決してくれるかというとそうでもなく、むしろ逆に相対的に人口増加を促進する効果を持つともされている。
というのは19世紀の経済学者マルクスによって経済発展が進むにつれて社会的に必要となる人間の数が減っていくことが指摘されているのだ。
例えば今まで人間がやっていた仕事をロボットがやるようになってしまえばそこで働いていた人達は失業してしまう。生産技術が上がり今まで10人必要だった仕事を2人でできるようになれば8人が失業することになる。全体的な人の数は変わっていなくても社会に必要な人数が減っても人口増加を同じ効果を持つのだ。この人余り状態をマルサスの言う人口増加を絶対的過剰人口と対比して相対的過剰人口と呼ぶ。
何か解決法はないものだろうか?
まともな方法では存在しない。
現行考えられているものは、貧民への経済支援を止め自然淘汰に任せる。つまり「餓死者を容認する」ことである。餓死者が増えれば人々は子づくりを控えるようになる。そうすれば長い目でみれば社会が養える人口に落ち着く筈だ、と考えられていた。
だが、実はその解決法すら作用しないことが分かってしまった。
現実問題として、食が大量に余っている(日本を含む)先進国では人口が減り、餓死者が毎日でる途上国で人口が増え続けているのだ。
その理由は、先進国では一人の子を育てるのに大きな資源が必要なのに対して、途上国では殆ど必要としないことにある。
日本は富裕国であり、そういう問題とは無関係であると考えている人は「自然淘汰」の意味を誤解している可能性が高い。
自然淘汰とは子孫を残せなくなることを言うのだ。
具体的に言うと、お隣の国とかからたくさん移民や難民がやって来て……
掲示板
7 ななしのよっしん
2020/05/02(土) 08:25:56 ID: Sfvvji9MHt
マルサスの言う事は本当現実的で現代にも通じる
それが生物の普遍的真理だからなのだろうが
あとマルサスは餓死者を容認するとは言ってないぞ
人間の社会的に貧困の存在は避けられないと言ってる
そしてただ金を配るだけでは生活に関わる資源が高騰するだけで貧困層は豊かになれないとも言ってる
だからマルサスはかなり農業を重視していて生活に関わる資源が安価になれば貧困層も救われると
一番良いのは貧困層に農業させる事だと
最も今の時代だとマンパワーがそんなに要らなくなってるから厳しいね
8 ななしのよっしん
2022/01/15(土) 05:16:13 ID: B2owR1jyak
ソ連のシベリア送りなんかある意味最適化された形だったのかもな
過剰人口は強制的にド田舎を開拓させて、それで己の食い扶持が稼げるなら良し
失敗したら失敗したで、どうでもいい命が消えるだけだからそれもまた良し
本気で人口を人工的に操作したいなら、どうしたって社会主義的な無慈悲さで当たる事になるのだろう
>>3
なお、まにあわんもよう
中国人もなんやかんや自由を知った上に知恵も付けてしまったからな
出生率が回復する見通しは立たず、このまま行くとじきに彼らの方が移民難民に依存する時代が訪れるよ
9 ななしのよっしん
2022/09/09(金) 03:35:32 ID: uVJgBC8hBm
アフリカですら出生率が下落傾向だしまさかマルサスといい近代主義が褒め称え続けた人権や自由に教育が中長期的な人口減少を引き起こすなんて誰にも考えつかんよなぁ
その頃は前近代的な規範や要素がふんだんにあったからと考えると素晴らしい近代思想が行き届くほどジリ貧になるとは
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最終更新:2024/11/24(日) 16:00
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