レオノラ・フォン・ロイエンタール(Leonora von Reuentahl)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
ゴールデンバウム朝銀河帝国貴族。マールバッハ伯爵家の出で、下級貴族ロイエンタール家に嫁いだ。青い瞳と美貌を持つ貴族令嬢であり、その手は最高級の象牙を彫りあげたような見事なものだったという。人となりとしては浪費家で、上流階級の出らしく科学よりも迷信に重きをおくたちだった。
オスカー・フォン・ロイエンタールの母親であり、その行為によって彼の人格形成と死に至るまでの人生に多大な影響を与えた。
マールバッハ伯爵の三女として生まれる。マールバッハ伯爵家はうどん家放蕩家の当主が続いたために不動産や債権など家財の多くを売り払ってなお負債を抱えていたが、彼女が20歳前後の頃に舞い込んできたのが、下級貴族ロイエンタール家との縁談であった。ロイエンタール家は名ばかりの下級貴族ながら、当主が分別ある実業家として成功し相当の資産を得ていた。その当主が40歳近くなり、結婚して安定した家庭生活を持とうとしたところにもたらされたのが、レオノラとの縁談だったのである。
彼はレオノラの美貌を見せられ呆然として惚れ込み、マールバッハ家の負債を代わりに清算してまで彼女と結婚することとなる。夫は20歳の年齢差と伯爵家に対する身分の低さを気にし、レオノラのために財産を消費することでおぎなおうとした。レオノラも高価な商品をつぎつぎとねだることで夫の過ちを助長し、しかも買い与えられたそばから興味を失うという態度であった。両者の結婚生活は、まったく破綻していたのである。「この結婚は、妻と夫の双方に苦痛をあたえた」と評されるゆえんであった。レオノラと夫とのあいだに真の愛情はついに築かれず、彼女はひそかに美貌の愛人を作り、身を立てる能を持たないその相手を夫の財を費して援助していた。
やがて帝国暦458年(宇宙暦767年)、レオノラは息子オスカーを出産する。だが、これが破局であった。揃って青い瞳の両親から生まれたはずの赤子の左目だけが、青ではなく黒だったのだ。彼女にとって、それは遺伝的な偶然ではなく、黒い瞳の愛人の存在を暴露するものだった。夫に捨てられ財力も愛人も全てを失う恐怖にかられた彼女は、目が開くようになった赤子の左目をえぐり出そうとし、しかし失敗した。
レオノラがしたことは、ロイエンタール家の家庭を崩壊させ、オスカーの心にその最期までつづく大きな傷を残すこととなった。
レオノラに左目をえぐられようとした時、息子オスカーは出生後まもない赤子であり、その姿が彼の記憶に残されているはずもない。しかしオスカーの網膜と心には、赤子の右目に果物ナイフをつきこもうとする母親、そして偶然はちあわせ悲鳴を上げるメイドや人々という情景がくっきりと焼き付いていた。これが真の記憶であるか、あるいは周囲からの伝聞が作り上げた蜃気楼かは定かではないが、この記憶は彼に単なる女ぎらいを超越した深刻な女性不信を植えつけ、漁色家としての彼を作り上げる由来となった。
さらには、妻に手ひどく裏切られた父もまた、レオノラの死後は酒に溺れてなかば廃人となり、オスカーの顔を見ると辛く当たった。彼は幼い息子に対し「お前は私たち夫婦を不幸にするために生まれてきたのだ」「お前など生まれてこなければよかったのだ、誰もお前を望みはしなかった」と罵倒を繰り返したが、幼いオスカーのほうも反論することなく事実として受け入れていた。
こうした記憶とともに育ったために、ひどく冷笑的で野心的、ある意味では達観したかのような彼の精神が生み出される。そしてラインハルトへの忠誠、王朝の重臣としての叛乱と死へいたる梟雄オスカー・フォン・ロイエンタールの人生の根底となったのである。
掲示板
3 ななしのよっしん
2021/11/23(火) 07:17:08 ID: R71rVszu3r
遺伝子検査はこの世界存在しない(もしくは重大なタブー)なため、結局のところ分からない、かと。
とりあえずオスカーが生まれるまでは誰も不貞を疑ってないから夫婦生活自体は普通にあったと思われるし、母親が自殺した後も普通に(じゃないかもしれないが)養育されてるしロイエンタール家の財産も普通に(勘当されたりすることなく)相続してるので、父親からしてみれば自分の息子って認識だったのかも。
4 ななしのよっしん
2021/11/27(土) 10:53:42 ID: mdKhPyLfl4
改めてロイエンタール家の家庭環境を見ると、オスカーに根付いたのは女性不信というより家庭不信、あるいはイエに由来する貴族社会への不信だったんじゃないかな。
第三者が無責任に言うなら、そこで開明派や共和主義者過激派のスポンサーになったりもしそうだけど、そうならなかったのは人間不信に由来する強烈なペシミズムに支配されたからだったのか。
何はともあれ、レオノラもオスカーもロイエンタール父も、とにかく一家揃ってカウセリング受けるのが一番だったよなあ、これ。
5 ななしのよっしん
2021/11/28(日) 16:46:38 ID: MwQPZKCULf
しかし銀英伝は全体的に母親の存在感の薄い作品だと思うけど
母の素養があったとも思えないこの人がロイエンタールの母というのがなんというか
主役二人ラインハルトの母クラリベルもヤンの母カトリーヌも早死にしてて父に比べて存在感が薄い
カウンセラーみたいなのは帝国ではあまり発達してないんじゃないかな
ルドルフの思想的に「それは精神的に軟弱なり!ポイッ!」みたいになりそうだし
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最終更新:2025/12/06(土) 03:00
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