上尾事件

上尾事件とは、順法闘争の結果生じた暴動である。

概要

1970年代の日本国有鉄道（国鉄）はマル生運動の頓挫から調子に乗った国労や動労が順法闘争をやったりアジ電車を走らせたりとやりたい放題やっていた時期である。この事件はそんな中で起きた事件であり、約ひと月後にも同じような事件（首都圏国電暴動）が生じることとなる。

事件の流れ

ことの発端は鬼の動労が約束を破ったことにある。動力近代化により蒸気機関車の廃止が進み、安全性が向上してくると運転士を複数名確保する必要がなくなってきた。動労は経営側と原則運転士1人とする協約を締結していたが、動労の予想を上回るスピードで蒸気機関車の廃止が進行。これにキレた動労が2人勤務を蒸し返して順法闘争を開始し、ダイヤの乱れが常態化することとなった。

運命の日の1973年3月13日朝、高崎線の運行に従事する動労の運転士は前日から順法闘争を実施しダイヤは既に乱れていた（順法闘争で37分で走破できる区間も3時間かかるというまさに鬼の動労）。しかも3月のこの時期は学生は期末試験、仕事は年度末というクソ忙しい時期である。しかもこの日は群馬県の高校入試日というおまけ付き。
そして当時の高崎線は沿線のベッドタウン化の進行で利用者が増えているにも関わらず、国鉄の財政問題もあり通勤時間帯に急行形が普通運用でやってくる（＝ドアが少ないので混雑が酷くなる）という有様であった。

さて、舞台となる上尾駅に上野駅で折り返し妙高2号（上野7:51発）となる急行形169系を使用した12両編成の上り普通が所定より14分遅れで7時10分に到着するが、既に3000人以上乗車しており（定員840名。よくそこまで乗れたな・・・）当然乗れる状態ではない。何よりその日の上尾駅は始発が6時6分に25分遅れで出発後、本来来るはずの4本が順法闘争の影響で運休しており、5000人がホーム上でこの日2本目となる上り列車を待っていたのである。当然大半が乗れる状態ではなく（＝3000人のところに乗れた人がいる）、職員との間で小競り合いが起きてしまい発車できなくなってしまう。そんなところに後続の上野行き12両編成の普通列車（だがこいつも急行形の165系）が52分遅れで4000人以上乗せた状態で到着。

そんな中、後続の165系を先発させ、先着していた169系とあわせて大宮駅で運転打ち切りのアナウンスをしてしまう。当然ながら納得できる訳もなく、乗客は169系の運転室窓ガラスを割り、運転士が慌てて駅長室に逃走。それを追いかけた乗客は駅長室に入り鉄道電話を破壊。同時に165系も運転士と車掌が逃げ出した。ついでに分岐器や信号も破壊され、近くで待機していた下り「とき2号」も運転室の窓ガラスが割られた。

なお、包囲された高崎鉄道管理局の部長は乗客から
「責任者は誰だ、出てこい」
「台の上に登って釈明しろ」
「今日出社できないことに対し、責任をとれ」
「俺の1日分の給料は3000円だぞ、補償をしろ」
と詰められたという。管理者も大変である。

事件名自体は上尾事件だが、上尾駅以外でも大宮駅でホームを乗客が占拠したり、宮原駅の駅長と助役が拉致され大宮駅まで歩かされたりと高崎線は全線が麻痺。周辺の駅でも駅舎の窓ガラスが割れるなどの被害が出ている。

その後の顛末

事件を受け国労と動労は順法闘争を一旦停止。しかし経営側との協議は不調に終わり、結局順法闘争を再開した結果が翌月の首都圏国電暴動であり、その後のスト権ストを経て中曽根康弘肝いりの国労・動労相手の202億円訴訟につながっていく（後に分割民営化への協力の見返りとして動労分の訴訟は取り下げられる）。
なお、総評はこの事件に関して当初陰謀論を唱えたが、警察庁に反論されてからは陰謀論を言わなくなった（が、首都圏国電暴動の際には国労が陰謀論を唱えている）。

また、「さすがに急行形は・・・」となり国鉄も115系を緊急で発注し、1975年までに高崎線の通勤運用から急行形は消えている。他にも乗客への情報伝達や伝達手段の確保などを行うこととなった。

ついでに・・・

この事件は動労がメインだが、国労は「順法闘争するなら通勤電車を狙え」としていた。えぇ・・・

関連動画

関連項目

• 日本国有鉄道
• マル生運動（この失敗が国労と動労が活性化した原因）
• 順法闘争
• 首都圏国電暴動（1ヶ月後の暴動）
• アジ電車
• スト権スト（2年後に国労と動労が起こした悪あがき）
• 165系・169系（ある種の被害者）
• 鉄道関連項目一覧
• 事件・事故の一覧
• 陰謀論